Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)
ウォーキング・バッファローことタタンガ・マニの言葉
私たちは、法律というものを持たなかった人間です。しかし、私たちは、 万物を創造し、そこに秩序をあたえている「グレート・スピリット(大いなる 霊)」と、じつに好い関係を保ち続けてきたのです。あなた方白人は、私た ちを野蛮人だと言います。あなた方は、私たちの祈りの意味を理解してこ なかったし、また理解しようともしてこなかった。そこで、私たちが太陽や 月や風を、讃めたたえる歌を歌っているとき、あなた方はやれインディアン は偶像を崇拝している、などとわめきたてたものです。私たちのことを理解 しようとはしないで、私たちの宗教があなた方のものと違っているというだ けの理由で、私たちの魂が堕落していると、非難してきました。
私たちはほとんどすべてのものの中に、つまりは太陽や月や樹々や風や山々 の中に、「グレート・スピリット」の手の働きを、見てきたのです。そしてときには、 こうした自然の動きのすべてを通じて、その手の働きのほうに、近づいていくこ ともありました。それが悪いことだった、というのですか。私たちが、誠実に「至 上の存在」を信じてきたことは間違いがない、と思います。その信仰は、私たち のことを異教徒扱いした白人たちの、善なるものへの信仰よりも、はるかに深 く、強いものなのです。自然と自然の世界に秩序を与えているものの近くで生 きてきたインディアンは、けっして蒙昧の闇を生きているのではありません。あ なた方は、樹々が語るのを、聞いたことがありますか。じっさい、樹は話をする のです。樹々はお互いに会話をして、もしもあなたがたがそれに耳を傾けさえ するならば、あなた方にだって、樹は話しかけてくることでしょう。ところが、困っ たことに、あなた方白人は、樹々の声などに、耳を傾けようともしなかった。だ いたい、白人はインディアンの言うことにさえ、耳を貸そうとはしなかった人た ちなのですから、自然の声などに心を開こうはずもありませんでした。けれど も、樹々は私に、たくさんのことを教えてくれました。ある時は天候について、 ある時は動物たちのことについて、そしてある時は「グレート・スピリット」につ いて、教えてくれたのです。
ミッシェル・ピクマル編 カーティス写真 中沢新一訳 紀伊国屋書店 より引用
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