「ダライ・ラマが語る 母なる地球の子どもたちへ」

ダライ・ラマ14世 ジャン=クロード・カリエール

新谷淳一訳 紀伊国屋書店 より引用









まえがきにかえて ジャン=クロード・カリエール (本書より引用)

この対談は、1994年2月に、インド北部のダラムサラに近いマックロード・ガンジーで

行われた。正確な場所は、ダライ・ラマ法王が住むテクチェン・チョーリンの僧院である。

2月10日に現地に着いた私は、2月11日の午前5時ごろにはじまるチベットの新年のお

祭りを見物できた。マックロード・ガンジーには2週間滞在した。


この本のアイデアを出し旅行を手配したのは、ロラン・ラフォン氏である。私はそれ以前

に、ダライ・ラマが最近フランスを訪れた2度の機会に、それぞれ短い時間だが会見した

ことがあった。今回はパリのチベット亡命政府代表部事務所の責任者とまず連絡をとり、

彼らの協力ですべてが順調に進んだ。もちろん私の方でも数ヶ月の準備が必要だった

が、その作業は別にして、この旅行を思いだすとき、このうえなく心地良かった日々の

記憶がよみがえる。とりわけ僧院の雰囲気は、真剣でありながら穏やかで、あわただし

さや緊張はまったく感じられなかった。


出発前に私は、ダライ・ラマの求めに応じて、とりあげたいテーマを説明する手紙を何通か

書いた。テーマはみな、多くの読者が予想するように、現代社会で仏教が果たしうる役割

や、ますます強まる仏教の魅力に関係していた。私たちの日常生活、政治、ほかの宗教

との関係からみた仏教について、とくに暴力と環境と教育に重点を置いて話したいと考え

ていた。対談しているとすぐに、仏教が説いているとおり、どんな問題もそのほかの問題と

は切りはなせず、会話の一つ一つが無限に広がる関係の網と結びつくことに気づいた。

一つのテーマを仏教の全般的な態度から切りはなせないのである。実際のところ、私は、

仏教の考えや神話や典礼の複雑な細部にはこだわらないようにしながら、テーマをこれ

これと限定することはできなかった。


一回目の対談のときに、まず私は次のように提案した。ダライ・ラマが世界中で最も忙しい

一人だと知っていたし、時間も十分なかったため(そもそも今生だけで足りるだろうか?)、

法王がすでにほかの何冊もの著書で論じている仏教の教義や実践についての質問は避

け、必要に応じてそれらの本から引用するのである。すぐにこのやり方を承諾してもらった

おかげで、ずいぶん時間を節約できた。


いくつかの細部を詰めるため、9月に一度パリで再開した。まず、読者のレベルをどうするか

が大きな問題になった。誰に向けて語るのか? 専門家だけを相手にするのは避け(そもそ

も私は専門家などではない)、できるだけ多くの人に読んで欲しいと二人とも望んでいたの

で、会話のあいだに説明をはさむ必要があるとすぐに私は考えた。話題にのぼる概念につ

いて、ダライ・ラマ自身は完全に把握し私も多少知っているが、大部分の読者は知らない

か、表面的でまちがった理解しかできないおそれがある。そこで、ダライ・ラマの許しを得

て、私が必要と判断したときには、文献を参考にして会話の途中に解説を加えた。もちろ

ん、ダライ・ラマと協力者たちが本書の全体をチェックした。(中略)


二人とも、説教臭い本のリストにさらに一冊を加えたくなかった。つねに開かれ、予想を裏切

り、なかなか接近できない領域へいざなう、そんな真の対話にしたかったのである。私は、

敬意を払うあまり過度に緊張するのも、無意味になれなれしくするのも、どちらも避けようと

努めた。私の方が長々と話し続けたこともあったが、それはダライ・ラマが促したからである。

ダライ・ラマは、ときおり私にうかがいを立てるだけではなく、ありがたいことに、私の話にじっ

と耳を傾けてくれるのだった。したがって、この本を研究や発表と考えて欲しくはない。いわ

ば、最高の相手と二人で出かけた散歩、秩序を持ちながらも混沌し、集中力だけは欠かさな

い散歩として、あるがままに受けとって欲しい。はっきりことわっておくが、仏教の教義の多く

の点については、ほんの軽くふれただけで、大乗仏教のきわめて複雑な思弁についても、

論じたなどととうてい言えない。私が一番重視したのは、過去も現在も、ときには現在の方が

より激しく私たちを揺さぶっている人間をめぐる現象のいくつかについて、飾らずに語る声、そ

のたびごとに二千年以上の思索と経験に基づいて語る声に、耳を傾けることであった。







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