大きな海賊船(木製)
骨董品屋さんで購入した、木製の大きな海賊船(帆船) 父親が船乗りだったため、私も少年時代は自分も船乗りになりたいと 思っていた時期がありました。まあ、船乗りと言っても海賊ではありま せんでしたが、やはり「海の男」への憧れは強いものでした。たとえ、 父親が船乗りでないにしても、男の子の場合、海や船に憧れてしまう のかも知れませんね。この木製の模型は「尾崎」さんという方が創ら れたものです。古いもので幾つか破損したりしている部分はあるもの の、とても精巧に出来ており、見ているだけで海の上を勇敢に突き進 んでいく姿を想像してしまいます。前に紹介した蒸気機関車(木製)と 共に、少年時代に戻してくれます。ちなみに甲板に立っているのは、 「ひょっこりひょうたん島」のダンディです。 |
「輪切り図鑑 大帆船 トラファルガーの海戦をたたかったイギリスの軍艦の内部を見る」
スティーヴン・ビースティー画 リチャード・プラット文 北森俊行訳 岩波書店
訳者のことば 北森俊行(東京大学工学部教授)
日本は海に囲まれた国であるが、世界制覇をかけた海の物語はない。この本は英国 の話ではあるけれども、ページをめくるごとにどんどん引き込まれていくのはなぜだろ う。克明に描かれたこの“クロスセクション(断面図)”が、考えてもみなかった18世紀 (~19世紀初頭)の大帆船のなかでの修羅場を目の前に展開してくれる。食べ物、 けがや病気、労働や娯楽、睡眠、規律、戦闘など、提督を頂点にいろいろな階級の 乗組員やねずみやうじ虫までがいっしょになって船内のあちこちで繰り広げるドラマに、 ついつい夢中になってしまう。この本の大帆船は、イギリスのネルソン提督の旗艦ヴィ クトリー号をモデルにし、歴史的にも正確を期して書かれている。ネルソン提督の率い るイギリス艦隊は1805年10月21日、スペイン南西のトラファルガー岬の沖合いで、 フランス・スペイン連合艦隊と戦って大勝利を収め、ナポレオンのイギリス本土侵攻を 諦めさせるとともに、ヨーロッパの制海権をイギリスにもたらしたのであった。このヴィク トリー号は、今もポーツマス港(イギリス南岸)に繋留されていて実物を見ることができ る。日本の近代的な航海技術は、イギリス人の指導を受けて始まった。そのような関係 で、船の装具や術語は、日本語訳がないわけではないが、英語のまま使っているもの が多い。それをしいて日本語にすると、陸にいる私たちには聞いたこともない難しい用語 になるようなので、いくつかの用語は無視しないで英語をカタカナにした。また、たとえば 甲板は“こうはん”と読むそうであるが、“かんぱん”のほうがなじまれていると思い、その ようなふりがなをつけた。英語のタイトルにある“man-of-war”は、辞書によれば“軍艦” である。でも日本語で軍艦というと、鉄でできたいかつい艦船をイメージしてしまうので、 訳書は「大帆船」とした。本書の舞台は、木造の帆船であるからこそ面白い。ページの 終りまでいったら、また初めから大帆船のすみずみまで見たくなるに違いない。
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