「チェス」 ものと人間の文化史
増川宏一著 法政大学出版局 より引用
はじめに (本書より引用)
イギリスで書かれた魔法学校での物語は、翻訳されて日本でも広く読まれ、三部作で 1000万部(2002.1月調べ)が販売された。アメリカで映画化され、膨大な数の観客 を惹きつけた。この物語のなかで、悪い魔法使いを守る仕組みの一つが、大きな部屋 に置かれた巨大なチェス盤と駒である。相手の白駒側に勝たないと次へ進めない難し い関門である。主人公の少年ハリーと友達二人の三人がいろいろな黒駒に乗って闘 う。「犠牲を払わなくちゃ! 僕が一駒前進する。そうするとクィーンが僕を取る。ハ リー、それで君が動けるようになるから、キングにチェックメイトをかけるんだ!」(J・ K・ローリング 松岡祐子訳 『ハリー・ポッターと賢者の石』)。
知力を尽くしての闘いで少年達は相手の白のキングを追いつめ、辛うじて勝利する。 映画では凶暴な白駒側の攻撃やチェスの勝負がリアルに描かれている。少年少女達 をふくむ数百万人の読者と数千万人の映画の観客には、はじめてチェスを知った人も 多いことであろう。ハリー・ポッターの物語は、日本でチェスを紹介するのに大きな役割 を果たした。この本が読まれ版を重ねている時、チェスが新聞や雑誌の記事になった。 「国際チェス大会 羽生五冠が7位」(2001.4・30朝日新聞)がその一例で、各新聞 や週刊誌もフランスでのチェスの試合を報道した。将棋の最強の棋士はチェスも容易に 上達できる、というニュアンスがこめられていたようだ。実のところ、羽生五冠(当時)が 参加したのはチェスの最強者が集まる棋戦ではなく、いわば中級者のインターナショナ ル・オープン戦であった。それにしても7位入賞は立派な成績である。羽生善治氏のよ うな著名なプレーヤーではないが、これまでも日本の代表が海外のトーナメント戦に参 加していた。また、近年は日本でもチェスが普及し、とりわけ1990年代には全国的に サークルがつくられた。これらは本書の第7章で触れることにする。
チェスは盤上遊戯として長い伝統をもち、現在も世界中に数億人の愛好者が存在して いる。むろんゲームであるゆえ、勝敗が基本であり、名手、妙手を知り創りだすことが 最重要であろう。それゆえ少数の人々の努力にやって普及しつつあるとはいえ、まだ 日本では決して充分な広がりがあるとはいい難い。ほとんどすべての人にとって、チェス はヨーロッパの遊びという認識である。
本書はチェスをたんに「遊び」としてだけでなく、異なった視点からの観察を試みようと したが、記述について次の諸点を配慮した。第一に、筆者も含めて欧米と日本では チェスについての認識や評価に大きな落差がある。研究の蓄積も大きくへだたってい る。それゆえ、チェス史の研究について18世紀以後の幾人かの研究者の業績や紹介 は煩雑を避けるため一部は省略し、極力簡潔に記述した。第二に、ヨーロッパのチェス 研究が一様に「チェスは文化である」とする根拠を可能なかぎり、しかし歴史の記述に 一般化することなく述べようと試みた。第三に、従来さほど知られなかった美術工芸品 としてのチェスの駒と盤について記述し、鑑賞の伝統にも言及した。
以上のように、勝敗を争うゲームとしてだけでなく、チェスの歴史や美術への理解に 重点を置いた。当然ではあるが、最新のチェス史研究の成果も可能なかぎり紹介した。 このなかにはチェスの起源(将棋の起源といいかえることもできるが)について、これま での不充分な見解を改めることにも触れている。世界的な規模でのチェス学の構築に、 日本からも寄与するという意図を述べたものである。
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本書より以下引用。
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北欧神話は、870〜930年にノルウェーからの植民者によってアイスランドに持ち込まれ、 彼らの子孫によって伝えられ、古アイスランド語で書かれている。 詳しくは、チェス「キングとクィーン」 太古の伝説と未来(北欧神話より) を参照されたし。 出典は「生と死の北欧神話」水野知昭・著より引用 「巫女の予言」59〜62。 Baldr - Wikipedia, the free encyclopedia かの女(巫女)は見る、 海中よりふたたび とこしえに緑なす 大地が浮かびくるを。 滝はたぎり落ち、 山に棲まう、 鷲が上空を飛び、 魚を狙う。 アースたちは、 イザヴォッルに邂逅し、 そして力猛き 大地の帯(ミズガルズ蛇)のことを語らう。 そこで思い出されるのは、 畏怖すべき運命的な出来事、 そしてフィムブル・テュール(偉大なる神オージン)の 古き秘蹟(ルーン)のことども。 そこでふたたび 草むらのなかに、 不可思議な 黄金のチェス駒が見い出されよう、 それらは過ぎし昔に 神の族の持てしもの。 種まかずとも 穀物は育つだろう・・・・ ありとあらゆる災厄が吉に転じよう、 バルドルは来たらん。 彼らホズとバルドルは、 戦士の神々の聖域なる フロフトの勝利の地に住む。 おのおの方、さらに知るや、それとも如何に? Baldr's death by SceithAilm on DeviantArt |