「太ったインディアンの警告」
エリコ・ロウ 著 生活人新書 より引用
本書 はじめに より引用
世界で肥満・糖尿病への危機感が募っています。今では国民の過半数が太りすぎで、 三分の一以上が肥満とみなされるアメリカでは、「肥満、糖尿病の撲滅は国家の急務」 とする公衆衛生局長官の非常事態宣言が出されました。さて、アメリカで一般社会に 30年先だって太りだし、病みだしたといわれるのが、アメリカ・インディアンの社会。なか にはアリゾナのピマ族のように、人口の7割以上が肥満になってしまった自治区もある ほどです。これまでの研究から、アメリカ・インディアンは白人よりも太りやすく、糖尿病 や心臓病などの生活習慣病にもかかりやすいことも明らかになっています。人種的に みれば、アメリカ・インディアンと日本人は遠い祖先を同じくする親戚民族です。また、 歴史を振り返れば、千年にわたって自然の恵みを生かした自給自足の暮らしを続け、 独自の文化を築いていたアメリカ・インディアン社会が、突然現れた白人に国を奪わ れ、同化を強いられ、その食生活や生き方を変えられていった過程は、アメリカに迫ら れて開国、「文明開化」、第二次世界大戦の占領時代を経て、「国際化」の波に乗り、 食生活やライフスタイルを「アメリカナイズ」させてきた日本の変化の過程と通じるところ も少なくありません。日本でもメタボリック・シンドロームの蔓延や子どもの肥満、糖尿病 の急増が叫ばれる現在、餓死による絶滅の危機から一転して肥満と糖尿病の蔓延に よる絶滅の危機に陥り、今健全な人と社会の再生に乗り出そうとしているアメリカ・イン ディアンの警告に耳を傾けることには意義があると思うのです。
エリコ・ロウさんのブログ「マインドフル・プラネット」
|
もくじ はじめに 第一章 世界に先駆けて太ったアメリカ・インディアン 長老を襲った突然の悲劇 肥満、生活習慣病の蔓延に苦しむ アメリカ・インディアンの社会 全米に569部族のインディアンが現存 第二次大戦後に始まった、肥満、生活習慣病との闘い コチティ族の長老の体験 部族の未来を憂う、テスケ・プエブロのギル知事 主食の貝が食べられなくなったスクララム族 肥満率70% 世界一不健康になったアリゾナのピマ族 ピマ族に起こった食生活とライフスタイルの変化 変化がより緩慢に起こった、僻地のナバホ族 僻地ゆえに欧米化が遅れたアラスカ 炭水化物と動物性脂肪の摂取増で肥満急増 暮らしがラクになったことも、肥満や糖尿病の要因に 炭水化物の脂肪の善玉、悪玉 炭水化物の代謝のスピードを示すGI値 糖尿病をくいとめてきたアラスカの伝統食
第二章 飢餓で絶滅しかけた民族が、肥満で絶滅寸前にいたった歴史 コロンブスが出会ったスリムで屈強な民族 スローフードで健康を維持 故郷も伝統も食源も奪われた悲惨な歴史 インディアン寄宿学校のトラウマ 米軍兵士になって覚えた白人食の味 アメリカ・インディアンを不健康にした食糧配給 貧しくも職もなく、飲んで食べて、太って、病気に ポップの飲み過ぎで太る 集まって、たらふく食べて、憂さを晴らす フライブレッドが民族の伝統に
第三章 アメリカ・インディアンと日本人は親戚民族 アメリカ・インディアンと日本人の祖先は同じ 伝統文化にも多い共通点 肥満を導く食生活、ライフスタイル、遺伝子 代謝の仕組みと肥満 メタボリック・シンドローム 糖尿病とその合併症 飢餓には強いが過食には弱い「節約遺伝子」 民族の体質は自給自足時代の食べ物で決まる? 脂肪を燃焼しにくくする遺伝子 糖尿病にないやすい遺伝子 食欲を左右するホルモン、遺伝子 ビール腹になりやすい遺伝子 肥満遺伝子をもっていても、太るとは限らない
第四章 食習慣がアメリカナイズするほど不健康になる アジアで真っ先に食文化が欧米化した沖縄 沖縄の健康と長寿を支えた伝統食とライフスタイル 沖縄では老いても心臓が丈夫だった 沖縄ではガンにもなりにくかった 年老いても骨は強く、性機能もしっかり 米軍基地化と本土返還で悪化した沖縄の人々の食生活と健康 豚肉でも食べ方が間違っている 日本人と海外の日系人の健康度比較 二世より一世のほうが老いて健康 快適生活で、脂肪が溜まる 和洋折衷の食生活の危険 アジア系アメリカ人は糖尿病、腎臓病になりやすい 在米日系女性の乳ガンも急増 動脈硬化から痴呆症になりやすい シアトルの日系人 中国人や韓国人も海外に住むと太る 日本の伝統食は世界一ヘルシー
第五章 世界の民族を太らせ病ませる、現代アメリカ流飽食ライフ 非常事態宣言をだしたアメリカ 肥満慣れしたアメリカ人 アメリカ人の平均的食生活を垣間見れば 太り過ぎへの自覚も薄いアメリカ人 いつでも食べる、どこでも食べる おトクなスーパーサイズはいかがですか? 与えられただけ食べるのが人間の習性 便利な家庭生活も肥満の要因 心の空白を満たすために食べるアメリカ人 食べ物で脳内快楽物質を刺激する テレビの前で人は太る 食欲を誘う広告 子ども向けジャンクフード宣伝 学校でも太らされてきたアメリカの子ども達 アメリカの飽食、過食の裏事情 国民の健康より企業利益を優先する政策 肥満を招くアメリカの栄養ガイドライン コーン太りのアメリカ人 肥満の元凶もコーンシロップ? ソフトドリンクと肥満の因果関係 中性脂肪値を高める果糖の摂り過ぎ 脂肪の悪玉、トランス脂肪酸 使用自粛に10年以上かかったトランス脂肪酸 外食産業ではトランス脂肪酸への態度はまちまち カロリー密度も高い現代欧米食 ちょっとの油断で中性脂肪値も急上昇 ヘルシーではないアメリカ人のダイエット
第六章 スリムでヘルシーな社会を取り戻すには ヘルシーな生活習慣は子どものうちに身につけさせる アメリカ・インディアン自治区の肥満、糖尿病対策 基本は食生活の改善と、運動の促進 伝統食回帰で減量、健康改善 季節の自然の恵みで医食同源 一人の健康を守るには社会の努力が必要
あとがき 参考文献
|