「パウワウ アメリカ・インディアンの今日を無駄にしない教え」

エリコ・ロウ著 青春出版社 より引用








本書 はじめに より抜粋引用


海を越えて見た日本は、気候的にも湿っぽい小さな島国です。誰もが肩を寄せ

合って暮らす社会では、人の視野が狭く、視点が低くなりがちなのも仕方がない

ことなのかもしれません。ことに多忙な都市生活のなかでは、仕事に追われる

毎日で楽しいことなど何もない、面倒な人間関係に嫌気がさした、失恋や失業で

世界が暗闇のようになったと感じる人や、特別な問題はなくても何となく生きがい

や張りあいを感じられない人も少なくないのではないでしょうか。思えば私もその

くちでした。バブル景気にわく青山でのコピーライター暮らしにも飽きたらず、留学

したマンハッタンに移り住み、生涯の伴侶を得たものの、まだ人生に満足、満喫

することができず、漠然とした不満やあせりから、不要なストレスを溜めていまし

た。そんな私に、もっとラクに自然体で生きることを示唆してくれたのが、アメリカ・

インディアンの教えとの出会いでした。


たとえば、オマハ族には「小鳥ではなく鷲の道を求めよ」という格言があります。

些細なことにいちいち嘴を突っ込んで不平不満のもとを見つけるのではなく、大空

の高みを駆ける鷲になったつもりで人生を達観してみる。そうすれば、周囲の美し

さに気づいたり、思いもかけなかった視点や視野が開けてくる、という教えです。

野性の自然が息づくアメリカ大陸で、自然と一体となった暮らしを堂々と守ってきた

アメリカ・インディアンの人々は、人として無理のない生き方を自然から学んできまし

た。そして、物欲や利便性より自然との調和と均衡を尊ぶ独特の価値観と、人の

運命も大いなる自然の摂理と受容する、おおらかで快活な人生哲学を、代々実践

してきました。だからこそ、白人の侵略で人口の90パーセントを失い、家財も家畜

も焼き払われ、強制移住を強いられる苦難が長く続いても、絶望や悲観から道を失

うことなく歩み続けてこれたのです。明日には新たな日が昇る、という自然の巡りの

叡智を信じて、不運を笑い飛ばし、逆境から学び糧とする。そんな彼らの強靭な精神

性を、私は何よりも崇高で美しいと思います。空を父と、母を大地と崇め、他の生き物

を地球の兄弟姉妹として暮らす奢りのない彼らの生き方は、時代遅れどころか本来

あるべき人の道で、人類のサバイバルの絶対条件。そんな彼らの生き方から学ぶ

ことで、私たちも、置かれた環境のなかで、より生き生きと楽しく生き抜いていく知恵

と本能を取り戻すことができそうな気がします。アメリカ・インディアンが各部族の伝統

文化を学びあうお祭り、パウワウにならい、さまざまな部族の伝統の教えを集めたこ

の本で、貴重な教えのエッセンスをお伝えできれば幸いです。


エリコ・ロウさんのブログ「マインドフル・プラネット」


 


目次

はじめに

一月(清めの月) 今日を楽しくすごす

二月(風の月) 悲しいときこそ笑う

三月(めざめの月) すべての命に愛される

四月(育ちの月) 新しい自分への種をまく

五月(花咲く月) 眠っていた夢を掘り起こす

六月(長い日の月) 心地よいペースで生きる

七月(熟する月) 大切な人との今を味わう

八月(収穫の月) ありのままの生を楽しむ

九月(落ち葉の月) 苦しめるものとも向きあう

十月(霜おりる月) 心をあたため言葉を見つける

十一月 (長い夜の月) 命の奇跡を喜ぶ

十二月(生まれ変わりの月) 明日の自分を祝福する








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