「ネイティヴ・アメリカン」

写真で綴る北アメリカ先住民史

アーリーン・ハーシュフェルダー著 日本語監修 猿谷要

赤尾秀子・小野田和子訳 BL出版





インディアンの歴史を、これほど多くの貴重な写真・図で解説した文献はかつて日本

で発行されたことはなかったかも知れない。視覚的にもとても見やすく、インディアン

が辿ってきた苦難の道を振り返ることが出来るこの文献は、初めてインディアンに

関心を持つ人々にとって最良の文献の一つに数えられるのではと思う。私自身に

とっても、今まで見たことがない写真が数多く掲載されており、心を打たれてしまい

ました。4300円もする高価な文献ですが、それだけの価値はある文献ではないか

と感じています。ただこの本の編集をした方が書いたものかどうかはわかりません

が、「世界史のなかでもひときわ知的興味をそそる悲しみに満ちた彼らの歴史」とい

う紹介文の言葉に何か抵抗を感じずにはいられませんでした。

2002年12月9日 (K.K)





北アメリカの先住民たち、ネイティヴ・アメリカンは、1500年代初期にはじめて

ヨーロッパ人探検家と接触して以来、何百年にもわたり故郷を守る戦いをつづ

けてきました。本書は世界史のなかでもひときわ知的興味をそそる悲しみに満

ちた彼らの歴史を、16世紀から20世紀にいたるまで、時を追って詳細に綴り

ます。ヨーロッパからの移民がおしよせるなか、先住アメリカ人たちは白人文化

への同化を強制され、父祖伝来の土地を守るために戦い、現代でもなお、アメ

リカ社会の一員として、先祖から受け継いだ信念や風習を守りぬこうとしていま

す。本書は豊富な写真とわかりやすい解説に加え、ネイティヴ・アメリカンの居

住地域や戦場を地図で示し、胸をうつ先住民のことばを引用して、過去の事実

をいきいきといまによみがえらせています。(本書より引用)


 
 


プリティ シールド(メディスンウーマン)

1932年頃・バッファローを糧とする暮らしが終わりを告げて

(本書より引用)


ああ、わたしは胸がはりさけそうになりました。美しい土地のあちこちに、バッファローの

死骸が散乱しているのを見たからです。白人に殺され、皮をはがれ、腐るにまかせて置き

ざりにされた、たくさんの、たくさんのバッファローたち。最初に見たのは、ジュディス盆地

でした。あたり一面、肉の腐臭が漂っていました。花ばなでさえ、あのにおいは消せなかっ

た。わたしたちの心は、石のようになりました。それでもまだ、まさか白人がバッファロー

を皆殺しにするとは、だれも思っていませんでした。この世の始まりから、バッファローは

いつもたくさんいたのですから! あのひどいラコタでさえ、ここまでのことはしないでしょ

う。シャイアンも、アラパホも、ペクニーもです。なのに白人は、それをした。肉を必要と

しないときでさえなお。わたしたちは長いあいだ、バッファローは帰ってくると信じていま

した。でも、帰ってはきませんでした。わたしたちの空腹、病、不安は、3ついっしょに

大きくなりました。狩人は自分の目が信じられずに、バッファローをさがしに出かけまし

た。たとえ群れを見つけたとしても、わたしたちが半月かけてもたどりつけない、それほ

ど遠くまで行ったそうです。「いない。一頭も、いない」 彼らはわたしたちにそういうと、

腹をすかし、何もない平原を、夢でも見ているように、じっとながめやりました。それから

というもの、彼らの心はよくなりませんでした。ワシントンの偉大な首長が食べ物をくれな

いかぎり、わたしたちは自分のために戦う機会もないまま、消えてゆくしかありません。

白人は、わたしたちが旅できないよう、平原に囲いをつくりはじめました。でも旅をしたと

ころで、よいことなど何ひとつなくなってしまいました。旅をする目的が、ないのです。わ

たしたちは、ひとつところに住むようになり、時を問わず、だんだんと怠け者に、病気に

なっていきました。昔、男たちは雄々しく敵に立ち向かい、美しい土地から勇気をもって

追い払ったものです。でもいま、何もかもが悪くなって、わたしたちは弱々しい愚かさに

鞭打たれるようになりました。男たち、指導者たちは、白人のウィスキーを飲み、思い

のままのことをしはじめました。バッファローがいた日々、戦いと動乱の日々、わたし

たちは首長の話に耳をかたむけていたので、いまもおなじようにしています。なのに、

わたしたちは鞭打たれました。賢者は愚者になり、白人のウィスキーを飲みます。で

も、ほかに何をすればよいのでしょう。わたしたちは、首長や指導者の話に耳をかた

むける以外の方法を知りませんでした。昔の人たちは、こうではなかった。子どもたち

ですら、バッファローがいた頃とは、ちがっていました。


 


目次

まえがき

序章


文化と文化の衝突 古代〜1850年代

先住民の祖先たちの暮らし

精神世界

先住民のことば:ブラック・エルク

ヨーロッパ人との出会い

インディアン強制移住

先住民のことば:テクムセ

大自然の恵み

インディアン居住地の崩壊

西部開拓

宣教師の到来

インディアンの子供の伝統的暮らし


故郷の喪失 1780年代〜1860年代

交渉の時代

先住民のことば:ハロルド・カーディナル

インディアンと南北戦争

サンティ・ダコタの反乱

先住民のことば:リトル・クロー

サンドクリークの虐殺

ナヴァホの「ロング・ウォーク」

先住民のことば:マヌエリト


先住民の抵抗と戦い 1860年代〜1890年代

南部大平原の戦い

命の糧

北部大平原をめぐる戦い

西部をめぐる戦い

リトル・ビッグホーンの戦い

大西部の神話

カナダの過去と現在

リエルの反乱

先住民のことば:ルイ・リエル

西部の闘争

先住民のことば:セーラ・ウィネムッカ

ネズパースの戦い

アパッチの抵抗

先住民のことば:エスキミンジン

保留地の分割

先住民のことば:カール・スウィージー

寄宿学校

武力による抵抗の終焉

先住民のことば:アメリカン・ホース


復活と再生 1900年〜現代

保留地での暮らし

先住民のことば:プリティ・シールド

ニューディールにいたる道

政府軍兵士となったインディアン

終結と転住

イメージを売る

レッド・パワーの行進

先住民のことば:アダム・フォーチュネット・イーグル

終わらぬ戦い

現在の合衆国におけるインディアンの土地

現代のインディアン社会

先住民のことば:ウィルマ・マンキラー

文化の復活

先住民のことば:エラ・デロリア


監修者あとがき

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