「ネイティブ・アメリカン 幸せの原点」

新しい人生へ・10の扉

 ビリー・ミルズ ニコラス・スパークス著

加藤諦三 訳・解説 大和書房 より







ビリー・ミルズ・・・サウス・ダコタ州パインリッジ・インディアン居留地で育つ。陸上競技でアメリカの

高校生記録をたてつづけに塗りかえたのち、運動奨学金を得てカンサス大学に進学する。卒業と

同時にアメリカ海兵隊の士官に任命される。わずか18ヶ月の訓練期間ののち、1964年の東京

オリンピック1万メートル競争に出場して金メダルを獲得、オリンピック史上最大の番狂わせと称さ

れた。その後、長年にわたりアメリカでもっとも成功した語り手の一人として、人々にインスピレー

ションを与えつづけており、全米各地の講演にはいつも大勢の聴衆が詰めかける。また、「キリス

ト教救済基金」のプロジェクト「ランニング・ストロング・フォー・アメリカン・インディアン・ユース」の

全国会長として、全米の居留地の生活の向上に努めている。


 
 


本書より引用


私は幸せになる。なぜなら、わたしは人生を笑うことを知ったから。笑うことができるのは

人間だけ。この貴い贈り物を授かった動物は他にいない。動物たちは痛みに鳴き、恐怖

に吠え、飢えの苦しみを感じることができる。疲労し、子孫をつくり、狩りをすることができ

る。嗅覚や聴覚なら人間に勝るものも多い。でも、彼らには笑うことができない。笑いは

人間だけに許されたもの。ワカンタンカからの贈り物。この世でただ一種類の生き物だ

けが授かった、かえがえのない恵みだ。ワカンタンカは贈る相手を選び抜いた。そこに

はとても大切な意味があるはず。今日このときから、わたしはこのとくべつな贈り物への

感謝を胸に人生を歩もう。私は人生を笑うことを学ぶ。壁にぶちあたったときは、ほほえ

みを浮かべよう。落ち込んだときは、声に出して笑おう。そうすることによって、人生は上

向きになる。心も、体も、感情も、あらゆる面で健康になる。笑いは人生の否定的な感覚

に蓋をする。寿命を延ばし、生きる価値を与えてくれる。笑いのパワーを知ることは、世界

でもっとも偉大な秘密の一つ。それがわたしのものになる。わたしは自分自身を、自分の

おこないを笑う。何もかもを深刻に考えすぎるのはやめる。それが一番滑稽だと、わたし

はわかっているから。たしかに、わたしはこれまで創られたなかでもっとも貴い存在だ。

でも、今日のわたしの行動で世界が変わる?  ほんとうにわたしはそんなに重要?  

