「風の言葉を伝えて」

ネイティブ・アメリカンの女たち

ジェーン・キャッツ編 舟木アデルみさ+舟木卓也訳 築地書館より







インディアンの聖なる輪が物質文明に流されることなく、現在においても大地に

息づいていることを改めて痛感させてくれる本である。一人一人の生活の匂い

が漂う中にほとばしる言葉の強じんさと慈愛。このような女性たちがいる限り、

インディアンの魂はどのような抑圧にあっても生き抜くだろう。本書は舟木夫妻

が訳した好著「ネイティブ・アメリカン=叡智の守りびと」の女性版とも言えるも

ので、我々と同じ時代を生きている彼女たちの希望は未来と次の世代の子ど

もたちへの力強いメッセージとして永遠に受け継がれていくだろう。

(K.K)


「アメリカ・インディアン女性への賛歌」を参照されたし


EARTH LODGE(アースロッジ)

インディアン文化に魅せられ、居留地の部族大学に通い伝統文化を深く

学んだ作者による素晴らしいホームページ。特に自ら全国各地で演奏す

るインディアン・フルートやインディアンに関する音楽、ビーズワークに精

通しページ上で通信販売も出来る。また好著「ネイティブ・アメリカン=叡

知の守り人」や「風の言葉を伝えて=ネイティブ・アメリカンの女たち」とい

う文献を翻訳し日本に紹介している。インディアン関連商品も多く掲載さ

れ、インディアンに関する文化や歴史の情報にも詳しいページであると共

に小学生を対象とした「異文化理解教育」を多くの学校で実践している。


 








「世界に伝えたいこと」

ラモーナ・ベネット(プヤラップ族)の言葉

(本書より)



私たちインディアンは世界に伝えなければならない重要なメッセージを持っています。

私たちはこの大陸の環境を守る役目があります。時代に逆行しているように見えるか

もしれませんが、人間の生きる大地がヘドロと化してしまう前に、環境を保護し、再生

しなくてはならないのです。私はあるときネイティブ・アメリカン教会の儀式に参加し、

ティピーの中で座り、皆の祈りを聞きました。「偉大なる祖父よ、翼を持つ兄弟姉妹、

大地に根を張る兄弟姉妹、大地を這う兄弟姉妹、浜辺に暮らす兄弟姉妹、海や河を

泳ぐ兄弟姉妹をお救いください。白い肌の兄弟姉妹をお救いください。偉大なる祖父

よ、彼らがこの地球を痛めつけるのを止め、地球を守れるようにお導きください」。





白人は、人間は死ねば天国に行けるから地球のことなどどうでもいいと考えている

ようです。だからヨーロッパ大陸の環境を破壊した後アメリカ大陸に渡り、ここでまた

破壊活動を繰り返しても何の罪も感じないのです。しかしインディアンはこの世が

楽園であることを知っています。霊の世界はこの世にあるのです。まだ生まれぬ者、

すでに死んだ者、みんな私たちと日々共に存在しています。彼らは私たちにいろ

いろなことを教えてくれます。私たちは次の世代のためにこの世界を残してやらね

ばならないのです。私はいつも幼い息子ラハバテスートのことを思います。あると

き、ラハバテスートを車に乗せて港への近道を走っていると、彼は突然泣き出して

しまいました。たった五歳の子どもが「ぼくは杉の木を見たこともなければ鹿を見

たこともないよ」と言って泣いているのです。インディアンには不思議な力が備わっ

ていて、教えられなくともこのようなことを本能的に知っているようです。彼は小さな

胸の中に、自分が何かを失ってしまったこと、自分の世代から豊かな環境を奪わ

れたことを悟っていたのです。





インディアンは精神世界と高いレベルのコミュニケーションを交わしています。

あるとき、ラハバテスートはプヤラップ族の言葉で歌を歌ったり、口笛を吹いた

りしていました。私は「まあ、学校で何か新しい歌を教えているのだわ。なんて

素晴らしいことでしょう」と思いました。担任のプヤラップ族の先生にそのことを

話すと、先生は「家で覚えたのではないのですか?」と不思議そうに聞き返し

ました。私は息子に「誰からその歌を教わったの?」と聞いたところ、「タカが

教えてくれたんだよ」と答えたのです。今は新たな可能性がある新しい時代

です。私の部族は過去に様々な悲しみや苦しみを経験してきましたが、これ

からは新しい希望があると信じています。子供たちは明るく輝く希望です。

一人の子どもが生まれるごとに、新たな希望が私たちを照らしてくれるのです。


 
 


