「チェスの花火」
ジャック・ピノー著 インデックス出版 より引用
感謝の言葉 (本書より引用)
日本に来てから、まもなく20年になります。この20年間多くの時間をチェスに費やし、 チェスを通じて、友情が生まれ、チェスを通じての失望、決裂もありました。問題が起こ る度に立ちはだかるのは、言葉の壁に守られた価値観の違いであり、知らない内に 周りで形成されている「仲間」意識でした。なぜ自分はいつまでたっても、ここでは、 異邦人と感じるのか? 自分が受けたキリスト教的価値観と教育のせいなのだろう か? 永かったようで短かったこの年月を、私は振り返ってみたく思いました。そんな 思いがきっかけで書き出したこの本は確かに内容が、平易とは言い難い。チェスの 技術的な説明にとどまらず、より根元的な精神を掘り下げるために、敢えて色々な 人物、土地、そして、私の中の思考風景などをちりばめました。私の日本語は、完璧 からかけ離れているために、やはり、まず母国語であるフランス語で、書き上げ、そ れを日本語になおしてもらいました。(中略) 皆様の友情と協力のおかげで、私は 書きたいことを書き、私自身に近い本が書けたと自負しております。完璧さにはとう てい及ばないことはわかっていますが、それでもこの本が、未来を担う世代にとって 彼らのチェスのヴィジョンを補うのに充分な質を備えていることを願って止みません。
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