「自分を信じて生きる」

インディアンの方法

松本正著 小学館 より引用









さて、この本の中でぼくが語ってきた話は、自分の魂を恐れることなく語り伝えてきた

先人たちの言葉に学んだものばかりだ。この十年あまり、ぼくはさまざまな研修やワー

クショップやプログラムで出会う人たちに、ラコタの人たちから教わったことを語り、心を

込めて分かち合ってきた。幼稚園児、小学生、中学生、高校生、企業人、母親、お年寄

り・・・・。さまざまな年代の人に、それらの言葉はたくさんの気づきを与えてきたので

はないかと思う。人生の危機的状況の中にあったり、問題から抜け出せずに堂々めぐ

りしている人には、生きるヒントを与えてきたのではないかと思う。そんな、力(メディ

スン)を持った言葉だと信じている。何よりぼく自身が、これらの言葉によって、どれほ

ど救われたことだろう。プログラムの参加者たちとこれらの言葉を分かち合ったとき、

そこに共感が生まれ、涙が流れ、笑いがわき起こり、どれほどの勇気と元気をもらっ

たことだろう。これらの言葉が人々に受け入れられることを通して、どれほどぼく自身

の自分を信頼する力となったことだろう。(中略) あるアイヌの古老の言葉を思い出

す。「神話は聞いた人も語った人も、その両方を強くする」 それぞれの人が一本の

「生命の木」だとすると、ぼくは語る木になりたいと思う。そして共に生きている「人の

森」の仲間と成長していきたい。ぼくは語ることによって強くなり、「人の森」の仲間た

ちもそれを聞いて強く成長できたら、どれだけ幸福なことだろうか。さて最後に、ぼく

という「生命の木」の話をしよう。ぼくという「生命の木」は、ときどき森から出て、何の

さえぎるものもない大きな空を一人きりで見上げることをする。つまりそんな時間が

とても好きだし、ぼくには必要だ。夜になり星々が輝き始めると、それを見上げなが

ら、ぼくという「生命の木」は決まってこう思うのだ。「ああ、オレは、この大きな宇宙

の中で生まれた、たったひとつの生命なんだ・・・・、光なんだ・・・・」 そして、夜空

いっぱいに広がる星の下で、自分がここに立っていることを、ゆっくり深呼吸しなが

ら味わうと、自分が今ここに「ある」ことが、どんなにすばらしいことなのか、瞬時に

理解できてしまう。そしてぼくを取り巻くひとつひとつの生命が、ほんとうにかけがえ

のないキラキラした存在なのだということもわかってしまう。この再認識の時間が、

ぼくにとってはとても大事だ。ぼくがときどきアメリカの大平原の中に立ちたくなるの

は、こんな理由があるからだ。もうひとつ。ぼくという「光」は、火をながめることが

好きだ。何人かの人と火を囲むことがとても好きだ。火をながめているとき、ぼくと

いう光は炎とひとつになってゆらめいている。それはまるで自分の魂そのものを

見て、感じているようだ。火は風を得て大きく育つ。うまく風を入れると炎はメラメラ

と立ち上がる。風は力=メディスンだ。風は言葉だ。言葉は力=メディスンだ。そし

て、言葉は風だ。この本の中で語ってきた話や言葉は、人々の生命の火、魂の炎

を育てる風なのだと思う。それは太古の亀の大地(アメリカ大陸)に吹いていた風

だ。その風はラコタの生命と魂を育ててきた。そして風は海を渡り、弓の大地(日本

列島)に住む人々の魂の炎を、育てる力を持っているに違いない。


風を分かち合おう友よ!

恐れず魂を語り合おう友よ!

共に魂の炎を大きく育てるために!

ピラマヤ・コラ ありがとう友よ!

ミタクエ・オヤシン 私につながるすべてのものたちよ!

(本書より引用)







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