「生命の大地」

アボリジニ文化とエコロジー

デボラ・B・ローズ著 保苅実訳 平凡社 より引用










「生命の大地」の執筆は、1992年にオーストラリア遺産委員会から要請されました。遺産

委員会は、多少の教育を受けた人なら読める、アボリジニの人々とカントリーの関係を説

明している本を求めていたのです。高度に学術的な記述は望まれていませんでした。わ

たしも、学術的な言語を使わずにアボリジニの人々の複雑な思想を記述するという方針

に同意しました。本書の執筆を依頼された背景には、一つの論争も関係しています。次

のような主張があります。「多くの西洋人は、原生自然に価値を見出す。なぜなら、そこ

に行けば、近代的農場や街や郊外といった、変容してしまった景観から逃げ出して、心を

リフレッシュすることができるからだ」。こうした主張をする人々は、そこに人間のいない

景観を求めていることが分かります。その一方で、アボリジニの人々のあいだには、別の

主張があります。アボリジニの人々は、自分たちの故郷が「人間のいない景観」として定

義されることに不快を感じています。かれらの主張によれば、「原生自然」という概念に

は二つの重大な問題があります。一つは、先住民が自分たちの故郷で暮らす権利が十

分に認められていない点、そしてもう一つは、先住民による積極的なカントリーへの働き

かけが否定されている点です。(中略) 「生命の大地」は対話的に記述されています。

つまり、アボリジニの人々の言葉とわたし自身の言葉の両方を使いました。そしてたくさん

の詩歌を引用しました。なぜなら、こうした美しい言葉は、アボリジニの人々が環境とふれ

あうときの心や魂、喜びや情熱を雄弁に語っているからです。散文ではどうにもならない

ことを、詩歌が可能にしてくれます。詩、歌詞、あるいはもう少し格式ばった発言も使うこ

とで、異なる言葉や思想のあいだをいったりきたりしながら、文章を織りあげてゆきまし

た。対話的記述は、脱植民地化の文脈において、論理的な記述スタイルです。ある一

つの権威が世界の定義をくだすことが決してないからです。この記述はまた、読者に対

しても開かれています。「生命の大地」は、読者が自分の考えにもとづいて参加できる

ような、そんなスペースも残しています。アボリジニの人々の詩歌をぜひ声に出して読ん

でみてください。そして何を伝えているのか、よく聞いてほしいのです。

(本書 著者と翻訳者の対話 あとがきにかえて より引用)



目次

日本語版のための序言

はじめに

第1章 カントリー

海と天空

「約束の地」


第2章 原生自然と荒地

所有される大地、愛される台地

精霊を刻みこむ


第3章 ないものはない

生きものたち

ドリーミング

トーテム

すべては人間だった

知識


第4章 聖なる地理学

男の場、女の場

生命のさまざまな中心

何艘もの箱舟?

カントリーの結びつき

聖地

いつも尋ねる


第5章 ドリーミング・エコロジー

保護地域

生命の水

健康と幸福の儀礼

危険

季節の移りかわり


第6章 カントリーを大切にする

燃え木農業

シンボルと社会生活

完璧な人なんていない

死者の身体と精霊

豊かな人々


第7章 環境破壊


第8章 人権と環境権


イラストレーターあとがき

原注

著者と翻訳者の対話・・・・あとがきにかえて







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