
Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)
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「世界に伝えたいこと」
この大陸の環境を守る役目があります。時代に逆行しているように見えるかもしれませんが、 人間の生きる大地がヘドロ化してしまう前に、環境を保護し、再生しなくてはならないのです。 私はあるときネイティブ・アメリカン教会の儀式に参加し、ティピーの中で座り、皆の祈りを聞き ました。「偉大なる祖父よ、翼を持つ兄弟姉妹、大地に根を張る兄弟姉妹、大地を這う兄弟姉 妹、浜辺に暮らす兄弟姉妹、海や川を泳ぐ兄弟姉妹をお救いください。白い肌の兄弟姉妹を お救いください。偉大なる祖父よ、彼らがこの地球を痛めつけるのを止め、地球を守れるよう にお導きください」。白人は、人間は死ねば天国に行けるから地球のことなどどうでもいいと考 えているようです。だからヨーロッパ大陸の環境を破壊した後アメリカ大陸に渡り、ここでまた 破壊活動を繰り返しても何の罪も感じないのです。しかしインディアンはこの世が楽園である ことを知っています。霊の世界はこの世にあるのです。まだ生まれぬ者、すでに死んだ者、み んな私たちと日々共に存在しています。彼らは私たちにいろいろなことを教えてくれます。私た ちは次の世代のためにこの世界を残してやらねばならないのです。私はいつも幼い息子ラハ バテスートを車に乗せて港への近道を走っていると、彼は突然泣き出してしまいました。たった 五歳の子どもが「ぼくは杉の木を見たこともなければ鹿を見たこともないよ」と言って泣いてい るのです。インディアンには不思議な力が備わっていて、教えられなくともこのようなことを本能 的に知っているようです。彼は小さな胸の中に、自分が何かを失ってしまったこと、自分の世代 から豊かな環境を奪われたことを悟っていたのです。インディアンは精神世界と高いレベルの コミュニケーションを交わしています。あるとき、ラハバテスートはプヤラップ族の言葉で歌を 歌ったり、口笛を吹いたりしていました。私は「まあ、学校で何か新しい歌を教えているのだわ。 なんて素晴らしいことでしょう」と思いました。担任のプヤラップ族の先生にそのことを話すと、 先生は「家で覚えたのではないのですか?」と不思議そうに聞き返しました。私は息子に「誰か らその歌を教わったの?」と聞いたところ、「タカが教えてくれたんだよ」と答えたのです。今は 新たな可能性がある新しい時代です。私の部族は過去に様々な悲しみや苦しみを経験してき ましたが、これから新しい希望があると信じています。子どもたちは明るく輝く希望です。一人 の子どもが生まれるごとに、新たな希望が私たちを照らしてくれるのです。 1989年11月1日
ジェーン・キャッツ編 舟木アデルみさ+舟木卓也訳 築地書館 より引用
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