「アメリカ・インディアン その生活と文化」
青木晴夫著 講談社現代新書 より引用
青木晴夫・・・・現在、カリフォルニア大学名誉教授。ネズパース語に関する 英文著書、日本語著書「滅びゆくことばを追って インディアン文化への挽歌」 「マヤ文明の謎」がある。
本書 まえがき より引用
アメリカ・インディアンというテーマは、非常に大きな題目で、これに取りくむには、 いろいろなことを知っていなくてはならない。そのインディアンについて書くには、 二つのやり方がある。ひとつは、宗教、美術、家の建て方、といった項目を追って、 アラスカからアルジェンチンまで概説するという方法である。もうひとつは、ある地 域をとりあげて、その宗教、美術、家の建て方などを記述して、次の地域へうつる という方法である。はじめのテーマ別に書いた本には、ドライバーの『北アメリカの インディアン』などがあり、第二の地域別に書いた本には、スペンサーほかの『ネー ティブ・アメリカンズ」などたくさんある。日本の読者にわかりやすく、数百という種 族のインディアンの特色ある文化を項目別に叙述することは、きわめてむずかし い。わたしはいちおう地域別に、インディアン文化を紹介することにした。それで は、どのように地域別にみていくかというと、まず北アメリカいっぱいにひろがるよ うに、大きくひらがなの「の」の字を書いていただきたい。この本でわたしがたどる 道すじは、いまみなさんの指が通った道を逆にすすむのである。そして「の」の字 の書きはじめ、すなわちこの本の終りには、われわれがよく映画やテレビで見る インディアンの所へ到着する。その過程で映画やテレビから得られるインディアン のイメージが、どんなに歪んでいるかを少しでも、わかっていただけることになれ ば、ありがたいと思う。
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目次 まえがき T インディアンの古代文化 インディアンの祖先 フォルサムでの発見 北アメリカの原インディアン文化 長く続いた古文化時代 アディーナ文化の出現 ホープウェル文化の墳墓 ミシシッピ文化の起源
U インディアン社会の構造 地域によってちがう社会制度 地域差のある食生活 タバコとペヨーテ 200もあったインディアン言語 インディアンの移動がたどれる
V インディアン その七つの文化圏 1 南東部文化圏 ナッチェス族、クリーク族 ナッチェス族の「大きな太陽」 成人するまでのしつけ 貴族と平民からなる体制 「シカのまつり」と「トウモロコシのまつり」 クリーク族の衣食住 家庭生活と氏族組織 「まつり」と政治組織 「戦争の弟」という競技 「予言をする人」 「断食をする人」
2 東部森林地帯文化圏 イロコイ族 先祖の土地を追われて オワスコ文化 複合国家の形成 ヒューロン族の社会生活
3 北極・亜北極地帯文化圏 エスキモー族 エスキモー族はいつきたか 経済活動を基礎にした組織 エスキモー族の一生 タブーによる宗教
4 北西海岸地帯文化圏 トリンギット族 多様な文化を生み出す 精巧な“木の文化” 母系社会での結婚 豊かな日常生活 厳しい階級社会 戦争の代償法 ポットラッチという習慣 トムの場合のポットラッチ 贈り物を中心にする 富の再分配 サケの祭り 「守り神」の霊力 現実を反映した宇宙観
5 西部文化圏 ポモ族 半農半猟の社会 ポモ族の生活 かご作りの技術 美徳は腹をたてないこと 女性の仕事と役割 ククスの儀式 悲劇のポモ族
6 南西部文化圏 ズニ族 ホホカム文化、マゴロン文化 メサ・ベルデの遺跡 多種多様な文化の並存 ズニ族の生活 女系家族の中の一生 集団で行動する 祖先崇拝の宗教グループ
7 大平原地帯文化圏 ダコタ族 農耕種族と狩猟種族 大平原地域に移動が始まる ダコタ族のティーピー ダコタ族の生活用具 集団での野牛狩り 結婚による連帯の強化 子どものしつけと親類組織 酋長と戦争 四日間続く太陽の踊り 白人に圧迫されるインディアン
W インディアンの遊びと民話 さいころゲームとなったハンドゲーム インディアンのボールゲーム 羽子板とこま インディアンの音楽 緊張した発声法 地域によって特色のある歌 天地創造にまつわる民話 チュクナチ族の創世神話 トリックスターとテストの話 「星の夫」という民話 動物と結婚する民話 ズニ族に伝わるシンデレラ物語 チェロキー族のター・ベイビー 均衡の欠除その回復 オルフェ型の民話
X 生きつづけるインディアン インディアンの土地をねらって 光を求めるインディアン 伝統は生きる
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