「かあさん、わたしのこと すき?」

バーバラ・ジョシー 作 バーバラ・ラヴァレー 絵 

わたなべ いちえ訳 偕成社

ゴールデン・カイト賞受賞







親からの愛情、それは子供が生きていくために必要な地下水なのかも知れない。

子供はその地下水に根を伸ばしてこそ、豊かに成長していけるものだと思う。こ

の地下水が濁っていたり足りなくなったりしていると、子供という木の成長は止ま

るのだろう。この絵本は、イヌイットの伝統的な衣装、神話に登場する動物たち、

そしてその暮らしを背景に描きながら、子供が愛を確かめる話であるが、文・絵

ともに実に素朴で心温まるもの仕上がっている。

(K.K)





(本書より引用)


「かあさん、わたしのこと すき?」

「ええ すきよ、だいすきよ」

「どれくらい すき?」


世界のどこの子たちもたぶん、あるときふと親の愛情を確かめてみたくなる

のではないでしょうか。この本のイヌイットの少女もそう思いました。くじらや

つのめどり、狼などの動物を登場させながら、女の子は、くり返し おかあさ

んに問い、おかあさんもまた、くり返し 娘に答えます。“親子の絆”という普

遍的なテーマを描きながら、同時にイヌイットの暮らしがいきいきと伝わりま

す。しずかな色調の魅力ある絵は、北極圏の生活を美しくくり広げて見せて

くれます。親子で、なんどでもページを開きたくなる本です。

わたなべ いちえ



イヌイットとこの本の用語について


北極地方の人びとを、「エスキモー」ということが多いのですが、彼らは自分たちを

イヌイットとよんでいます。これは「人びと」という意味です。(一人の人間のことは

イヌックといいます。)イヌイットにはたくさんの種族があって、それぞれにみな独自

の言葉と伝統をもっています。ほとんどのイヌイットが住む北極圏は、地球上で

もっとも寒い地方です。冬は太陽は昇らず、夏には太陽は沈みません。グリーン

ランド、北カナダ、ロシアの一部そしてアラスカは、すべて北極地方となります。こ

の物語は、北方アラスカのイヌイットのものです。彼らはその地で、9000年もくら

してきました。アラスカのその地方には、町といえるほどの町はありません。ただ

数本の道があるだけです。この物語は、むかしのイヌイットの生活をみせてくれて

います。








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