「カナダのインディアンに伝わる30の話」
マーガレット・ベミスター編
くまり莞奈子訳 中央アート出版社
「この本に納められた多くの物語は、世代を超えて引き継がれてきた物語の 語り部たちから直接に聞き書きしたものです。この本により、はじめて印刷、 出版のかたちをとったものもあります。すでによく知られている物語をあらた めて編集しここに収めたものもあります。カナダ・インディアンの伝説集“イン ディアンとウィグワム”は、この本を編集するための参考とさせていただきま した。1912年 マーガレット・ベミスター」 今から90年も前に発行されたもので、当時のインディアンから直接聞き取った ものが多い。編者のベミスターは1877年に生まれ長年教職の後バンクーバー に移り住む。 2002年8月12日 (K.K)
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本書「あとがき」 日本語版編集 坂井泉 より引用。
死とは誕生のはじまりであり、新たな生のために死は存在している。このような 哲学をもちながら、絶対に現世を軽んじることがない。それは、生と死の円環の 中で、一瞬一瞬の魂のあり方が、人に大地に宇宙に影響することを知っている からである。一見無造作に殺し殺される人間や動物たちの向こう側に、今与え られた命を必死に生きていくネイティブ・アメリカンの真摯な姿勢を読み取ること は、さほど困難なことではないと思う。
これらの物語の細部に目を向けると、カナダ・インディアンの暮らしぶりを垣間 見ることができる。どんな住居に暮らし、生活のための道具には何が使われて いたのか、また、鳥の羽や動物の骨は、彼等にとってどんな意味をもつのか。 とくに、狩猟に長けていることがどれほど大切であったかは、獲物を手にするこ とができなければ名前さえつけてもらえないというところに、その重要さを知る ことができる。そして今この瞬間に必要でないものは持とうとしない。旅をする ために必要なモカシンは、旅をすることが決まってから作られる。このことは思 いつきだけで何の緊急性もないにもかかわらず、多くのモノを所有しようとする 現代人とは対極にある。それは、常に宇宙と大地の身近に自らを置くことで、 必要なものはいつでも手に入れることができると信じているからに他ならない。 反対に、宇宙や大地とも最も遠いところにいる、いわゆる先進国の、いわゆる 現代人、つまり私たちは、多くのモノに囲まれて生活しなければ不安で仕方が ない。手に入るときに手に入れておかなければ、必ず後悔すると思っている。 そうして、いつ役にたつのかわからない不要なモノに囲まれた生活が、「豊か」 なのだと勘違いしているのである。
わたしは世界の進歩よりも 一匹のアリの旅行に もっと深い意味を見た、 世界の進歩なんてものは 今やスタートラインのはるか後方へ落伍している。 「今日は死ぬのにもってこいの日」より
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目次 序 はじめに・・・・くまり莞奈子 魂の国 1.魂が住む国の話 2.眠りの精の話 3.北風と怖いもの知らずの野鴨の話 4.不思議な生き物の話 5.少年と鳥の話 6.稲妻になった少年の話 7.古い切り株の話 8.不思議な夢の話 9.ささやく草の話 伝説の村 10.鷹になったハンターの話 11.怪物熊の話 12.夏をつくったマニトウの話 13.太陽を罠にかけた話 14.ムーウィズという男に恋した娘の話 15.人間になったカタツムリの話 16.インディアン・コーンの話 17.父親思いの魔術師の話 18.シルバー・ロッジの話 19・五人の湖の精の話 20.マキナック島の伝説 冒険の旅 21.山の部族と「風つくり」の話 22.妻を忘れたマニトウの話 23.勇敢なホワイト・フェザーの話 24.魔法のモカシンの話 25.「カヌーを壊す者」の話 26.ニコラス族とオカナガン族の友情の話 27.偉大な酋長アシルクワの話 28.赤いスワンの話 29.ウェサカークの冒険 30.ウェサカークのさらなる冒険 あとがき・・・・日本語版編者 坂井泉
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