「草が生い茂り、川が流れる限り アメリカ先住民文学の先駆者たち」
西村頼男著 開文社出版 より引用
本書 あとがき より抜粋引用
1972年の秋、私は藤永茂氏の「アメリカ・インディアン悲史・・・・誇り高いその衰亡」を 出版直後に、書店の店頭で見つけた。購入すると、一気に読んだ。1960年代後半は アメリカの南部にいたから、アフリカ系アメリカ人の存在は少しは見えていた。しかし、 私の頭の中で先住民は存在していなかった。量子化学の専門家である藤永氏の本を 通して、文字を持たなかった先住民が白人の侵入以後たどった歴史を初めて知った。 その後、北海道に赴任することになり、アメリカ史を専門にする同僚をまじえて「アメリ カ・インディアン史」を翻訳する機会を得た。翻訳することによって、アメリカという国家の 正体が少し見えてきたのは成果であった。その後、2002年に、「ネイティブ・アメリカン の文学」を編集することになった。それは以前から、先住民の文学作品を少しずつ読み 始めたが、現在、全体像を把握するにはほど遠い。しかし、「歳月は人を待たず」で、私 はこの3月末で人生の節目を迎える。そこで、まことに拙い書物であるが、研究ノート を元にして現代先住民文学の先駆者たちを紹介することにした。イーストマンの「イン ディアンの英雄と偉大な族長たち」を紹介した部分は冗長であるが、戦士・指導者たち の実像を知るのに役立てば幸いである。
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目次 第一部 第一章 チャールズ・A・イーストマン 第一節 スー族と白人 第二節 イーストマンの生涯 イーストマンの家系 ミネソタ・スー族の蜂起 イーストマンの教育 エレン・グッデル ゴースト・ダンス教 ウンデッド・ニーの虐殺 パイン・リッジの医師 YMCA事務局長 年金支給交渉 クロウ・クリーク事務所の医師 スー族の命名官 著述と講演 アメリカ・インディアン協会と市民権獲得運動 離婚 査察官 晩年 第三節 著述 1 「アメリカ・インディアンの少年期」 戦士 猟師 物語の発見 二人の影響 2 「深い森から文明へ・・・・或るインディアンの自叙伝」 戦士イーストマン 白人(キリスト教)文明批判 3 「古きインディアンの時代」 「アンテローブの恋」「歌う精霊」「飢餓」「兵士長」「白人の使者」「スナナの仔ジカ」「ブルー・スカイ」 4 「ウィグワムの夕べ・・・・スー族の民話(再話)」 5 「インディアンの魂・・・・或る解釈」 寡黙 個人 キリスト教批判 生き物 6 「インディアンの英雄と偉大な族長たち」 レッド・クラウド スポテッド・テール リトル・クロウ タマヘイ ゴール クレージー・ホース シッティング・ブル レイン・イン・ザ・フェイス ツー・ストライク アメリカン・ホース ダル・ナイフ ローマン・ノーズ ジョーゼフ族長 リトル・ウルフ ホール・イン・ザ・デイ イーストマンの視点 第四節 医師・科学者としてのイーストマン ゴースト・ダンス教 クマ踊り ペヨーテ崇拝 第五節 文明の受容とアイデンティティの揺らぎ 文明の受容 ことばの揺らぎ 保留地批判
第二章 ダーシィ・マクニクル
第一節 マクニクルの生涯 家系 マクニクルの教育 大恐慌 主流文化の摂取 西部の発見 インディアン対策局(BIA)の職員 コリアの改革 応用人類学者 全国アメリカ・インディアン評議会の設立 連邦管理終結政策 クラウンポイント計画 シカゴ会議 オリヴァ・ラファージ カナダ 晩年 第二節 著述 1 「包囲された人々」 梗概 作品の草稿 キャサリン 最初のキリスト教信者、そして伝統への復帰者 母として 精神の復活 アーチャイルド ヴァイオリンと都会 故郷・自然 父との対決 キリスト教からの解放 ルイス 外の世界へ 作品の評価 2 短編 「銀色のロケット」「通学」「神に捧げる肉」「汽車の待ち時間」「御し難い」 「ワシは飢えている」「異国のトウモロコシ」「感謝」 3 「太陽の使者・・・・トウモロコシの物語」 梗概 歴史観と先住民観の修正を求めて 個人主義を越えて 執筆時の背景と評価 4 「敵の空より吹く風」 梗概 メディシン・バンドル フェザーボーイの話 モンタナ 文明化政策 境界に立つ者 アントワン 作品の評価
第二部 第三章 ジョン・ロリン・リッジ 第一節 チェロキー族 文明化政策と金の発見 ニュー・エチョタ条約 リッジーワティ一族 メージャー・リッジ エリアス・ブーディーノー(バック・ワティ) スタンド・ワティ ジョン・ロス 第二節 リッジの生涯 第三節 「ホアキン・ムリエター・・・・名高きカリフォルニアの山賊・・・・の生涯と冒険」 梗概 カリフォルニアにおける金の発見 ホアキン伝説 義賊ホアキン 作品の評価 第四節 先住民としてのリッジ
第四章 セアラ・ウィネマッカ 第一節 パイユート族 第二節 ウィネマッカの生涯 家系 白人文化との接触 マッド湖虐殺事件 或る手紙 バノック戦争 講演会、そして、晩年 第三節 「パイユート族の中で生きる・・・・虐待と主張」 第一部 第二部 第三部 告発 軍隊への依存 教育 白人(キリスト教)文明批判 評価
第五章 モーニングドーヴ 第一節 セーリッシュ族 第二節 モーニングドーヴの生涯 第三節 著述 1 「混血児コゲウェア・・・・モンタナの大牧場の生活」 梗概 混血という主題 デンズモア 書物と歴史 マクホーターの関与 作品の評価 2 「コヨーテ・ストーリーズ」 3 「モーニングドーヴ・・・・或るセーリッシュの自叙伝」
第六章 ジョン・ジョゼフ・マシューズ 第一節 オーセィジ族 第二節 マシューズの生涯 第三節 「夕映え」 梗概 文明化政策の積極的受容 故郷批判 白人文明の招待=饒舌 第一次世界大戦 伝統 チャルの成長 作品の評価
注 用語・人名一覧 先住民関連年表 本書関連年表 関連文献一覧 あとがき 索引
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