「北米先住民ホティノンションーニ イロクォイ 神話の研究」
木村武史著 大学教育出版 より引用
本書 序論より引用
本書の構成は以下の通りである。第一章「ホティノンションーニ・イロクォイの宗教と 文化の概説」は、本書の日本の読者のために新たに書き加えた章であり、ホティノン ションーニ・イロクォイの宗教・文化の概説である。(中略) 第二章「ジョン・A・ギブソン が語ったオノンダガ神話」では、まず、ホティノンションーニの伝承の一般的特徴と語り 手の特質について考察を加えている。そしてギブソンが語ったオノンダガ神話がなぜ 注目されるのかを理解してもらうために、ヒィウィットが収集した3種類のホティノンショ ンーニの世界創造神話を簡単に要約する。そして、それらが、世界の創造で話が終 わっているということを明確にし、ギブソンが語ったオノンダガ神話は世界創造以降の 神話時代の出来事を続けて語っているという特徴を示す。(中略) 第三章「歴史的 文脈---歴史との交渉」では、カナダのインディアン事情局長であったE・D・カメロン の通信記録を中心として、ギブソンがその神話を語った歴史的状況と文脈を再構築 している。第四章「伝統主義者ジョン・A・ギブソン」では、ジョン・A・ギブソンが如何 なる歴史的背景で伝統主義者として成長していったかを考察している。(中略) 第五 章「政治的物語から儀礼的物語へ」では、『6カ国の伝統的歴史』とギブソンが別の機 会に語った同じ主題の伝承との間に見られる相違を考察した。第六章「デハエーンと ハイヤワコーンの権威と権力の神話による主張」では、ギブソンの神話の中で描かれ ている世界生成神話と世界創造神話が持つ政治的・歴史的意義の解釈を試みた。特 に神話的存在者の系譜を考察することによって天上界の首長の権威と権力が如何に して人間にまで継承されていくかを考察した。その際に人類創造神話に焦点を当て、 先住民と白人という2種類の人間が創造される意義を考察し、その政治的意義を解釈 した。第七章「世界の中心としての儀礼的に変容された身体」では、ギブソンの神話で 語られている人間の身体と儀礼行為の象徴的意義を考察し、歴史的意義を含んだ宗教 的意義を考察した。(中略) 第八章「まとめ」では、本書の議論を要約し、その意義と 問題点を論じている。
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目次 序論
第1章 ホティノンションーニ・イロクォイの宗教と文化の概説 第1節 ホティノンションーニ・イロクォイの宗教と文化の概説 第2節 ホティノンションーニ・イロクォイ研究史の概略
第2章 ジョン・A・ギブソンが語ったオノンダガ神話 第1節 ホティノンションーニの伝承の語り手と物語りの特徴 第2節 ギブソンが語ったオノンダガ神話
第3節 歴史的文脈・・・・歴史との交渉 第1節 『6カ国連合の伝統的歴史』の歴史とテキスト 第2節 E・D・カメロンの通信記録とイロクォイの歴史への新しい見方 第3節 先住民の財産所有概念 第4節 カナダ法の先住民社会への侵入
第4章 伝統主義者 ジョン・A・ギブソン 第1節 先住民主導の支配的立場の受容 第2節 「伝統主義的」首長と抵抗者としてのギブソン 第3節 世襲首長としてのジョン・A・ギブソンの公的役割 第4節 ギブソンがヒィウィットに語った神話
第5章 政治的物語から儀礼的物語へ 第1節 テキストの物語としての枠組み 第2節 テキストに見られる表現上の特徴 第3節 新しい社会の起源に関わる象徴的側面 第4節 儀礼行為の卓越性
第6章 デハエーンヒヤワコーンの権威と権力の神話による主張 第1節 木と鹿の角の象徴 第2節 神話的存在者の系譜学と双子の闘争 第3節 2重の人類創造・・・・先住民と白人 第4節 人(Person)としての人間ともの(Matter)としての人間
第7章 世界の中心としての儀礼的に変容された身体 第1節 儀礼行為の神話による表象 第2節 儀礼の神話的表象と儀礼の民族学的研究の比較 第3節 水平線上に体現化された中心としての儀礼を行なう人間の象徴 第4節 人間の身体を世界軸と意義づける象徴としての儀礼的感情
第8章 終わりに
註 補記「イロクォイ6カ国保留地のカユガ首長 ジェイコブ・E・トマスの伝統文化の保存と継承」 補記註 あとがき 参考文献
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