Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)



リゴベルタ・メンチュウ(1992年のノーベル平和賞)

「先住民族女性リゴベルタ・メンチュウ」岩波ブックレットNO.342表紙より




「国境を越えた」グアテマラの先住民族に捧げる歌
先住民族の智恵による新たな世界の創造(仮題)
子供たちへの正しい教育が未来と連帯を産みだす(仮題)








「国境を越えた」

グアテマラの先住民族に捧げる歌

リゴベルタ・メンチュウ




国境を越えた、愛する者よ

いつ戻れるかは分からない

多分、夏だろうか

すべての星を祭りのように鏤めた夜が白々と明けるとき

ばあちゃんのお月さまと父さんのお日さまが

また挨拶するときだろうか



最初の雨が告げられ

ビクトルが軍隊に銃殺されたあの午後

植えていたアヨテが芽を出すだろう

桃は花をつけ

わたしたちの畑は花一杯になるだろう

わたしたちは玉蜀黍をうんと植えよう

わたしたちの地のすべての子どもたちのために玉蜀黍を植えよう

数限りない虐殺と恐怖を逃れていた蜂の群れも戻ってくるだろう

そしてごつごつした労働者の手から

蜜を取る素焼きの壷がまたいくつもいくつも生まれるだろう。



国境を越えた 悲しみに満ちて

あの暗い雨の朝の 私の存在を遥かに越える

無限の痛みを感じる

マパチェス(鼬)が泣く

サラグアテス(山猿)が泣く

コヨテとセンソントレス(鳥の一種)はぴたりと押し黙る

蝸牛(かたつむり)と梟(ふくろう)は喋りたがっている

血だらけの母なる大地は喪に服し

悲しみに満ちて夜も昼も嘆き続ける

鍬の囁き、山刀の声、石臼の呟きが聞きたいよといい

夜明けにはいつも、ご自慢の息子たちの歌や笑い声を聞こうと

耳をすませるだろう



国境を越えた

誇りは心に重く

雨の降るあの土地の無数の思いを抱えて

何千年も続くパトロシニオ(人の名)の記憶を抱いて

私と一緒に生まれ育ったカイテス(先住民のサンダル)

春の匂い

苔の匂い

玉蜀黍畑の愛撫

子どものとき自慢だったタコ

帰る日には祭りのための色鮮やかなウイピルを着よう

乾いた玉蜀黍も抱えて行こう

そうだ! どうあってもこの体は生まれたところに戻るだろう



国境を越えた 愛する者よ

朝になったら帰ろう

拷問された母さんが

また色鮮やかなウイピルを織るとき

生きながら焼かれた父さんが

また目を覚まし

私たちのランチート(小屋)から

お日様におはようというとき

そうしたら皆のためにクシャやポンがあるだろう

子どもたちの笑い声も聞こえるだろう

マリンバは陽気に響き

どの小屋にも柳の小枝(籠などをつくるための材料)が積まれ

川では毎朝ニシュタマル(玉蜀黍と灰をまぜたもの)が洗われるだろう

松明がともされ、

道を、峡谷を、岩を、畑を

あかあかと照らすだろう





(1992年10月9日、マナグア市の中米大学の名誉博士号

授与式で、挨拶の冒頭にリゴベルが読んだ詩。引田鎮枝訳)

「先住民族女性リゴベルタ・メンチュウの挑戦」岩波ブックレットより


 
 


先住民族の智恵による新たな世界の創造(仮題)




私たち先住民族は、数千年にもおよぶ文化がもたらす無数の智恵

を手にしています。しかし、あまりにも長い間、わたしたちに対して

加えられてきた迫害と破壊から身を守るために、この偉大なる経験

と価値は、共同体の奥底に隠され続け、明らかにされることがあり

ませんでした。これらの価値が尊重され、他の人びとと共有される

ことがなかったのです。アメリカ大陸のあらゆるところで、先住民族

は独自の闘い、固有の組織形態と視点を保っています。これらす

べてが私たち先住民族による人類への大きな貢献をなしうるので

す。「先進世界」が人間として多くの価値を失ってしまったことは明

らかです。豊富な物資資源は、たくさんの若者に絶望をもたらして

います。共同体が必要としないものがありすぎ、そのために人類

が破壊されてしまうのです。私たち先住民族は、科学者に知られ

ていない技術も所有しています。これはたぶん良いことでしょう。

科学的な分析は、貧しい人びとの日常、とりわけ子どもに与える

食料を求めて毎日闘い続ける人びとの経験とは、あまりにもかけ

離れています。科学者の発明は、人類の大多数の基本的な必要

に応えるものではありません。私たち先住民族は、生命、宇宙、

男、女、そして自然について、「西洋」世界とは完全に異なるとら

えかたをします。大地は、世界の野心的な人びとが望むような

鉱物、石油その他の経済的な資源以上のものです。父なる太陽、

母なる大地、祖母なる月は、生活と精神のすべてにかかわる存在

です。大地は、文化のルーツであり母乳の源、あらゆる思想と精神

の源なのです。大地は私たちの記憶を保持しており、へその緒が

埋められているところです。私たちは何世代にもわたって大地を

歩いてきました。そして子どもや孫が歩き続けられるために、母

なる大地の世話をすべきなのです。



「先住民族女性リゴベルタ・メンチュウの挑戦」岩波ブックレットより引用


 


子供たちへの正しい教育が未来と連帯を産みだす(仮題)


私たちアメリカ大陸の80%の人びとが大学や技術を学ぶために

学校へ行けないでいます。しかしそのことは、自分たちの文化を

持たない、学ぶことを知らないというわけではありません。今こそ

私たちは人類が一体どんな歩みを遂げてきたかを深く知る必要

があるでしょう。今の学校教育ではスペイン語で少数者の考え

が押しつけられているのです。民族衣装は禁じられ、人権差別

的教育を受けることで優越感をもたされ、先祖を恥じ入るように

なります。政府は先住民族の歴史を隠し、闇に葬ります。先住

民族が読み書きを覚えれば、法律を知り、他国の人権状況を知

るようになることを恐れているのです。私たち民族の言葉は公用

語として認められず、文化や歴史への貢献も評価されないまま、

本来の姿を奪われ、押しつけられた構造の最底辺に組み込まれ

てしまうのです。それならば母なる大地から学ぶほうがずっと役

に立ちます。私たち先住民族の知的遺産とは、科学、技術、生産

のリズムや宇宙の時、種についての智恵なのです。世界が抱え

る無数の問題、民族の間の大きな格差に注意を呼びかけ、多く

の人びとの良心を目覚めさせなければなりません。他の人びと

が直面する問題に対する無感覚さを打ち破るためには、子ども

たちへの総合的な教育が不可欠です。発展や進歩の概念を

根底からとらえ直す世界的規模での教育が必要です。私は、

多くの人びとが問題に気づき、人権を求める闘いに参加し、連

帯を深めてゆくのでなければ、平和賞も国際先住民族年も意

味をもたないと考えます。連帯というのは今ここで私たちがお互

いに知り合うことだけではなくて、これからどんな仕事を将来に

向かってしていけるのか、そしてお互いの責任をお互いに認め

あう、感じあうこと、これが連帯の一つのあり方だと思っていま

す。どんな小さなところからでも世界はもっと公平になれるんだ

と信じつつ仕事を続けていったなら、きっといつかその日は訪れ

るでしょう。



「先住民族女性リゴベルタ・メンチュウの挑戦」岩波ブックレットより引用








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