「アメリカ・インディアン 笑って生きる知恵」

エリコ・ロウ著 PHP文庫 より引用










米航空宇宙局(NASA)が生命探査プロジェクトの一環として、世界中の言語で

異星人に友好のメッセージを送ることにした。ナバホ語の挨拶も収録したいと、

NASAがわざわざアリゾナの北部に住むナバホ族の長老のところにもやってき

たので、長老は快諾、挨拶の言葉を述べた。世界の民族からの挨拶を収録し

たCDは宇宙船に搭載され、宇宙船は打ち上げられた。宇宙に向けた人類か

らのメッセージは地球にもCNNでライブ中継された。それを聞いて、アリゾナの

北部から爆笑のどよめきが起こった。「『おーい、宇宙人、このメッセージが聞こ

えたら、返事はせずに、いないふりをしろよー。白人に居所を知らせようものな

ら、呼びもしないのに食事にやってきて、そのまま居つかれてしまうぞ」と長老

は宇宙人に警告していたのだ」

これはアメリカ・インディアンのミュージシャン、ダグラス・スポッテド・イーグルが

インターネットで紹介しているジョークのひとつだ。笑いはいちばんの良薬、とい

われるが、その良薬づくりに最も長けた民族がアメリカ・インディアンで、その伝

統は今でも健在というわけだ。ユダヤ人にとってのホロコースト、黒人にとって

の奴隷制度、イスラム教徒にとっての宗教弾圧など、どんな民族にも笑いのネタ

にすることなどもってのほかの、痛恨の歴史がある。そうした記憶が怒りや憎し

みの火種となって人々の心の底でくすぶりつづけているから、ちょっとした刺激

にも過剰反応して、各地で一触即発の危機が起きてきた。アメリカ・インディアン

も白人の米大陸侵略以来、民族虐殺、奴隷化、宗教弾圧と悲惨な歴史を生きて

きたが、幸運だったのは、彼らの社会に笑いを尊重し、笑いで心を通わせること

を神聖な行為とみなす習慣があったことだ。だから、どんな苦難も逆境も泣く代わ

りに笑いのネタにして、一緒に笑い飛ばした。そうすることで、個人の心が怒りや

憎しみに焼き尽くされるのを防ぎ、民族の正気を保つことができたのだ。人口の

90パーセントを失い、不毛の僻地で貧困のどん底に追いやられ、伝統文化も

信仰も奪われた人々にとっては、唯一残された笑いが精神の拠りどころとなり、

サバイバルの鍵となったといえる。おなかを抱えて笑えばストレス・ホルモンの

分泌がおさまり、血圧が下がり、筋肉もリラックスし、病気を予防、自己治癒に導く

免疫反応が活発になることは現代医学でも証明ずみ。アメリカでは最近、よく笑う

人は心臓病になりにくいという研究報告も発表され話題になった。アメリカ・インデ

ィアンと日本人は祖先を同じくする親戚民族で伝統文化には共通点も多いが、

彼らに比べると、日本人は物事をきまじめに考えがちで茶目っ気に欠けるような

気がする。笑いを尊ぶアメリカ・インディアンの生き方を紹介する本書が文庫版

として再出版されることになったのも、上手な笑い方、上手な生き方を模索する

社会のニーズい応えてのことなのかもしれない。「勤勉な日本人は笑い方も本

で学ぶ」、とアメリカ・インディアンならすぐにジョークにするところだろうが。

(本書 文庫本のためのまえがき より引用)


エリコ・ロウさんのブログ「マインドフル・プラネット」


目次

文庫版のためのまえがき

第1章 笑い飛ばせば、人生は楽しい

心の洗濯に出かける

笑って立ち直る

笑ってる場合ではない。だから笑う

なーんちゃって、で日は暮れる

「あまのじゃく」ヘヨカの教え

笑いは強い心のあかし


第2章 本物として生きる

ヘヨカの使命

現代人は偽物ばかり

「今やるよ」の真実はどこにある?

自分の人生が何に支配されているかに気づく

化粧が落とせない?

人生の一刻、一刻が選択

迷ったら、立ち止まればよい

自分の道を生きていれば、死は恐れるに足らない

本当の人生は40歳過ぎから始まる

幸福と平穏をもたらす「赤い道」

模索する若きアメリカ・インディアン

若い時代の試行錯誤が人を育てる


第3章 スローライフに帰る

聖なる道化師との出会い

「泥頭」の教えと説教は違う

インディアンはあせらない

じっくり腰を落ち着けることから始まる

急ぎすぎから病いも起こる

社会が加速しても、人は加速できない

人生は早送りできない

ながら族をやめる

毎日の生活が学びそのもの


第4章 自然の恵みで豊かに暮らす

母なる大地に足跡を残すな

健全なる長寿社会の衣食住

病気は草木が癒してくれる

必要なものはすべて自然からまかなう

野牛の恵みと教え

食べ捨てずに食べ尽くし、使いきる

トウモロコシは自然に逆らわない生き方の指針

食卓でつながるズニ族の社会

魂を満たすラコタ族の社会

アートは自然への祈り

土と水と気と火への感謝を形にすると、焼き物になる

枯れ草も、籠に生まれ変わる

絵や模様からのメッセージ

自然の美を身にまとう楽しさ


第5章 すべてはかかわりあっている

感謝と祈りの言葉(ミタケオアシン)

人も地球の自然の一部

他人を縁者として尊ぶ

人の輪で、知恵の輪も広がる

裕福さとは人に与えられること

分かちあって食べるから、おいしい

物への執着を捨てれば、生きやすくなる

ギブ&ギブの社会は優しい


第6章 サステナブルな未来へ

日本人のカン違いに気づこう

与えられた条件の中で見いだす幸福

モホーク生活共同村の目指すもの

教訓は、物語で受け継がれる

伝統への回帰で、生き方を学び直す

自然から学び、長老の声に耳を傾ける

いくつになっても遅すぎることはない


新たな始まりに向けて・・・・聖なる山ベア・ビュートにて







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