「子どもたちに伝えるべきこと」

ジャネット・マクラウド(トゥラリップ族/ニスカリー族)の言葉

本書より



数年前、ダライ・ラマの国、チベットの人に出会いました。彼らは通訳を通じて

私に子どもがいるか聞きました。「八人よ」と答えると、彼らは「あなたにはきっ

と強いカルマがあるのでしょう」と言いました。私たちは自給生活をしてなんと

か暮らしてきました。今は二四人の孫に恵まれています。孫たちは一夏中こ

こにいましたよ。バスケットボール・コート、砂場が二つ、そしてリンゴの木があ

ります。子どもたちは遊び、畑や儀式場で働きます。もしも子どもが泣いてい

たり静かだったりしたら何かがおかしいはずです。私たちは子どもたちの育つ

世界がよりよい世界になるよう努力を続けています。子どもたちの中には将来

に希望を見いだせない者もいます。「核爆弾で吹き飛ばされたくない」と彼ら

は言います。学校では根強い人種差別があり、教育を受けてはいても人間

的には大馬鹿者の教師もたくさんいます。私たちは子どもに人生を愛するこ

と、人間が自然界の一部であることを教えますが、学校では子どもたちを一

日中教室に閉じこめ自然と隔離します。そのうえ、学校はたくさんの情報を

暗記させるだけで、人間の創造性と、夢をみる能力を破壊してしまうのです。





私は生存に必要なことは何でも学ぶべきだと思います。自然の中で食べ物

や薬を見つけること、車の修理、コンピューターの使い方。私はこれらの技

術を女性たちに教えています。でも人生の魂・精神性の部分を忘れてはな

りません。白人の世界にがんじがらめになると、内側から枯れていきますよ。

魂に栄養が与えられていないから、人はドラッグやアルコールに走るのです。

私たちは二〇年前からスエットロッジをおき、常時儀式を行っています。誰

かを改宗させるためではなく、スエットロッジの儀式を行うことで私たちが救

われるからです。スエットロッジの儀式に参加すると、創造主の生きた法とつ

ながります。こういうことは普通スエットロッジの外では話さないんですよ。





私たちにとって、大地、空気、火、水は神聖なものです。スエットロッジは

円形に作られており、中は真っ暗です。スエットロッジに入ることは偉大な

る母の子宮に入ることと私たちは考えます(男性は偉大なる祖父と言う表

言もよく使いますが、私は全ての力は女性のものだと思っています。)私た

ちは母なる大地の上に座り、大地のへそである中心の穴に植物の世界か

ら戴いた火で熱した石を入れます。石の上には薬草の入った水をかけま

す。石は鉱物世界と私たちの骨を象徴しています。いつの日か私たちは

鉱物となり、石となります。スエットロッジの儀式では母なる大地の子宮に

入り、創造の空気を吸うのです。こうして私たちの心と体は清められるの

です。私たち人間は生命のスピリットでつながっています。人間はどこそ

この国の人などと様々なレッテルで区別されていますが、私の目には

一人の人間が映るだけです。





宇宙には私たちを全ての他の生命とつなげてくれるエネルギーがあります。

私たちは皆地球の子です。人間が自分の母である大地を汚染し、その髪を

抜いたりしているから、地震などの自然災害が起こっているのです。地球を

守るための生きた法に人間が従わない結果が災害や環境破壊です。全て

の生命は創造主からの貴重な贈り物です。私たち一人ひとりはこの世にごく

わずかな間しかいません。そのためにも私たちは命を尊び、喜びを見いだ

し、何かを返してゆかねばならない、私はそう信じています。


 


