「ラコタとナバホに恋をして」

塩浦信太郎・舟木卓也・ぬくみちほ 著 ぬくみちほ 写真 めるくまーる より引用









こうして、わたしたち三人のトークの旅は、アリゾナ州のフェニックスという街で最後の

夜を迎えた。デンバーから始まり、サウスダコタへ、そこからニューメキシコ州に飛び、

陸路でナバホ大地を走りむけてこの街に辿り着いた。向かった先々の景色を眺めて

は、一世紀半前の原風景を想像しながら語り合った。わたしたちは、人生の旅の途

中でネイティブ・アメリカンに出遭った。好奇心と旅心から、その人たちが暮らす土地

に惹かれ、もちまえの人なつっこさで根を下ろした場所に友情の輪を広げている。

ときにはネイティブ・アメリカンの友人たちの代弁者になることも、喜びと感じている。

今回のトークで、部族の名前が国名のようには知られていないネイティブ・アメリカン

のいくつかの部族について紹介することができ、またそれぞれの部族の言葉や文

化、友人たちの考え方、彼らが大切にしている風土への思いなどを言葉にできたこ

とを嬉しく思っている。現在北アメリカには三百を超えるネイティブ・アメリカン部族が

あり、それぞれに言葉があり、創世神話と信仰がある。その夜、わたしは十二年前

のことを思い出していた。ナバホへの最初の旅を終えて、ニューヨークに戻った秋の

ことだった。ニューヨーク市立大学で人類学専攻の四年生になったわたしは、ナバホ

の空気が自分の肌に合いすぎたせいか、人工物があふれるニューヨークという街で、

深刻なカルチャーショックを受けていた。さらに、アメリカに滞在できる留学時間が残り

少ないのに、三ヶ月も滞在したナバホの地で納得のいく伝統文化に出会えなかった、

という焦りにも苛まれていた。そんな折り、今も大切にしている言葉を石川先生から頂

いた。学校での授業はどれも興味深く、とりわけおもしろかったのは日本人の石川登

先生(現在京都大学東南アジア研究センター助教授)が教鞭をとる授業だった。(中略)

わたしはその先生からフィールド・ワークについてご教示願おうと、ナバホでのフィールド・

ワークを書いた論文のコピーを読んで頂いた。それはシカゴのノースウェスタン大学で

単位を取得するための論文だった。石川先生からは励みになるお言葉を頂戴した。

「ひとつの民族に入り込んでその文化や民族の本質を知るには、長い時間がかかるも

のなんです。一度や二度の訪問で知るなんて無理なのですよ。保育所や友だちに

なった人たちの自宅のキッチンで、お茶を飲みながらあなたに語ってくれた言葉こ

そ、大切なものだし本質なのです。これからゆっくり時間をかけて、ネイティブ・アメリ

カンの民族性を学んでいってください。一生かけたっていいのです。人類学とはそう

いう学問なのですから」。その言葉が意味する学ぶことへの基本的な取り組み方は、

今もわたしの宝物である。わたしは人類学の研究者への道を選ばなかった。しかし取材

が不可欠なわたしの選んだこの仕事でも、すぐに答えが見い出せることばかりではない。

学ぶこと、それには時間をかけ、継続することが重要なのだ。焦ることはない。長い時間

をかけて、子どもの頃から夢みたネイティブ・アメリカンに出遭えたのだから。一生旅を続

けよう。ネイティブ・アメリカンの人たちからその精神性を学びながら、自分の生き方や

仕事に投影していこう。

エピローグ ぬくみちほ より引用



目次

プロローグ・・・・ぬくみちほ

サウスダコタ州ラピッドシティに到着

トーク1 ネイティブ・アメリカンに出遭うまで

[古典的インディアン顔1]・・・・副大統領候補ジャクソンと・・・・船木卓也

トーク2 ラコタへ ナバホへ

[古典的インディアン顔2]・・・・スピルバーグ監督作品「オールウェイズ」にスカウト・・・・船木卓也


オグララ・ラコタ族パインリッジ・リザベーションへ

トーク3 初めの頃の驚き

アメリカ大陸のサイン・ランゲージ(手話)・・・・塩浦信太郎


大平原を見渡して

トーク4 ラコタの家 ナバホの家

ラコタに学んだビーズ・ワーク・・・・船木卓也

トーク5 ラコタの食事 ナバホの食事

「古老」の誕生・・・・塩浦信太郎


デビルス・タワーにて

トーク6 メディスンマン

「ネイティブ・アメリカン・チャーチ1」・・・・薬草ペヨーテ・・・・ぬくみちほ


ベア・ビュット

トーク7 信仰と儀式

「ネイティブ・アメリカン・チャーチ2」・・・・儀式・・・・むくみちほ

トーク8 子どもたちと教育

スウェット・ロッジ・・・・ぬくみちほ


ナバホの大地に到着

トーク9 創世神話

ココペリとわたし・・・・塩浦信太郎

[ナバホのケンジさん]・・・・ぬくみちほ


キャニオン・デ・シェイ

トーク10 クラン名とルーツ

岩絵・・・・塩浦信太郎

トーク11 言葉と歌

平原で出遭った音楽・・・・船木卓也


モニュメント・バレー

トーク12 生と死のとらえ方


アリゾナのサボテン山

トーク13 それぞれの旅


エピローグ・・・・ぬくみちほ







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