Tablita dancers (San Ildefonso)

Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)


魅せられたもの

1997.3.6








「レイム・ディアー」

ジョン・ファイアー・レイム・ディアー 口述 リチャード・アードス編

北山耕平 訳 河出書房新社


レイム・ディアーの言葉


だが、今こそわしらインディアンが、生き方の見本を天下に示さねばならない。

どうすれば自分の兄弟たちと共に生きることができるのか?兄弟たちを使うの

でもなく、殺すのでもなく、傷つけるのでもない方法。それを見せてやらなくては

ならない。わしらは、わしらの一部である生命を持つパイプと共に、平和を祈り

つづける。戦争のあるところに平和のもたらされんことを祈り、わしらの国に平和

のもたらされんことを祈る。わしらは、ご覧のとおり今なおここを「自分たちの国」

とよぶ。なるほど物理的には、さまざまな国から来たさまざまな人種のひとたち

が、わしらの国の土地という土地を全部所有してしまってはいる。しかし、それ

でもなお、ここはわしらのものであるのだ。土地というものはけっしてひとりの人

間に帰属するものではなく、すべての人々と、これから生まれてくる者たちのも

のものであるのだからな。わしもパイプを人類のために使うようにせにゃならん。

人類は今、自己破滅の道のうえにいる。なんとしても、わしらは、パイプの道、

赤い道、生命の道に戻るようにしなくてはならない。自分で自分の首を絞めつつ

ある白人を、なんとしても救うように努めなければならない。インディアンとイン

ディアンでないとにかかわらず、わしらのひとり残らず全員が、他所から来た敵

として自らの意志を地球に押しつけるのではなく、もう一度自分たちをこの地球

の一部として見れるようになれたとき、そのときはじめて、それも成し遂げられよ

う。なぜなら、わしらはただパイプの意味を知っているのみならず、人間もまた

地球の生きている一部であり、母なる地球の肉体をほんの一部でも傷つければ、

それはすなわち自分自身を傷つけることにほかならぬことを、知ってもいるからだ。

おそらく、この聖なるパイプをもってすれば、政治家たちや、企業家たちや、専門

の技術者たちが「現実」としてわしらに押しつけてきているこの汚染された大気の

雲をとおして、そのむこう側を見ることだって、互いにもう一度学び合うことができる

だろう。このパイプをとおして、自分の内側のもっとも深いところに住み着いている

わしらの最大の敵とのあいだにも、おそらくは平和を作りあげることができる。この

パイプがあれば、わしら全員が、もう一度、あの終わりのない輪を形作ることも

できるのだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 
 


本書の最後の方に書かれることになるレイム・ディアーの祈りの言葉に、我が身を

恥じる気持ちになった。彼らの信仰は、深く深く神と結び付けられており、まさしく

「神の使い」達なのかも知れない。果たして私が彼らのような状況に置かれたとき、

同じような言葉がこの私の唇から出るだろうか。否、決して出てこないだろう。憎し

みと恨みが交差し、我が身を滅ぼしていることだろう。コロンブスが1492年に、こ

の大陸に到達したとき、500万から1000万ともいわれる先住民が住んでいたとされ

る。しかし、白人による土地の搾取への戦い、並びに居留地における飢餓・病気、

虐殺、白人がもたらした疫病などで、95パーセントの先住民族が滅んだ。そして白

人の同化政策による精神文化の喪失が拍車をかけ、自殺率、羅病率、アルコー

ル中毒の率はアメリカの平均を大きく上回る。これは今も、先住民が置かれている

状況であり失業率、平均寿命、住宅環境は逆に平均より大きく下回る。現在も虐げ

られた民族でありながら、レイム・ディアーの平和を希求する最後の祈りの言葉は

どこから出てくるのだろうか。彼らこそ限りない深い自己贈与の泉を心に持ちうる者

であるかも知れない。。メディスン・マンであるレイム・ディアーは1980年に肉体の死

を迎えたが、彼らインディアンの祈りがこの地球に住む多く人々の心に降り注ぎ、

いつか将来豊かな実りと芳香をもたらすことを願わずにはいられない。レイム・ディ

アーにしろ白人・キリスト教に対する憎しみの念は心のどこかにはあるのだろう。

しかし、その憎しみを消し去るほどの言葉に言い表せない何かが、彼らをゆるしと

祈りへと導く。アメリカ・インディアンの遥か昔から引き継がれている「心に刻まれ

た信仰」、それを私たち一人一人が自ら体現していかねばならないのだろう。


この季節になると、私の家に置いている巣箱に雀が訪れ、巣作りに励む。そして何羽

かの新しい生命が青くひろがった大空へと、その翼をはためかせる。アメリカ・インディ

アンが大事にはぐくんだ祈りも、大きな翼をひろげて、この地球を包み込むに違いない。


(K.K)



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