「カナダ・インディアンの世界から」
煎本孝 作 福音館書店より引用
煎本孝 1947年、神戸市に生まれる。東京大学大学院理学系研究科終了後、 マニトバ大学(カナダ)ほかで人類学、社会学を修める。現在、北海道大学 大学院文学研究科教授、国立民族博物館併任教授。著者に「文化の自然 誌」「ペチワイアンの生態(英文)」、編著者に「東北アジア諸民族の文化 動態」などがある。
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あとがき 本書より抜粋引用
真実とは、それを見る者にとっての真実でしかない。たとえば、わたしたちが第三者 として、あるひとつの世界を客観的に眺める時と、その世界に属しその中で物事を見る 時とでは、世界の真実の姿は異なった姿を取るにちがいない。わたしはこの本の中で、 カナダ・インディアンの世界を、その外側と内側というふたつの方向から描くことを試み た。そのために、わたしは彼らの世界を対象として眺めることから始め、次に対象への 接近を経て、自己と対象との同一化・・・・この瞬間、今度は彼らの目で世界を見ること になるのであるが・・・・を行なわなければならなかった。そこで、初めてわたしは客観 的な世界とは異なるもうひとつの世界・・・・動物たちが語り、不死なる魂の徘徊する 世界・・・・を目のあたりにすることになる。
ここで登場するカナダ・インディアンとは、アサパスカン語族に属するインディアンのこと である。彼らは、アラスカ内陸部からカナダ中央部にひろがる針葉樹林(タイガ)に住み、 夏には川や湖での漁撈、冬には凍土帯(ツンドラ)から季節移動してくるトナカイの狩猟 を行なって、生活している北方狩猟民である。わたしは、1973年、および1975年から 1976年にかけて15ヶ月間、彼らと生活を共にした。この本は、この調査に基づいて書 かれた、カナダ・インディアンの民族学的調査記録であり、わたしの見た彼らの世界に ついてのエッセイである。
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目次 プロローグ 第一章 出会い 第二章 夏の風景 第三章 冬への旅立ち 第四章 トナカイが来る時 第五章 トナカイの狩猟 第六章 トナカイの料理 第七章 不死なるトナカイ 第八章 キャンプの人びと 第九章 雪の荒野 第十章 春の動物たち 第十一章 村の生活 エピローグ あとがき 文庫版のための「あとがき」
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