ソコリスキー、アレクセイ・パーヴロヴィッチ（1908-69）

ソ連の有名なチェス･マスター、理論研究者、指導者。ソコリスキー・オープニングや

エヴァンス・ギャンビットのソコリスキー・ヴァリエーションなどの定跡にその名を残し

ている。本書は1977年の初版が大変な好評で、1989年に第二版が出ている。





訳者あとがき　本書より引用

本書は入門書とは言え、後半部分は上級者の要求にも十分応えられる内容になって

います。日本語訳にあたりましては原書には含まれていない途中図を大幅に加え、盤

に並べるだけでも格段の上達が見込まれるでありましょう。実戦はもとより、理論研究、

指導方法論の面でも世界を断然リードするソ連のチェス入門書を自身を持っておすすめ

します。尚、末尾にて失礼ながら、ご助言をいただきました日本チェス協会松本康司会

長に感謝の意を表します。

日本語版への序　松本康司　本書より引用

“チェスをする人にとって、人生は短すぎる。”　初代世界チェスチャンピオンW.シュタイニッツ

（1836-1900）の辞世の言葉である。人類の発祥と共に“あった”といわれるチェス、現在、

世界の隅々まで普及しているこの楽しい遊びは、残念ながら日本にはまだ馴染みが浅い。

カイサ（神話の中のチェスの女神）の昔から現代まで、多くのファンを魅了しているチェスは、

時代と共に姿を変えた。古代インドではシャトランジュとして完成されたチェスは一方では神

聖ローマ帝国の版図と共にヨーロッパに拡がった。また中央アジアからウラルを越えてロシア

に入ったのも同時代という。さらに一方、東方中国を経て日本にたどり変形したものが日本

将棋であるといわれている。中世、ヨーロッパ世界の各地に根をおろし、ローカルな発達をし

たチェスは、16世紀、文芸復興の時代、ルール上に変革と統一が行なわれた。印刷術の

発明によって、文字通り世界中のチェス･ルールが統一され、“現代のチェス”がスタートした。

“人類の英知の結晶”とはチェスの代名詞である。この結晶の芽は同じく印刷術の恩恵を受

けて、文献の上に文献が重なり、今や芸術の世界に大きく輝き出した。文化とはこういうも

のだ。つまり、シュタイニッツの時代には名人が一生かかって探り出せなかったものが、今、

入門の初心者が第一日の常識として楽しみの道具とすることができる。そして、あなたの成果

が、更に次の世代に積み重なっていく・・・・。19世紀、産業革命、交通手段の発達と共に、各

国の名人たちの交流が始まる。巨匠たちの時代、多くのチェスの理念が止揚される。チェスが

芸術から学術へと質的に転化する。20世紀、国際化、組織化の時代、世界チェス連盟FIDEが

設立（1927）され、1984年には、加盟130国を数えるまでに成長した。日本は1968年日本チェス

協会が65番目の国として加盟している。チェスをする人にとっては、他の学問にたずさわる人と

同じく、毎日が楽しい闘争だ。誰が最初に新しい未知の真理を発見するか・・・・。正にチェスは

スポーツだ。ちなみにFIDEは、サッカーに次ぐ、世界第二の規模のスポーツ団体として認知さ

れている。チェスに敗者はない。一局負けても、あるいは百連敗しても、それはチェスに敗れた

のではなく、＜チェスの未知の部分＞に敗れたのにすぎない。あなたは次の勝利への重大な

カギを勝ち取った。チェスの楽しさ、この説明は、あなたの感動を表す言葉を先取りしないため

に残しておこう。最後に、世界に雄飛したい人のために、あるいは同好の士と交流したい人の

ために日本チェス協会はすべての人のために開かれていることを紹介する。