「奪われた大陸」

ロナルド・ライト著

香山千加子訳 植田覺監修 NTT出版 より引用







本書 訳者あとがき より引用


原題が示すように、著者はコロンブス以後の500年間の歴史を、南北両アメリカ大陸

先住民の記録を通して問い直している。勝者の側から書かれた従来の歴史は、コロン

ブスの「発見」を人類の輝かしい瞬間であったと教えてきた。しかしアメリカ大陸の先住

民にとっては、これが侵略の始まりであり、今日まで続く長い抑圧の歴史の第一ページ

であった。1492年のアメリカ大陸は、全世界の約五分の一の人口を擁していた。それ

らわずか数十年を経ずして、海を渡って運び込まれた疫病と、異邦人による虐殺の

犠牲となって、ほとんどの先住アメリカ人が姿を消した。ヨーロッパからやってきた侵略

者たちは、巨額の富を手中にし、偉大な芸術を破壊し、大陸そのものを奪った。しかし

先住民族のすべてが死に絶えたわけではなかったし、彼らの歴史が消滅したわけで

もなかった。著者ロナルド・ライトは、アテスカ、マヤ、インカ、チェロキー、イロコイの

五民族を取り上げ、先住民の言葉で語られた彼らの歴史を、我々読者の目の前に

展開している。アジアやアフリカの場合と異なり、アメリカ大陸には侵略者が居すわり

続け、今日に至っている。両大陸のほとんどの国々で中心を成している人々は、ここ

に腰を据えたヨーロッパ人たちである。しかし、アンデスにはインカの言語を話す1200

万人の人々が住んでいる。また、もしグアテマラが多数決制を採用していたなら、マヤ

共和国が成立していたであろう。現在ペルー政府を悩ませている極左ゲリラ・センデロ・

ルミノソの虐殺行為は、ピサロによるアタワルパ虐殺の物語の一部であり、1990年

カナダのオカにおけるモホークの暴動は、かつてカナダがイロコイを裏切ったことに端

を発している。15世紀から1990年までの五民族の歴史を、多くの先住民の生の言葉

をちりばめながら描き出している本書は、「勝者の語る歴史」にしか触れる機会のなかっ

た多くの読者に、驚きと新たな視点を与えてくれることと思う。


 


目次

序文

地図

南北アメリカ

アステカ王国

マヤ地方

インカ帝国

チェロキー国

イロコイ連合


プロローグ

発見

T部 侵略

第1章 アステカ

第2章 マヤ

第3章 インカ

第4章 チェロキー

第5章 イロコイ


U部 抵抗

第6章 アステカ

第7章 マヤ

第8章 インカ

第9章 チェロキー

第10章 イロコイ


V部 復活

第11章 アステカ

第12章 マヤ

第13章 インカ

第14章 チェロキー

第15章 イロコイ


エピローグ

再発見

訳者あとがき








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