「痛快!寂聴仏教塾」
一家に一冊! こころの常備薬
付録・「般若心経」読経&法話CD+寂聴特製写経見本
瀬戸内寂聴著 集英社インターナショナル
ようこそ「仏教塾」へ! 心さがしの旅の案内書 (本書より引用)
|
切に生きる (本書より引用)
ここまで戒名、お墓、仏壇の話をしてきたわけですが、それぞれの意味が分かって面白かった のではありませんか。みなさんにとって、お葬式とか法事というのは、ただの形式としか思えな かったでしょうが、それなりの意味や目的があるわけです。それがいつの間にか忘れられたと ころに、今の仏教の問題点もあるわけですね。しかし、繰り返し強調しますが、葬儀や法要は お釈迦さまがお説きになった仏法の本筋ではありません。お釈迦さまの教えは、あくまでも「ど う生きるか」なのです。死んだのちのことを今から心配したりしても意味がない。人間の寿命は 誰にも分からないのだから、今、この瞬間を一生懸命に生きなさいということ。いつ死んでも悔 いが残らないような人生を送りなさいというのが、仏教の教えなのです。私の好きな言葉は「切 に生きる」です。中国の曹洞宗の祖師・洞山和尚に対して、ある僧が問いました。「今日はどん な説明もいりません。一言で答えてください。いかなるか、これ清浄法身」 清浄法身とは、生 きた仏ということです。つまり、どうすれば悟りを開くことができるのか、という質問なのです。 これに対して、和尚はこう答えました。「われ、常に、ここにおいて切なり」 切とは切っても切 れないこと、つまり今、自分がしていることに没頭しきることです。切実の切、大切の切です。 食べるときも、切に食べる。眠るときには切に眠る。愛するにも切、学ぶにも切であれと言い たかったのでしょう。死後のことを思いわずらうな。今、生きているこの一瞬を切に生きれば、 それでいいじゃないか、ということです。そうすれば、死を恐れることもない。やがて来るかもし れない別離におびえることもない。浄土に行けるか、地獄行きなのかも心配する必要もない。 いつ心臓が止まっても、悔いることはない。私もまた、切に生きたいし、そのように死にたいと 思っています。明日のことを考えず、この一瞬一瞬を切に生きる。それができれば最高の人 生ではないでしょうか。そして、できうることならば、生きている間に、少しでも愛する人たちに 何かをプレゼントしたい。少しでも人のために尽くすことができれば、それこそ生きる幸せで はないかと思うのです。もし、そんな人生が送れたとしたら、たとえ死んで地獄に落とされた としても、けっして私は文句は言いません。もちろん、浄土に行けるに越したことはないけれ ども、そんなことより今の人生を、あとどれだけ時間が残されているか分からない人生を、 切に生きることのほうが、ずっと大事ではないかと思います。
|
目次
|
2012年5月13日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。 画像省略 日の出(自宅より) 謝らなければいけないことがあります。それは前に投稿した瀬戸内寂聴さんの「戦時中の方が マシ」という発言に関してです。 「生ききる」瀬戸内寂聴・梅原猛・対談集を読んで、私の発言こそ軽々しいものだったと感じさ せられました。 確かに私の中では戦争と比較するものではないと今でも思っていますが、寂聴さんの原発が ない世界、平和への想いが痛いほど感じられ涙が出そうになりました。 そんな寂聴さんの想いを汲み取ろうとしなかった自分自身の未熟さ・軽薄さを改めて教えられ たような気がします。 寂聴さんや不愉快に思われた方々にお詫びしたいと思います。 梅原猛さんは随分前から原発廃止を訴えてきた方ですが、寂聴さんと同じように梅原さんの 言葉にも感激しました。 梅原さんとはキリスト教の捉えかたなど少し違うところもあるのですが、子供のようなみずみず しい感性と、一途なまでに真理を探究するその姿勢は真の哲学者だと感じてなりません。 一本の木、その多くの枝は太陽の動く方に伸びることはあっても、木のてっぺんは真っ直ぐに 上を目指し伸びている。 いろいろな方角から吹く風に葉っぱが揺らぐことはあっても、それを糧として木の幹は真っ直ぐ 真っ直ぐ伸びていき、その根っこは深く深くその根を張っていく。 そんなことをもこの文献を通して教えられたような気がします。 ☆☆☆☆ 瀬戸内寂聴さんの言葉 私は思うんですけど、被災された方々にはもう言葉もないですよ、お気の毒で。 自分が悪いことをしたわけでもないのに天災に遭ったり、それに続いて放射線の被害に 遭ったり。 でもね、今の状態が決していつまでも続くわけではないから、生々流転、移り変わるという ことが世の常なんです。 だからどうか気をおとさないで、絶望しないで、どんなことがあっても生きようとしてください。 どうぞ元気でいてくださいとお願いするしかないですね。 そして私たち被災しなかった人間は、あなた方が身代わりになってくださったと思って、 いつも忘れてはいけません。 非力だけど私たちもできることはなにかということを考えますから、どうぞ今しばらく辛抱 してくださいと申し上げたいです。 東北の人たちはほんとうに我慢強い。 でもどうかもう我慢でずに逆にどんどん要求してください。 そうしないと、内に思いが籠もると鬱になってしまいますからね。 どしどし発言してください。 そして一日に一度は、何か笑える事柄を見つけてください。 なかなかそれどころじゃないとは思いますけど、赤ん坊の顔を見たら自然に微笑み たくなるでしょう。 そして春になれば被災地にも花が咲くことでしょう。 可憐な花のたくましい命を見つめて頬をゆるめてください。 私たちは一日じゅう、夜寝るときもあなたたちのことを忘れていませんから、どうか 気を落とさずに希望を捨てないようお願いします。 「生ききる」より引用 ☆☆☆☆ (K.K) |