「アメリカン・インディアンの歌」
ジョージ・W・クローニン編 渡辺信二訳
松柏社
この文献の偉大さは三つあります。一つは1918年に発行された本であるということ (1892年のインディアン虐殺から26年後)、もう一つはこれがアメリカ文学界に影響 を与えた点。最後に一番重要なのだが、アメリカへの抵抗運動が姿を消した当時、 彼らインディアンが何を思い、戦い、祈りながら生きていたかということを垣間見るこ とが出来る点であるかと思います。文字を持たないインディアンの口承文学(詩や 儀式の歌、昔話)を収集するため、インディアンの言語に堪能な複数の人間によって なされた画期的な文献でありますし、数多くのインディアンの文献の中でも最も重要 な位置に占める文献の一つであることに疑いの余地はないと思います。 2008年3月20日 (K.K)
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本書「あとがきにかえて」より引用
ここに翻訳した「アメリカン・インディアンの歌」は、「消えゆく民族」というイデオロギーが 一般化していた1918年に初版が出版されたが、その出版は、ひとつの出来事とみなされた。 なぜなら、これによって、インディアンの詩の関心が一気に、かつ、広く一般に喚起され、ひい ては、詩人たちの興味、および、若い研究者の注目がインディアン文化・文学へ向かうためで ある。それまで、インディアンの文化への関心は、19世紀前半のヘンリー・スクールクラフトよ り引き継がれてきたが、インディアンの詩は、おもに学術報告書か研究書でしか読めなかっ た。本書の初版は、アメリカン・インディアンの詩を網羅的に集めた最初の権威ある、一般読 者向けの作品集であると高く評価された。原書へ歌を提供したフランツ・ボアズ、ダニエル・G・ ブリントン、ナタリー・カーティス、フランシス・デンスモア、アリス・フレッチャー、ワシントン・マ シューズ、フランク・ラッセルなどは、インディアンの言語に精通した学徒であるだけでなく、そ れぞれのインディアンの実際の生活を考察するなかで、歌を採集し翻訳しており、今でも、 インディアンの詩選集を出版する際の出典となっている。もともと、インディアン文学は口承 文学なので、だれが語ったのか分からないものが多い。特にすばらしい話や歌は、さまざま な人がさまざまな場で即興的に変化を加えながら、語り継ぎ、歌い継いできたから、結果、 さまざまな形で伝わることになる。この際に、原作者や修正者の名は、問題にならない。これ が、口承文学の匿名性および可変性である。原書は、この口承文学の伝統を引き継ごうとし ている。たとえば、総編集者クローニンの名まえは、表紙に現れるだけで、他の箇所にはまっ たく出てこない。初版の謝辞を書いた者も、不明のままである。また、作者や歌い手が分かっ ていても、言及されないか、タイトルに組みこまれている。また歌の収録者・翻訳者の名まえも、 目次に記すだけである。原書は注も省く。インディアンの歌は、いつどこでだれを聞き手として、 どういう目的で歌われるのかが、重要であったが、そうした説明を含めて、注をいっさい省くこ とで、むしろ、時代を超える文学として扱おうとしているように思える。
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目次 若い月 1 東部森林のほうから 別れた恋人たち(アブナキ) 復讐の歌(ミクマック) イロクォイ 炎と暗闇の儀式 蛍の歌(オジブワ) じぶんのものに呼びかける(オジブワ) オジブワの戦いの歌 愛なる歌(ウィネバーゴ 聖なる歌(ウィネバーゴ) 聖なるミデの歌(オジブワ) チペワの歌 追悼の歌(イロクォイ)
2 南東のほうから ウォラム・オラムの断片(デラウェア) チェロキーの聖なる定式詠唱
3 大平原のほうから 狩りの歌(ダコタ) 子どもの作り方(オセージ) オマハの歌(生まれた子どもが 宇宙に紹介される、病人のためのスウェット・ロッジを 準備するときの儀式の歌、病人のための歌、宇宙の力を祭る、嘲りの歌) ゴースト・ダンス(ゴースト・ダンスの歌《アラパホ》、救世主が語る《シャイアン》、輪廻《コマンチ》、 生命回帰の歌《パイユート》、創造《スー》、審判《カイオワ》、勧告《カドー》
4 南西のほうから 戦いの歌(ズーニー) 雨を求めるシーアの祈り(ジャイアント・ソサイアティの雨の歌、ウワナミへの祈り) かささぎの歌(ナヴァホ) 家神の庭で歌う(ナヴァホ) ナヴァホ山の詠唱他(序 ディリィ・ネヤニへの祈り、世界を創造したときのベコツィディの歌、 曙の少年の歌、祈り夜の詠唱第二日のために、夜の詠唱第九の歌として、守護の歌) 町の触れ訳が夜明けに祝祭を告げまわる(プエブロ) 馬の歌(ナヴァホ) 青いコーンの踊りの歌(ズーニー) ピマの一連の儀式の歌 洪水(ピマ) 大地の歌(ナヴァホ) 狩猟の歌(ナヴァホ) 雨の詠唱の歌(ナヴァホ) 山の詠唱から(ナヴァホ) コーン挽きの歌(ズーニー) コロスタ・カチーナの歌(ホピ) ヘー・ヘア・カチーナの歌(ホピ)
5 カリフォルニアのほうから 精霊の歌(ウィントゥ) クマスタムクソの歌(ユマ)
6 北西海岸のほうから ツィムシアンの歌 ハイダの三つの歌 熊の歌(ハイダ) ハイダの子守歌 ビルクーラの死の歌 トリンギットの歌 呪いの歌(クワキュートル) チヌークの歌
7 極北のほうから 死者に捧げる大饗宴のための歌 オクセトクの歌(エスキモー) 夏の歌(エスキモー) セドナとフルマ・カモメ、エスキモーのバラード
8 歌を解き明かす コンスタンス・リンゼイ・スキナー・・・・夏の夜明け または テム・エヨス・キー、捜索の歌、 鞭を編む歌、若い母の歌、籠を編む歌、変化の歌、豊漁の歌、春が大地の手品師h歌う、 チーフ・キャピラーノが 夜明けに 名まえをくれたものへ呼びかける、気性激しい女の子守 り歌、インディアンの恋人の賛歌 メアリー・オースティン・・・・丘の歌(ヨクーツ)より、精霊でも鳥でもなくて(ショショーニの 恋愛歌、山の精への祈り(ナヴァホより)、美しい女が去る際の歌(パイユートより)、情熱 的な恋人の歌(ヨクーツより)、心友(ショショーニの恋愛の歌)、意気消沈の歌(パイユート から) フランク・ゴードン・・・・星の輝く南の道に沿って(南西部族の歌)トムトム、サ・ア ナライ、 戦さへ向かう途上で、母なる大地、狼たちの饗宴、「一匹の犬」がデラウェアに呼びかける、 アリス・コービン・ヘンダーソン・・・・耳を澄ます、バッファロー・ダンス、戦いの地で、風、求 愛、別れ ポーリン・ジョンソン・・・・消えた潟 わたしの櫂の歌 コンスタンス・リンゼイ・スキナー・・・・プレム サリア キー または 秋の夜明け
9 ハコの祈り ポーニーの儀式から 10 北から南から 歌が
注 あとがきにかえて 参考文献表
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