「アザラシとくらした少年」

レイフ・マーティン作 デイヴィッド・シャノン絵

常盤新平訳 岩崎書店 より引用








アメリカ北西岸に住んでいたチヌーク族の民話を基にして書かれた絵本

ですが、「昔人間と動物は同じ言葉で話していた」という世界各地に残さ

れている先住民の世界観を、実に感動的な挿絵と共に雄弁に語りあげ

ている傑作だと思います。特に最後の挿絵には心が慰められます。

2003年3月12日 (K.K)





本書 作者(レイフ・マーティン)の言葉から引用


この物語、「アザラシとくらした少年」は、アメリカ合衆国の北西岸にすんでいた

チヌーク族というインディアンの、ごく短い民話をもとにしています。数千年もの

あいだ、チヌーク族は、コロンビア河(この物語の“大きな川”)の河口やその

内陸沿岸で、平和にくらしていました。魚つりをしたり、岩に彫りものをしたり、

ものを交換しあったり、美しいかごをあんだり、すばらしい物語を語りついだり

して、くらしていたのです。また、季節ごとに旅をして、狩りやキャンプや植物

の根を集めるのに適した、とっておきの土地を訪れてもいました。ごく最近に

なって、コロンビア河流域にはダムがつくられ、チヌーク族の村も、つり場も、

岩の彫刻も、みんな水の底にしずんでしまいました。そして部族はどんどん内

陸へと追いやられていきました。チヌーク族は現在、デシュート川沿岸にす

む、南部連合国のウォーム・スプリング族の一派となって、ウォーム・スプリ

ング保留地でくらしています。けれども、世界中の伝統を重んじる民族とおな

じように、チヌーク族も、自分たちのことは、自分たちのことばで、ただ、「一

族」とよんでいます。この一族は、すべての生命にやどる聖なるものを、深く

理解しています。生命と活力と精神をもつ、自然の大いなる宝庫から、人は

際限なく取ってばかりいてはいけないこと、取ったらちゃんとお返しの贈り物

をしなければならないこと、そして、この贈り物から、新たな生命をもった新し

い贈り物が育つということを、よく知っているのです。この物語、「アザラシとく

らした少年」は、この心の広い一族からの贈り物です。・・・・








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