本書 はじめに 舟木アデルみさ より引用


アメリカ大陸の先住民、ネイティブ・アメリカン。彼らのイメージは、西部劇の中で頭に

羽根をつけ「善良な」開拓者を襲う「野蛮人」から、大地との調和を重んじる独自の文化

を太古から築いてきた民族へと変わりつつある。さらに西欧をはじめ日本でも、危機に

立たされる地球環境問題や「心の癒し」への答えをネイティブ・アメリカンの教えに見つ

けようとする動きも広がっている。この流れの中で、彼らに関する理解が深まると同時

に、誤解が生じたり、見当違いの期待がネイティブ・アメリカンにかけられるようになった

のも事実だ。


本書は、そのようなネイティブ・アメリカンの社会を陰で支えてきたネイティブ女性のライフ・

ストーリーを通じて、現代ネイティブ・アメリカンの世界をありのままに伝え、彼女たちが秘め

る力と人間性に触れさせてくれる。芸術家、活動家、教育者、治療者。大地に根ざした哲学

に支えられ様々な役割を担う女性たちが、それぞれの人生の歩みを通じて、先住民、女性、

母親、祖母、指導者、そして地球の世話人であることについて語る。


今までアメリカ史と言えば、総じてコロンブスの大陸「発見」からヨーロッパ人の移住、米国の

建国、移民の歴史という流れでしかとらえられてこなかった。ネイティブ・アメリカンの歴史は、

ヨーロッパ人の到来を遡ること数万年の歴史であるという事実も広く認識されていない。口承

で伝えられてきたネイティブ・アメリカンの歴史と、研究者が発表する歴史とでは大きく食い違

う点も多い。また、ネイティブ・アメリカンの文化、哲学、歴史などが紹介される場合も、ネイティ

ブ以外の言葉で語られることがほとんどである。メディアを通じて発信される情報やイメージは、

あくまでも人々が求める「インディアン像」であり、複雑な歴史と現実を生きてきた彼らの本当

の姿だとは言いいにくい。とりわけネイティブ女性のイメージはメディアによって大きく歪められ、

彼女たちが私たちと同じ等身大の女性であることはあまり伝えられてこなかった。


そんな背景の中、本書でその思いを語るネイティブ女性は、誰もがたくましい。個性や表現

方法は違っても、「大地と、人間を含むあらゆる動植物は皆つながっており、一つの聖なる輪

をなしている」という共通の哲学が一人ひとりの心に深く根ざしている。彼女たちは、人間は

この聖なる輪のほんの一部でしかないといことを念頭に、輪の調和を守るのに必要な選択

を行い、行動している。そこには単に環境保護運動や、民族運動として片づけられてしまう

ことを拒む何かがある。アメリカという現代文明を象徴する国で、彼女たちは「アメリカン・ド

リーム」を追うのではなく、大地に根ざした哲学と生き方を誇りをもって貫き、分かち合い、

決して諦めようとしない。


ネイティブ・アメリカン女性は何世代にも渡る虐殺、抑圧、差別の歴史を背負いながらも、

堅固な精神、静かな優しさとユーモアを祖先から受け継いできた。それゆえに彼女たちが

抱く「創造主の世界」との深い絆、七世代先の子孫に豊かな地球を残そうとする信念と

行動には迫力がある。その生き方は民族を越え、地球人としてのありかたを伝えている

かのようにも思える。21世紀を目前に、様々な変化の渦中に立つ私たちがネイティブ・

アメリカン女性のライフ・ストーリーに大きな希望を見いだせることを願わずにはいられない。


1998年 新春 舟木アデルみさ


 


目次


はじめに

著者まえがき

生命を祝う(タオス・プエブロ)

チェンジング・ウーマンの娘たち(ナバホ族)

自然の恵みに支えられて(ラミ族)

内側から湧き出る力(メノミニー族)

生存という意味(ホワイト・アース・オジブワ族)

聖なる風の女(タートル・マウンテン・オジブワ族 デビルズ・レーク・スー族)

不死鳥のごとく蘇ったプヤラップ族(プヤラップ族)

大地を守り、大地に守られる(セミノール族 ミコスキー族)

混血児の物語(ホピ族 ミウォック族)

聖なるパイプの道を生きる(ラコタ族)

民族の絆(フデノショニー セネカ)

精霊の加護(アッパー・スカジット族)

我らカリブーの民(グウィッチン アサバスカン アラスカ先住民)

命をかけて守る大地と伝統(トゥラリップ族 ニスカリー族)

年表 北米先住民過去500年の主な歴史








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