Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)
ダ/ラコタの哲学 A・C・ロス博士の言葉
ダ/ラコタ哲学は、森羅万象は、対立する二つのもの、つまり善と悪、光と闇、 というふうに対になって出来ているとしている。その対になっているものの一方 が欠けることは不均衡を生み出すものだというのである。そこでひとびとは儀式 を、その平衡の保持のために維持する。儀式のなかでひとは苦しみ(悪)を経 験し、それによって祈りを聞き届けてもらう(善)のである。伝統のダ/ラコタ族 は、ひとがこの地上に生きる目的は、いつか宇宙の中心に帰ることができるよ うになるためで、それが可能になる方法は赤い道を歩む(均衡のとれた生き 方をする)ことであると信じている。さて本書においてすでに述べているように、 儀式が行われるひにちと場所は、白いバッファローの星座の位置によって決 められる。もっとも主要なダ/ラコタ思想は、グレイト・スピリットはすべてのもの の創造主であるが、それでいながらその創造されたことがらの一部だ、という 包括的な考えにある。また、宿命というものはそのひとのこの世における目的、 または計画のなかにあるというふうに考える。そこで夢の探求を行ってその目 的がなんであるかを捜すことが、そのひとの任務になるわけである。だがラコタ の両親が子供にその任務を行わせるようにするとき、そこでは子供の自由意志 というものが非常に優先される。子供はその任務なり仕事なりをどのようにする かということは、親から教えて貰うというよりも、それを実際にやっているところ だけ見せられ、あとは自分でやってみるようそれとなく諭されるわけである。 この考えはじつはダ/ラコタのすべて、つまり文化、教育、狩猟、宗教、要する に人生すべての局面に及ぶ、基本概念である。
さらにダ/ラコタの伝統の考えでは、霊魂は誕生したその瞬間にその体に 入る。そこで良い霊魂が体に入ってくれるよう偉大なる神秘に、儀式を催し て祈るのである。ひとが死ぬとその霊魂は銀河に行って、それを南に向か う。その南の終りに年老いた女性が座っていて、あなたの地上の生活を審 判する。あなたが赤い道を歩き、またひとびとに寛大で、他を助け、すべて のものと調和のなかに生きたのであったならば、その老いた女性はあなた に、長い方の道、つまり宇宙の中央にいたる左の道を取ることを許す。もし あなたが黒い道を歩み、どん欲で自己中心的であったなら、彼女は右の 道を示し、あなたを突き落とす。そこであなたの霊魂はふたたび地上に落 ち、新しい肉体に宿ってこの世に誕生するのである。それはあなたがふた たびすべてのものと調和に生きるため、新しい機会を与えられたということ なのである。もしひとが非常に若いうちに、そのような機会もなく死んだ場合 は、長老が選ばれ、その霊魂を一年間守護する。この間その長老はその 若い魂が銀河の左の道を行き、進化の旅を完成して、宇宙の中心に帰る ことが出来るよう毎日祈るのである。
「我らみな同胞・インディアンの深層世界」
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