「おじいちゃん わすれないよ」

ベッテ・ウェステラ作 ハルメン・ファン・ストラーテン絵

野坂悦子訳 金の星社 より








2001年ブラティスラヴァ世界絵本原画展で「金のりんご賞」を受賞したこの

絵本は、生と死を見つめながらも、その素朴な物語と絵によって読後に爽や

かな感動をもたらしてくれる。たとえ体は無くなっても、その人が生きた記憶

は残された者たちの心の中に生きつづけることを改めて感じさせてくれる作

品である。

(K.K)





読者の皆様へ 野坂悦子 (本書より引用)


オランダの匂い・・・・お葬式の日、ヨーストは、おじいちゃんのハンカチを手に、

ふたりで過ごした楽しい日々を思い出します。約束を忘れないように、ハンカチ

にむすびめを作っていたおじいちゃん。ヨーストはそんな思い出とともに、生きて

いく決心をします。ベッテ・ウェステラが文を書き、ハルメン・ファン・ソトラーテン

が絵をつけたこの物語には、昔からそこにあったような存在感があります。そ

れは、どの国のどの時代にも通じるテーマでありながら、ひとつの「生活」を丹

念に描いているからでしょう。『おじいちゃん わすれないよ』は、オランダの匂い

にあふれ、そこがまた魅力となっているようです。たとえば、物語の中に出てくる

ポテトフライ。オランダ語では「フリッツ」とよばれ、マヨネーズをつけて食べるの

がオランダ流です。パパから奪った5ギルダーは、300円くらいでしょうか。もっ

とも、今は町でも銀行でも、ユーロ(ヨーロッパ連合の共通通貨)が使われるよ

うになり、ギルダーそのものが、思い出の中のお金となりつつあります。また、

ヨーストがおじいちゃんに買っておいてとたのんだ「マウシェ」も、オランダらしい

食べ物です。ピンクや水色の砂糖の衣でアニス(香料)のつぶをくるんだ、あら

れのようなものです。出産のお祝いには欠かせないものですが、朝食にならぶ

こともあります。そんな生活の匂いが、物語全体をゆったりと包む土のかおり、

木々をゆらす風の音などと溶け合って、独特の世界を作りあげているのでしょ

う。茶色を中心とした落ち着いた彩りに、ハンカチの「赤」が鮮やかに使われ、

おじいちゃんの生と死を、見事に際立たせています。








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