「おれは歌だ おれはここを歩く」

アメリカ・インディアンの詩

金関寿夫訳 秋野亥左牟絵 福音館書店より


 






アメリカ・インディアンの詩は、著者が言っているように言葉の魔力を持って

おり、文明人の詩につきまとうこみいった飾りや理屈などはない。実に素朴

であり、大自然のあらゆるものへの感謝と慈愛に満ちている。そしてそれは

日々の現実の生活に密着したものであり、空想から発せられたものでない。

この絵本には、25の詩が載せられており、背景の絵も独特の強いタッチで

描かれているのは好感が持てる。

(K.K)


尚、アメリカ・インディアンの各部族が持つ詩の集大成と呼べる本が、

同じ著者の手で刊行されている。「魔法としての言葉」金関寿夫 思潮社





「アメリカ・インディアンの詩とは、人間と、宇宙のなかの、目に見えない存在

との間に交わされる伝達の手段なのだ」・アリス・フレッチャー(人類学者)


 


本書より引用。


魔法のことば (エスキモー族)


ずっと、ずっと大昔

人と動物がともにこの世に住んでいたとき

なりたいと思えば人が動物になれたし

動物が人にもなれた。

だから時には人だったり、時には動物だったり、

互に区別はなかったのだ。

そしてみんながおなじことばをしゃべっていた。

その時ことばは、みな魔法のことばで、

人の頭は、不思議な力をもっていた。

ぐうぜん口について出たことばが

不思議な結果をおこすことがあった。

ことばは急に生命をもちだし

人が望んだことがほんとにおこった---

したいことを、ただ口に出して言えばよかった。

なぜそんなことができたのか

だれにも説明できなかった。

世界はただ、そういうふうになっていたのだ。








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