「シャーマンの世界」

ピアーズ・ヴィテブスキー著

中沢新一・監修 岩坂彰訳 創元社







著者はケンブリッジ大学スコット極地研究所社会科学部長で宗教人類学者である。また

インド、スリランカ、シベリアへの20年にもわたる現地調査を行い、現地のシャーマンと

生活をともにしながらシャーマニズムを研究してきた人物である。確かに本書は世界中

のシャーマンに関して、客観的に見るだけの資料を数多くの貴重な写真と共に公開した

文献であり、シャーマンの全体像を把握するには欠かせないかも知れない。ただ、あま

りにも広範囲に書かれているため、その実態を知るには別な文献を必要とするだろう。

(K.K)





シャーマニズムに魅せられる人々は、近年ますます増えている。本書では、シャーマンが

現在に至るまで何千年にもわたり実践し続けてきたことがらの全体像を、ことさら神秘めか

すことなく描くよう努力したつもりである。とくに注意を払ったのは、社会的な位置づけで、そ

れはシャーマンの活動があくまで他者との相互関係の中で意味を持つと考えるからである。

シャーマン的伝統を持つ民族集団は何千とある。そこで、その民族の中のシャーマンをでき

るだけ多く取り上げ、本書全体を通じて、読者に彼らの住む村の光景や音やにおいまで感じ

取っていただけるようにと配慮した。(本書・はじめにより)


 


本書より引用。


シャーマンの研究者が、いつも必ず尋ねられる質問がある。「シャーマンとは何者ですか」

「シャーマンというのは実際何をするのですか」「シャーマンは周囲の人間にどのような影響

を与えるのですか」。シャーマンについて書かれた書物は少なくないが、このような疑問に

はっきりと答えているもの、あるいは読者自身探求を始められるように書かれたものはほと

んどない。シャーマンの世界は、荒々しくはあるが、魅力的なものである。歴史、宗教、心理

学の各分野で、シャーマン的なモチーフやテーマ、特徴は広く見いだされる。本書は、そのよ

うなシャーマンの世界への手引きとなることを目指している。「シャーマン」という言葉の起源

はシベリアにある。これまでこの言葉はかなり広い意味で使われてきた。たとえば「呪医<メ

ディシン・マン>」「魔術師」「妖術師」などとほとんど同じ意味でも使われてきたのである。

とくに、このような人々が組織化された宗教からはずれたところで活動していた場合には、

その傾向が強かった。シャーマンとは基本的には、みずからのコントロールの元に魂を異界

に飛ばし、ふつうの人々には見えにくい霊と交渉することで、この世のさまざまな問題を解決

する人々である。これは表面上たいへんよく似ている憑霊(霊が身体に乗り移ること、憑霊

された者は霊をコントロールできない)とは区別される技術である。本書では、「魂の旅を行う

もの」というシャーマンの定義をもう少し広くとり、トランス(宗教儀礼における恍惚の境地)を

コントロールするものもこれに含めているが、このようなシャーマンの業は非常に際だってい

る。いずれにせよ、シャーマンは「呪医<メディシンマン>」、「妖術師」等の他の職能と区別

されるべきだろう。シャーマニズムに魅せられる人々は、近年ますます増えている。本書では、

シャーマンが現在に至るまで何千年にもわたり実践し続けてきたことがらの全体像を、ことさら

神秘めかすことなく描くよう努力したつもりである。とくに注意を払ったのは、社会的な位置づけ

で、それはシャーマンの活動があくまで他者との相互関係の中で意味を持つと考えるからであ

る。シャーマン的伝統を持つ民族集団は何千とある。そこで、その民族の中のシャーマンをでき

るだけ多く取り上げ、本書全体を通じて、読者に彼らの住む村の光景や音やにおいまで感じ

取っていただけるようにと配慮した。(本書・はじめにより)


 


目次

よみがえるシャーマニズム・・・・中沢新一

はじめに


第1章 シャーマンの世界観

シャーマンとは何か

霊と魂

層をなす宇宙

リアリティのレベル

シャーマンの力とは何か


第2章 土地ごとの伝統

石器時代の宗教

狩人、牧者、農民

シベリアとモンゴル

南・東南・東アジア

北アメリカ

中央・南アメリカ

その他の地域


第3章 シャーマンへの道

シャーマンの資質

イニシエーションと修行

トランスとエクスタシー

守護霊と師

異世界への旅

霊との戦い

音楽、踊り、呪文

衣装と装具

シャーマンの植物:幻覚植物

駆け引きの秘訣

シャーマンの多重性

シャーマンの死


第4章 シャーマンの癒し

失われた魂の救済

占い

狩り

共同体を護る役目

シャーマンと政治

演劇的要素

シャーマンの行動のあらまし


第5章 現代とシャーマニズム

異文化との最初の接触

宗教史の中のシャーマニズム

共産主義の統治

シャーマンの精神は病んでいるのか

シャーマンに本当の治癒力はあるのか

意識の種類

ネオ・シャーマニズム

内なる宇宙


資料編

本書の出典

民族の名称

参考文献

現代のシャーマン的運動

索引








シャーマニズム(シャーマン)に関する文献

アメリカ・インディアン(アメリカ先住民)に関する文献

アメリカ・インディアン(アメリカ先住民)

神を待ちのぞむ・トップページ

天空の果実


シャーマニズム(シャーマン)に関する文献に戻る