「インディアンの日々」

生きることに迷ったら、インディアンの声を聞け

横須賀孝弘著 mono特別編集

ワールドフォトプレス









本書より 引用



自然の恵みを追い求めて、

遠い土地の人たちと品物を交換するため、

ときに敵と戦うため、

彼らは、いくつもの道を歩き、旅をした。

途中で倒れてしまわぬよう、大地を踏みしめ、

進むべき方向を見失わぬよう、風の声に耳を済ませて。

自然との調和を何よりも大事にし

豊かな知恵を育んできたインディアンが

今に伝える暮らしの道具、着るもの、住まい、

舟や馬具、動物や植物の使い方、言葉・・・・

今日という日をひたむきに生きた

彼らが教えてくれることとは・・・・



本書 インディアン・ジュエリー 元祖ナバホ流のジュエリー より抜粋引用



銀のアクセサリーは東部森林地帯や大平原、北太平洋岸でも作っているが、インディアン・ジュエリーの

本場といえばやはり南西部だ。カジュアルさと同時に伝統を感じさせる独特の風格が人気の秘密だろう

か。とは言え、その歴史は意外に新たしく、創始者の名前や、製作が始まった年代まで分かっている。



南西部インディアンの銀工芸は、ナバホ族のアツィディ・サニが、メキシコ人銀細工師フアン・アネアから

手ほどきを受けたことに始まる。時は1850年代後半。日本でいえば幕末の時代だ。



ほどなく、ナバホ族の中に、アツィディ・サニにならって銀細工を始める者が現われる。そのひとり、アツィ

ディ・チョンは、銀の円盤(コンチョ)を並べたベルトを考案した。また、1880年、それまで銀だけで作られ

ていたジュエリーに、トルコ石(ターコイズ)をあしらうことを考えついたのも、アツィディ・チョン、ないしは弟

子のペシュラカイ・アツィディだった。



「毛布」の項で見たように、ナバホ族は、プエブロ・インディアンやスペイン人の文化を吸収しつつ、独自の

解釈や工夫を加えて、独創的なものを生み出してきた。その才能は、ジュエリー製作でも大いに発揮され

た。代表的な例が、「スカッシュ・ブロッサム(カボチャの花)」と呼ばれるネックレス。大粒の銀ビーズに、

花を模した形の銀ビーズを連ね、「ナジャ」と呼ぶ三日月形のペンダントをぶら下げた装身具だ。



スカッシュ・ブロッサムの各パーツの意匠は、ヨーロッパが起源だ。「カボチャの花」という名前のもとになっ

た花の形の銀ビーズは、スペイン人がズボンの飾りに使っていた小さな銀細工を真似たもの。その飾りは、

実際にはカボチャの花ではなく、スペイン人にとっての希望と献身のシンボル、石榴(ざくろ)の花を象った

ものだった。また、三日月形のナジャは、スペイン人が馬勒(ばろく)の飾りとして使っていたもので、元は

北アフリカに住むムーア人の(さらに起源を遡れば、ローマ時代にまで行き着く)魔よけの意匠だった。



スカッシュ・ブロッサムは、このような異国の要素を組み合わせたものであるにもかかわらず、全体として、

がっしりとした力強さの中にどこか優美な繊細さの漂う、ナバホならではのアクセサリーに仕上がっている

のである。



インディアン・ジュエリーの先駆者であるナバホ族は、ネックレス以外にも、指輪やブレスレット、イアリング、

コンチョ・ベルト、バックル、ブローチ、飾りボタンなど、さまざまなシルバー・アクセサリーを生み出してきた。

その特徴は、大胆でシンプルな銀使い。全体的にがっしりと重い造りで、男性的な印象を与えるものが多い。

あくまでも主体は銀で、トルコ石やサンゴなどはアクセント的に配されているに過ぎない。



ところで、一般にアクセサリー類は着け過ぎると野暮ったくなりがちだが、インディアン・ジュエリーに限って

は、その原則は当てはならない。お祭りなどには、ありったけのジュエリーで身を飾るのが、ナバホ流ファッ

ション術である。



19世紀末まで、インディアン・ジュエリーを身に着けるのは、もっぱらインディアンだった。ナバホの銀細工師

は、仲間のナバホや、ズニ族など周辺のインディアンのためにジュエリーを作っていたのだ。ところが、20世

紀に入る頃から、白人の仲買人や旅行客相手にジュエリーを商うようになった。ナバホの銀細工師は、売れ

筋に受けるよう、さまざまなデザインや新機軸の開発を試みていく。売れるとなれば、ズニ族風やホピ族風の

作品を作ることも辞さないのがナバホ流だ。一見、ズニ族ないしホピ族が作ったか見える作品が、実はナバホ

族の工芸家の手によるものだった、なんてことも結構あるようだ。



本書 はじめに 横須賀孝弘 より引用


20年ほど前、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」という映画が公開され、「大自然と共存するインディアンの

