「カナダの森で ビーバーとインディアンの少女」

グレイ・アウル 作 吉田健正 訳 伊藤美貴 絵 星の環会 より引用











著者紹介 グレイ・アウル 吉田健正 本書より引用


グレイ・アウルというのは「灰色のフクロウ」という意味です。しかし、これは、グレイ・アウル

のほんとうの名ではありません。ほんとうの名は、アーチボールド・ベラニーというのです。

ベラニーは、イギリスで生まれた、れっきとしたイギリス人ですが、若いときにカナダにやっ

て来て、インディアンといっしょに住むようになり、酋長から「灰色のフクロウ」という意味の

インディアン語の名をもらったのです。インディアン語では、ワシャクオンアシンと言うそうで

す。グレイ・アウル、いやアーチボールド・ベラニーがカナダにやって来たのは、1906年のこ

とです。わずか18歳でした。子どものころからインディアンにあこがれ、森の中で動物を追っ

たりするのが大好きだったベラニーは、カナダでさっそくインディアンにまじって働きはじめ

ました。森にワナをしかけて動物を生けどるのが仕事でした。まもなく、ワナ師としては右に

でる者がいないほどの腕になりました。動物を生けどるのは、毛皮が目的です。


やがて、ベラニーはインディアンの娘と結婚しました。そして、インディアンから、インディアン

の言葉やきびしい森の中での生活を学びました。インディアンが代々語りついできたいろいろ

な神話や伝説も教えてもらいました。そして、そのころから、インディアンと同じように、髪を長

くのばし、妻が作ってくれたシカ皮の洋服や靴を身につけるようになりました。写真で見ると、

西部劇の映画でもよく見かけるインディアンにそっくりです。名まえも、グレイ・アウルと変わり

ました。


グレイ・アウルは、あまり身の上話をしませんでした。しかしグレイ・アウルが友だちに語った

ところによると、父親はスコットランド人、母親はアパッチ族のインディアンで、本人はメキシコ

で生まれた、ということでした。もちろん、真っ赤なウソです。しかし、グレイ・アウルは、どこか

ら見ても、すっかりインディアンになっていました。森の中での暮らしについては、インディアン

よりもよく知っているほどでした。ですから、グレイ・アウルが、ほんとうはインディアンではなく、

れっきとしたイギリス人だということは、誰も知りませんでした。それがわかったのは、グレイ・

アウルが死んだあとのことです。


さて、それでは、グレイ・アウルは、なぜビーバーのことを書くようになったのでしょうか。これ

には、つぎのようなエピソードがあります。グレイ・アウルは、第一次世界大戦のとき、イギリス

軍に入って戦いました。戦争でけがをしてカナダに帰って来たとき、森の中はすっかり荒らさ

れていました。お金だけが目当てのハンターや兵役をのがれてきた人たちが、薬やダイナマ

イトなどを使って、めちゃくちゃに動物を殺していたのです。おまけに、不注意による火事で、

あちこちの森が焼け、動物たちは北へ北へと逃げて行ってしまいました。これでは、グレイ・

アウルは生活できません。ワナで動物を生けどりするのが仕事なのに、かんじんの動物がい

なくなったからです。そこでグレイ・アウルは、動物たちをもとめて旅に出ました。そのとちゅう、

グレイ・アウルは動物を殺すという、自分の仕事がいやになってきました。それは、ある悲しい

光景を見たのが大きなきっかけでした。


それは、母親ビーバーが片足をワナにはさまれたまま、赤ちゃんビーバーをなでている姿でし

た。グレイ・アウルは、苦しげな母親ビーバーの片足を切って、ワナからはなしてやりました。

そばでは、よちよち歩きの赤ちゃんビーバーが、くんくんとないていました。同じところで、バネ

仕掛けのワナで水中から木の上に飛ばされ、枝にひっかかってないているビーバーを見つけ

ました。このビーバーは、赤ちゃんを産んだあと、死んでしまいました。グレイ・アウルは、はら

がたってきました。人間は、どうして、なんの罪もないこんなかわいい動物を、こんな無残なや

りかたで殺すのだ。この大自然の中では、人間と動物たちは兄弟ではないか。


人間は、毛皮が欲しいばかりに、手あたりしだいに動物を殺していく。これでいいのか。グレイ・

アウルは、これまで自分自身のしてきたことがなさけなくなってきました。グレイ・アウルは、残さ

れた二匹の赤ちゃんビーバーを見て、もう動物を殺すのはやめよう、と強く心にちかいました。

これからは、一生涯、森の動物たちを守る仕事を続けよう、そう決心しました。二匹の赤ちゃん

ビーバーは、グレイ・アウルが、小屋につれて行って、育てました。育ててみると、ビーバーが

まるで人間のように思われて、動物に対する愛情がますます深まってくるのでした。グレイ・アウ

ルは、こうしてビーバーのことを書くようになったのです。この物語に出てくるチカニーとチラウィー

は、グレイ・アウルが助けたあの赤ちゃんビーバーたちに、きっとちがいありません。



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