「明日はどの道を行こう」
インディアン少女 サカジャウィア物語
ジュディス・セントジョージ著 杉本恵理子訳
グリーンアロー出版社
19世紀初め、アメリカ合衆国大統領トマス・ジェファーソンに命を受けた「ルイスとクラーク 探検隊」は、未開の地、西部に向けて旅立った。探検隊に通訳兼ガイドとして同行したのが インディアンの娘、サカジャウィアだった。彼女はわずか16歳、しかも出発する前に産みお とした小さな赤ん坊を背負っていた。しかし、たぐいまれな能力を持つ少女は、つらいときに も決してくじけず、生きる知恵をたくさん身につけていた。おかげで探検隊は、飢えをしの ぎ、インディアンの薬で病を癒し、彼女の通訳で馬を手に入れ、数々の困難を乗りこえるこ とができた。年月にして2年半、距離にして8千キロにもおよぶ奇跡の旅を成功させた、伝 説のヒロイン・サカジャウィアの物語 (本書・帯文より)
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訳者あとがき より引用 本書は、アメリカ史上非常に重要な意味を持つ「ルイスとクラーク探検隊」で、通訳兼 ガイドとして活躍したインディアン少女、サカジャウィアの真実の物語です。著者ジュデ ィス・セントジョージは、ルイスとクラークが約200年前に書き残した探検日誌をもとに物 語を展開させながら、サカジャウィアの心情や見解を著者なりに想像し、随所にちりば めています。探検隊の一員として旅するあいだ、サカジャウィアがなにを思い、どう感じ たかはまったく記録に残っておらず、謎に包まれています。しかしながら、ここに描か れた数々のエピソードは、どれも探検日誌に記録された事実そのものです。サカジャ ウィアが転覆寸前の船の縁から身を乗りだし、激流にさらわれる船荷を救い出したこ と、ショショーニ族の野営地で兄や幼なじみと劇的な再会を果たしたこと、食べられる 植物や根っこをみつけ、隊員たちの健康維持に努めたこと----ルイスとクラークは、 驚きと感動をもって、これらのエピソードを日誌につぶさに記しています。(中略)
アメリカ・インディアンと聞くと、連邦政府による強制移住や人種差別などの問題を連想 する人も多いでしょう。事実、アメリカ大陸にわたってきた白人たちは、大地の恵みに感 謝しながら暮らしてきた先住民の土地を奪い、彼らを保留地という名の狭い敷地に強制 的に押しこめました。差別や虐殺も幾度となくくり返されてきました。けれど、白人の身勝 手な行動がまだ西部におよんでいなかった時代、インディアンと白人のあいだには友情 が成りたっていたのです。ショショーニ族のサカジャウィア、白人の大尉と隊員たち、シャ ルボノー、黒人のヨーク、ネ・ペルセ族やワラワラ族の首長たち----彼らは心をひとつに し、力と知恵をあわせて数々の苦難をともに乗り越えました。言葉を超え、人種を超え、 性別を超え、年齢を超え、そこには人と人との心の交流がありました。はじめて探検隊と 接したサカジャウィアは、物語の中でこうつぶやきます----この人たちも同じなのだ。 インディアンにまつわる暗く残酷な歴史の陰には、こうしたもうひとつのアメリカ史があっ たのです。
「ルイスとクラーク探検隊」は、一部の毛皮商人をのぞいて、白人としてはじめてロッキー 山脈を越え、大陸の西の果てに到達しました。彼らが東部に持ち帰った数々の資料や情 報は、のちの西部開拓のきっかけとなりました。偉大なる父は、すべての部族が平和に 暮らすことを望んでおられる----大統領や大尉たちの約束もむなしく、やがて山々を越 えてアメリカ人が続々と押し寄せると、西部のインディアンも白人との闘いの渦に捲きこ まれてしまいます。探検隊に協力したサカジャウィアは、白人の西部進出に手を貸したと して、インディアンのあいだで非難されたこともありました。けれどサカジャウィアは当時 わずか16歳でした。彼女はただ、あたえられた仕事をこなし、目の前にある危機や困難 に立ち向かうのに懸命でした。自分の置かれた状況をありのままに受け入れ、そのとき そのときに何が必要かを考え、ただ行動する。それがサカジャウィアの生きかただったの です。あれほど恋しがっていた故郷にとどまらず、最後まで探検隊について行ったのも、 そんな彼女の生きかただったのではないでしょうか。 |
目次 序文 日本語版によせて プロローグ 1 敵の戦士たち 2 翼があれば 3 見知らぬ人々 4 冬の訪れ 5 旅だち 6 ヒロイン誕生 7 灰色グマ 8 試練のとき 9 友だち 10 心に太陽 11 飛び跳ねる魚とカメアフウェイト 12 馬の取引 13 山越え 14 根っこと魚 15 激流 16 川沿いのインディアンたち 17 絶望の岬 18 心の広さ 19 長くて、びじょ濡れで、退屈な冬 20 川のぼりの恐怖 21 本当のしあわせ 22 学ぶべきこと 23 危険な決断 24 悲しい別れ エピローグ 参考文献 訳者あとがき |