生活を描いた」ということで、大変な評判になった。



彼らインディアンは、大自然と共存するエコロジカルな人たちで、野生動物の乱獲や環境破壊とは

無縁だった
・・・・という風によく言われる。本当にそう言えるかどうかはさておき、彼らが自然の恵み

を巧みに利用して生活を営んできたことは事実だろう。自然から切り離された暮らしを送る現代の

私たち。大自然の中を逞しく生き抜いてきたインディアンに、憧れにも似た気持ちを抱くのは、自然

のなりゆきかもしれない。



インディアンが暮らす北米大陸には、さまざまな自然環境がある。環境に適した植物が生え、動物

が育ち、独特の生態系(エコシステム)を形成している。そして、各地のインディアンは、地域のエコ

システムに適したライフスタイルを発達させてきた。こうした考え方から、地域のエコシステムをもと

に、北米インディアンを大きく9つほどのグループに分けることができる。



多くの人が「インディアン」という言葉からまっ先に思い浮かべる、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」に登場

したインディアンの暮らしは、実際には、「大平原」と呼ばれる地域だけのもので、他の8地域では

全く違う暮らしが営まれていたのである。



この本では、9地域のうちの4つ、東部森林地帯・大平原・南西部・北太平洋岸に住むインディアン

の暮らしを紹介する。アメリカ映画などによって多少なりとも知られ、多くの人々が「インディアン」に

対して抱くイメージのもとになった人たちである。



ところで、インディアンは、隣り合う部族や、後から来たヨーロッパ人の影響を受けながら、暮らしぶ

りを変え、文化を発展させてきた。例えば、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」に見られるような、馬に乗って

バッファローを追う「典型的なインディアンの暮らし」は、実際にはヨーロッパ人の影響によって生ま

れ、発展したのである。各地域のインディアンの様々な文化が、外部からの刺激を受けてどう発展

してきたか、その様子も伝えたい。



なお、この本では、便宜上、過去形で述べていることが多いが、それは「かつてはこうしていた」とい

うことで、必ずしも「今はそうしていない」という意味ではない。



今もアメリカ合衆国には240万人を超える先住民が生活している。アメリカやカナダの先住民には、

私たち日本人と同じように、モダンな暮らしを送りながらも、伝統的な文化を受け継ぐ人たちが少な

くない。「パウワウ」と呼ばれるインディアンのお祭に行けば、それを実感できるだろう。



目次

はじめに

T 部族

図説[主なインディアン部族]

1.東部森林地帯〜シカを狩り、カヌーを操る

2.大平原〜バッファローを追い、騎兵隊と戦う

3.南西部〜畑を耕し、ジュエリーを作る

4.北太平洋岸〜サケを獲り、トーテムポールを彫る



U 住まい

1.ウィグアムとロングハウス 東森林地帯の住まい

2.ティーピー 大平原の住まい

図説[ラコタ族のティーピー 作る]

図説[ラコタ族のティーピー 建てる]

図説[ラコタ族のティーピー 使う]

3.アースロッジ 大平原の住まい

4.プエブロとホーガン 南西部の住まい

5.プランクハウス 北太平洋岸の住まい



V 着るもの

1.羽根冠

図説[ラコタ族の羽根冠]

2.男の上着

3.女性の衣服

4.ボトムス

5.ナバホ族のブランケット

6.チルカット毛布

7.モカシン 東部森林地帯

8.モカシン 大平原と南西部

9.ヤマアラシの針毛刺繍

10.ビーズ刺繍

11.インディアン・ジュエリー 元祖ナバホ族のジュエリー

12.インディアン・ジュエリー プエブロ・インディアンのジュエリー

13.動物素材を使った装飾



W 動物・植物

1.シカの仲間

2.クマ・オオカミ

3.ワシ

4.バッファロー 主食としてのバッファロー

5.バッファロー 様々な利用方法

図説[バッファローは走るデパート]

6.バッファロー バッファロー狩り

7.サケやクジラ

8.野生の植物

9.畑作物



X 旅と交易

1.陸の旅

2.馬

3.樺皮カヌー

4.丸木舟・皮舟

5.毛皮交易

6.南西部の交易所

7.コミュニケーション



Y 戦い

1.東部森林地帯 イロコイ族の戦い

2.大平原 ラコタ族の戦い

3.南西部・砂漠のインディアン アパッチ族の戦い



トピック

1.パイプ

2.クレードルボード

3.トーテムポール

4.容器

5.カチナ人形

6.インディアン・フルート

7.ラクロス

8.トマホーク

9.パウワウ


 







アメリカ・インディアン(アメリカ先住民)に関する文献

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