いいえ、そんなことはない。今日わたしに起きることは、何世紀もすれば、取るに足らな

いことになる。それなら、なぜ人生をそんなに深刻に考える?  人生は楽しむために

ある。びくびくするためじゃない。人生を笑えば、幸せになれる。私は人生を笑うことを

学ぶ。物事がうまくいかないときこそ、笑わなければならない。問題が起きたときこそ、

ほほえまなくてはならない。どうしたらこれを実行できる? 今日、目の前にそそりたつ

壁はときがたてば影のように消えてなくなる。それは太陽が沈むのと同じ。笑いがあれ

ば、問題にコントロールされるのではなく、問題をコントロールできる。ならば今日、わた

しはいままでで一番たくさん笑おう。怒りがこみあげたときには、何年もたてばそんな思

いは忘れてしまうことに気づかなくてはならない。友だちに傷つけられたら、心の痛みは

いずれ記憶の果てに消えることに気づかなくてはならない。この思考方法を身につけれ

ば、もっと笑い、もっとほほえむことができる。笑いとほほえみを絶やさなければ、人生を

変える力が手に入る。このとくべつな力はどんなもの? 答えは簡単 --- 笑いが幸せを

呼びこむということ。笑えば、私は幸せになれる。何が起きたって、関係ない! それが

真実なのはなぜ? それがありのままのわたしだから。わたしはそうやって育ってきたの

だから。子どものころ、私は幸せなときに笑った。おとなになっても、幸せなときはやはり

笑った。やがて、笑いと幸せは一つになり、切っても切れないものになった。笑えば、わた

しは幸せだ。どうしてそれが真実だとわかる? なぜなら、わたしはじっさいにそれを体験

してきたのだから。怒っているとき、誰かが笑わせてくれたおかげで、怒りが消え去った

ことが、どれだけあったか? たちはだかる壁の大きさに思わず笑いをもらしたら、とた

んにそれがたいした問題じゃないと思えたことが、何度あったか? それは真実だ。幸せ

になるには、笑うことが必要。わたしは人生を笑うことを学ぶ。これからはもっとたくさん笑

おう。毎朝、目が覚めたらほほえみ、陽気な笑い声をあげよう。笑いはどんな問題もたい

したことじゃないと思わせてくれる。自分の失敗を笑おう。そうすれば、失敗は跡形もなく

消え、かわりに新しい希望と知恵が生まれる。自分の成功を笑い、無限のときの流れの

なかでは、それがちっぽけなものにすぎないことを知ろう。来る日も来る日も、わたしは

ほほえみ、笑う。そうすれば幸せになれるから。心から幸せになりたいから。笑っている

かぎり、私は幸せになれる。わたしは貧しさとは無縁だ。心に幸せと愛を感じるから。

わたしは愚かさとは無縁だ。世界でもっとも偉大な真実を知っているから。私は孤独と

は無縁だ。幸せでいれば、ワカンタンカが魂に語りかけてくれるから。わたしは悲しみと

は無縁だ。笑うのに忙しくて、悲しみが人生に根づく隙などないから。わたしはいま、笑

う。三分たったら、また笑う。ことあるごとに笑う。そうすれば幸せになれるから。ワカン

タンカは、わたしを救うためにこのパワーを授けてくれた。だから、わたしはこれを活か

す。そして、幸せになる。それがワカンタンカをたたえることだから。







書物に頼っていては、ワカンタンカから学ぶことはできない。それでは十分ではない。書物を

捨て、彼の創造物を見渡すがよい。母なる大地に目を向けるのだ。おまえはどんな読み物

にも負けない、多くの知恵を学ぶだろう。書物を自然のなかに置き去りにすれば、太陽が、

風が、雨が、獣たちが、やがてそれを破壊する。そうなれば、おまえはそこから何も学べは

しない。だが、母なる大地はけっして破壊されない。必要な知恵をあますところなく教えてく

れる。あらゆる生き物はワカンタンカに頼っている。彼こそが太陽、風、水、そして大地の

創造主なのだから。若き日、わしは周りの世界を見渡し、それがある偉大な力によって創

られたことをはっきりと悟った。ワカンタンカがわれわれすべてを創られた。だから、わしは

その創造物のすべてをたたえねばならぬ。優しさと愛情をもって他人に接し、自分のことは

最後に考えねばならぬ。その見返りに、ワカンタンカは心のなかの平和を授けてくださるだ

ろう。いま、わしは母なる大地に限りなく寄り添っている。こうして大地にじかに座れば、土と

わしの体とを隔てるものは何もない。わしは母なる大地と調和している。より深く考えること

ができる。わしの人生において、真のつとめはただ一つ --- 毎日、ワカンタンカを感じるこ

とだ。それはわしにとって、食べ物や水よりも大切なこと。毎朝、空が白むと、わしは川に

行き、モカシン(靴)を脱いで、水際に足を踏み入れる。そして、両手いっぱいにすくった水

を、顔に体に浴びせる。水浴が終われば、背筋を伸ばして立ち、夜明けを拝み、ひそかに

祈りをささげるのだ。わしはこれを必ず独りきりでおこなう。おのおのの魂は朝日を、新た

な大地を、ワカンタンカをただ独りで迎えなければならぬのじゃ。日中、滝や虹、朝露にぬ

れる牧草地といった美しいものに出合うたび、わしは束の間足を止め、ワカンタンカへの

愛と敬意を示す。こうすることによって、わしはワカンタンカを近くに感じる。心に愛を感じ

る。わしのおこないにあまねく浸みわたる幸せを感じる。これはワカンタンカからの貴い

贈り物 --- 彼をたたえるとき、彼はわしに幸せをくださるのじゃ。


 


本書・序文より引用


「ウォキニ」とは、ラコタ語で「新しい人生、平和と幸せの人生」を意味する言葉だ。本書は

あなたに自分自身について考え、幸せの意味を示し、人生にもっと満足するための内なる

旅にいざなう。ネイティブ・アメリカンに伝わる信仰(その根源にあるのは、瞑想、思考、夢、

自然の美しさを愛する心だ)に現代的な癒しの法則(ポジティブ・シンキングや幸せの理解)

を融合させた本書は、すでに全米の多数の人々を力づけている。「ウォキニ  ---  幸せと

自己理解への内なる旅」は、読みやすい寓話のかたちをとって、人生のあらゆる側面を向

上させる実践的な手段をあなたに伝える。物語の展開とともに、あなたは幸せにまつわる

神話を発見し、幸せの意味を学び、幸せであることが大切な理由を知るだろう。ひとたび

自分を理解し、幸せの意味がわかったなら、本書が紹介するシンプルな方法に従うことに

よって、なりたいときにいつでも幸せになれる。本書は古くから伝わる効果的な瞑想法を

伝授し、あなたをいまより賢く、素敵な、愛情深い人間にする十の視点を紹介する。本書

を閉じるころ、あなたはネイティブ・アメリカンとその信仰、生き方について少しだけ理解を

深めているだろう。そして、自分を理解し、人生を向上させる秘密を手にしているはずだ。

本書は短くシンプルで読みやすい。何より、たしかな効果を発揮する。本書の教えに従え

ば、世界がもっと美しく見えてくるし、夢をかなえるために必要なものがわかるだろう。あな

たの変化に周りの人も目を見張り、その秘密を知りたがるはずだ。「ウォキニ」は何よりも

貴い、かけがえのない宝。その豊かさを周りの人たちとも分かち合っていただきたい。


 


目次

ネイティブ・アメリカンに幸せの意味を学ぶ・・・・訳者まえがき


序文

幸せの教え・・・・巻物

イクトゥミの教え・・・・第一の絵の意味

絵を描く男の教え・・・・第二の絵の意味

木陰に座る男の教え・・・・第四の絵の意味

薪の教え・・・・第五の絵の意味

聖なる木、川、そして存在する万物の中心(パハ・サパ)の教え・・・・第六の絵の意味

四季の教え・・・・第七の絵の意味

旅の教え


読者のみなさんへ

用語解説

訳者解説








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