「完全チェス読本3 盤上盤外こぼれ話 チェスを指した犬から謎のプロブレムまで」
監修・日本チェス協会
マイク・フォックス&リチャード・ジェイムズ著 若島正訳 毎日コミュニケーションズ
恐怖(本書より引用)
本章はどん底の話である。最大のポカ、最短の負け、最弱のチーム、最悪の大会成績など。 それにおまけとして、最も愚劣な助言、最悪の棋譜解説、最もくだらないオープニング定跡や、 その他もろもろの大失敗が盛りだくさんだ。本書を読めば、また惨敗を喫したかとお嘆きの方々 も、元気が出ることうけあいである。時間切れで負けたって? 同一大会でそれを13回もやら かしたグランドマスターの話をお読みいただきたい。クラブのヘボにナイトをただ取りされたっ て? 未来の世界チャンピオンがなんとクイーンのただ取りを気づかなかった話をご覧いただ きたい。封じ手に悪手を書いたって? 世界クラスのある選手は、封じ手を封筒の中に入れる のを忘れてしまったのですぞ。その当人がのたまうごとく、「ポカはいつでもそこに潜んでいて、 指されるのを待っている」のである。さてそれでは、そのポカの数々をこれからお見せしよう。
変則チェス(本書より引用) アラディンはどんな種類のチェスを指したのだろうか? 本章ではその答えのほかにも、クリーグ シュピール、アリス・チェス、スヌーカー・チェス、アル中チェス、さらには火星で指されるチェスまで お目にかけよう。これはまた、チェスに退屈した哀れな人々のための治療でもある。チェス盤で プレーできるチェス以外のゲームをたくさん集めた(中にはチェス盤を使わないゲームも、その最高 のものを2つを含めて、いくつか収録してある)。それぞれのルールを紹介すると、紙数がいくらあっ ても足りない。だが、さらに詳しく知りたいという向きには、巻末の参考文献が助けになろう。
禁手(本書より引用) 今度あなたが盤をひっくり返したときには、本章を読めばきっと慰めになるだろう。本書は落ち込ん だ敗者たちの記念碑であり、最悪の醜い場面のコレクションであり、チェス盤を前にしていかに不作法 にふるまうかという、世界でも有数の悪ガキたちによる教訓に満ちた手引きでもある。「人類はみな 1つ」というのが国際チェス連盟の友好的なモットーである。しかしときには、負ける悔しさが耐えられ なくなり(あるいはどんなことをしてでも勝ちたいという気持ちが強くなりすぎて)、静かなゲームが荒 れたりする。そこで本章では、我々は目を背けずに、マジソン・クスエア・ガーデンかウィンブルドンの センターコートでも場違いではないようなふるまいをご覧に入れることにした。そのほかに、チェス盤 にまつわる詐欺、殺人、泥酔などの逸話も盛り込んである。恐怖の館へようこそ。
驚異(本書より引用) 警告。本章を読みすぎると、クラブの鼻つまみ者になってしまう可能性が高いのでご注意(その反対に、 本章をうまく使うとパブで賭けをして結構儲けられます)。「あまり大勢の人間は知らないけれど・・・・」 と前書きがつくようなタイプの、多少数値的な事実を集めたのが本章だ。そしてまた、世界記録をあなた が更新するチャンスでもある。公式試合で269手以上指したり、56手目以降にキャスリングしたり、 以下に述べる不思議な記録のどれでもいいからそれを破ったりした棋譜をお持ちなら、本書に掲載され る見込みがある。フェイバー・アンド・フェイバー気付で、我々にご一報願いたい。
奇怪(本書より引用) うそだと思われるだろうが、ブライトンの第3チームの八将として犬が大会に出たことがある。本当の話 だ。詳しくは本章をお読みいただきたい。ここにはほかにも、チェスを指す猿とか、インド人の奇癖だとか、 あなたのご贔屓のマスターたちが盤の前を離れると何をしているのかといった話題が盛り込んである。 もしあなたがトリヴィア中毒患者だったり、「サン」紙にしょっちゅう載っている、まったく役に立たない情報 (チャールズ皇太子の禿についたあなたが知らなかった20の事柄)の呆然となりそうな寄せ集めに病みつ きになってしまう性質なら、きっと本章を楽しんでいただけるはずだ。
無人島チェス 地獄とは、サルトルが言うのは、他者のことだとか。もしサルトルがチェスを指していたなら、こんなことは 言わなかったはずである。地獄とは、どこかに閉じ込められて、チェスの盤駒はあるが相手がいないという 状況のことなのだ。こうした事態がもしあなたに起こったとしたら、本章はその鎮痛剤になることだろう。 チェス盤で楽しめる一人遊びもここに集めてみた。その中には、鼠の頭でも解けるようなものもあるが、 残りのほとんどは2時間くらいもつと思う。ただ、読者の中には、南極で調査隊に参加していたり、ウォー ムウッド・スクラブスの刑務所にいたり、アマゾン河流域で迷子になっていたりする人もいるかと考えて、 時間があっというまに過ぎていくような難問も多少まぜておいた。正解は、もし必要なら、本章の最後に 載せてある。
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目次 用語解説 表記法
恐怖 変則チェス 禁手 驚異 奇怪 無人島チェス
参考文献 人名索引 訳者あとがき
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