「バナナとりんご」
アメリカ・サウスダコタ体験記
デイ 多佳子著 五月書房 より引用
本書 まえがき より引用。
とは言うものの、心は揺れた。悩んで悩んだ末、大学に職を得た配偶者と5歳の娘 とともにサウスダコタ州西南部にあるラピッドシティに移った。1992年8月のことであ る。サウスダコタ州は、アメリカ合衆国の中央に位置し、面積約20万平方キロメート ル、人口70万人ほどの農業州である。人々の生活は州の中央を流れているミズー リ川によって、二分されている。州全体でも人口が1万人を超える町は10しかない が、そのうちの9つの町はミズーリ川の東側に集中している。残るたったの一つの 西側の町が、現在、私が生活しているラピッドシティだ。いわば、州の西側は過疎 地帯といえよう。川の東側は、“プレーリープレーンズ”と呼ばれる穀倉地帯でもあ る。小麦・とうもろこし・ライ麦などが豊富にとれる大農業地帯だ。本やテレビでおな じみの「大草原の小さな家」の舞台は、この東部中央にある小さな町、ドッスメット である。大草原の様子は、テレビシリーズで描かれた開拓時代とほとんど変わって いない。今でも著者ローラ・インガルスの家が残され、毎年7月には「ミス・ローラ・ インガルス・コンテスト」が開かれている。一方、川の西側は、“グレートプレーンズ” と呼ばれる荒れた土地が拡がっている。穀物栽培には適さない土壌のためか、牛 や馬の牧畜が行われているところだ。最近の映画「ダンス・ウィズ・ウルブスには、 ラピッドシティから車で1時間走ったところにあるバッドランド国立公園のシーンがよ く出てくる。延々と続くプレーリー(大草原)の中に突如、出現する「地上の月面風 景」。今から7400万年前には、サウスダコタは北米を縦断する内海だった。その後、 大陸の隆起や火山の爆発、気候の変化により、気が遠くなるような時間を経て、今 日のような光景を作りあげたという。そこはまた世界中にブームを巻き起こした映画 「ジェラシック・パーク」の世界----つまり恐竜の化石の宝庫でもある。都会の雑踏 に、カラフルなさまざまな民族文化のエネルギーを秘めたサンフランシスコから、大 草原やインディアン、そして恐竜で知られるサウスダコタへ。本書は、アメリカのハー トランド(心臓部)とも呼ばれるサウスダコタでの、私のもう一つのアメリカ挑戦である。
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目次 まえがき
バークレーからサウスダコタへ2300キロ 田舎の朝はやっぱり早かった 日本語教師の第一日目 「あー、死んでしまいたい」は禁句 きつねうどんに舌がうずく時 “けもの道”を行く インディアンのお祭り「パウアウ」 キモノとこけしは日本の宗教の必需品!? やっぱり主婦は大変だ サウスダコタのカラオケ事情 「アジア人は殺しちゃえ!」 ラピッドシティに日本人がやって来た アメリカで一番貧しいインディアン居留地 インディアンと友達になりたい!! ラシュモア山と日本人ビジネスマン 零下30度は無感覚の世界 「パールハーバー」51年目の星条旗 「日本人をもっと理解して!?」 日本人留学生は国際人!? 「ダンス・ウイズ・マネー」 クレッグホーン小学校の日本祭 激変する春の天気にア然! 州知事の葬式の日は学校が休み コンドームも質より量!? 中絶問題にゆれるラピッドシティ 竜巻がやって来る! プレーリーのド真ん中にあるモニカの家 学校でのインディアン問題 貧乏と平和と安全 なぜカリフォルニアを目の敵にするの 0.6エーカーの芝刈り 「ありがとう!」
あとがき 参考文献
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