Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)





ペルー・ケチュア・・・サルバドール・パロミーノの言葉「ケチュアの宇宙」

「先住民族 - 地球環境の危機を語る」

インター・プレス・サービス編 清水和久訳 明石書店 より引用


われわれケチュアにとって、宗教とは生活様式であり、知であり、理解力である。

自然の力と共に生き、自然と調和して神聖な互恵の関係を結ぶことである。われ

われインディアンは自然の力のすべてを神として崇める。自然の力を恐れている

からではない。自然の力を超自然的な存在として見ているからでもない。われわ

れが自然の力の法則の正しさをよく知り、よく理解してきたからである。われわれ

は自然の力、その法則に敬意を払い、自然の力がわれわれの生活に恩恵を与

えてくれることを深く認識している。宗教自体が、またわれわれが聖なるパーチャ

・ママ(母なる大地)を崇めるためにおこなう儀式のすべても、人間と宇宙との間

に存在する相互間系の表現である。だからこそ、現在の環境危機はわれわれ

ケチュアにとっては社会的、歴史的危機なのである。われわれ先住民族が望む

のは、ただ自然と調和して暮らしたいということだけである。自然の法則と自然の

有機的一体性を破壊する行為は、それがたとえ何であれ、われわれの社会、そ

してわれわれ自身に対する暴力行為でもある。世界のすべての民族はひとつの

共通した霊に根を持っている。生の全体系を形づくっているその霊を守っている

のがわれわれインディアンである。西側の制度はわれわれから見れば反自然的

かつ利己的であるが、そのような制度の暴威と支配にもかかわらず、われわれ

は霊を守りつづけているのである。ケチュア語には、「宗教」と「神」の語はないの

だが、ここではスペイン語の「宗教」と「神」の語を使って、聖なる自然の力である

神とわれわれとの関係を述べることにする。宇宙とは、巨大で調和のとれた家族

である。この家族では、タイタ・インティ(太陽)がわれわれの父であり、ママ・キー

ヤ(月)が母である。このことをわれわれは次のような大昔からの歌で学んできた。

「太陽はわが父、月はわが母、星たちはわが兄弟。」 タイタ・インティを私たちが

敬うのは、その光がなければこの世に生命は存在しないからである。パーチャ・

ママは母なる大地を指す。アマルは命の水である川のことである。ウィラクーチャ

とパチャカマークは森羅万象を統べる力を指す。ワマニ、イヤ、マイク・クンツル

は使者の役目をする精霊で、無限の宇宙と人間との交流を目に見える形で示す。

われわれの空間観によると、ウク・パーチャとは大地のはらわた、カイ・パーチャは

現世、すなわちわれわれのいまの世界、アナク・パーチャは母なる大地を囲んで

いる空間であり、現世の上に位置する世界のことである。われわれの神話には、

以上の三世界を統合し、結合している母なる存在がある。水の母であるヤク・ママ、

木の母であるサーチャ・ママである。この聖なる存在は蛇の姿をとって三つの世界

を横断する。まず内なる世界から現れ、次に水の世界を横断してアナク・パーチャ

に着くと、光(イヤーパ)と虹(チラーパ)に変わる。そして、植物と他のすべての存在

を肥やし、色を与える。そのあと、カイ・パーチャとウク・パーチャに戻る(こうした「宇

宙観」を理路整然と語ったのがケチュアの賢人アチューン・アマウタ、スペイン語名

ルイス・バルカルセルである)。以上にあげた三つの時間、三つの空間は統一され

た全体の一部であり、生命と進化が変化してやまない螺旋状の循環の形で動く宇宙

の中で、それぞれが溶けあっている。ケチュアの「宇宙観」では、統一とは個ではなく、

夫婦のような一対のものである。この考え方は現実の生活で表現されており、生活は

そのまま自然の法則の要約である。二重かつ対等の相互補完的な関係が集産的、

共産的な組織をつねに生みだしているとわれわれは考えている。こうした考えこそ

「相互の調和」という言葉で表現されるインディアンの制度をつくりだし、われわれが

アイニ、ミンカ、ミタ、チャレー、サミンチャイなどと言っている「相互の調和」のため

の多様な制度を生みだしてきたのである。アイニ、ミンカなどはすべて「相反する

ものの相互補完という弁証法」と訳すことのできるティンクの具体的な表現なので

ある。われわれケチュアにとって、ティンクは宇宙を統御し、宇宙に調和を授ける

根源的な法則である。この種の考え方はすべての先住民族の文化に共通してい

る。そして「大宇宙」の中の「小宇宙」という形で表現される。この根源的な法則を

認識することが、われわれの思考法の核心に位置する。このティンクの原理を諸

民族の組織に適用するとどうなるか。社会組織は集産的・共産的社会以外にあり

えないのである。西側の制度はインディアンの制度とは正反対のことをおこなって

きた。西側の制度は相反するものの相互補完性という法則を「相反するものの闘

争」という敵対性の法則に変化させたのである。この種の考え方こそが階級社会

--- エリートが征服者、抑圧者であり、個人主義、人間中心主義、観念論が良き

価値として称えられる階級社会 --- を生みだしたのである。


 







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