「ブラザーイーグル シスタースカイ」

酋長シアトルからのメッセージ

 絵 スーザン・ジェファーズ 訳 徳岡久生+中西敏夫 JULA出版 より引用






この感動的な絵本はアメリカ書店業協会賞(ABBY賞)を受賞したものですが、その

絵の素晴らしさは、首長シアトルの言葉と見事に共鳴しあって読者を「あるべき世界」

へと導くものです。是非多くの方に、そして未来を担う子供たちに読んであげて下さい。

(K.K)


雑記帳「魅せられたもの」1998.4/20「父は空、母は大地」








酋長シアトルの有名な演説は、部族の土地を手放すさいに、アメリカ政府と条約を

結ぶ場で行われたものである。人と自然との一体を説き、白人との平和を願うその

言葉は、年月を経るなかで何度も書きかえられ、また書き加えられたりもしている。

スーザン・ジェファーズの繊細だが力強い絵は、悲しみと希望を織りこんだ複雑な

情景をえがきだしていて、酋長シアトルの演説との組み合わせによってできあがっ

たこの絵本は、現代社会に生きるわたしたちにとって、あたかも警告と予言の言葉

のように鳴り響いき、時を得た説得力あるものとなっている。・・・・・・・・

(本書・アメリカの書評誌「ホーン・ブック」より)


 
 


本書より引用


酋長シアトルの言葉のもとの形は、時の霧におおわれて、はっきりしなくなっている

ところがあります。ある人は手紙といい、ある人は演説とよんでいます。わかっている

のは、酋長シアトルが、北西部のインディアンの一つの部族の指導者で、尊敬にあた

いするおだやかな人物だったということです。1850年代のなかごろ、ワシントンの政

府は、打ちのめされ、つかれはてたかれの部族の民たちの土地を、むりやりに買いあ

げようとしていました。まさにそのとき、かれは自分自身の部族の言葉で答えたので

した。語り伝えられたことを引用しながら、かざりけのない雄弁さで。酋長シアトルの

言葉は、かれをよく知っていたヘンリー・A・スミス博士によって書き写されました。そ

の写しは、20世紀に入って何度も訳され、書きかえられています。ジョセフ・キャンベ

ルは、酋長シアトルのメッセージを書き改め、ビル・モイヤーの公共放送協会のシリー

ズ番組に出演したとき、多くの聴取者に紹介し、著書「神話の力」のなかに引用しても

います。わたしもまた、酋長シアトルのメッセージを、この絵本のために書きかえまし

た。大切なことは、酋長シアトルの言葉が、ぬきさしならない究極の真実を語ってい

る----語り続けているということです。その真実とはつまり、建てることや所有するこ

とへのきりのない欲求のために、わたしたちは、かえって、持っているものをすべて

失いかねない、ということなのです。わたしたちが環境問題にめざめたのはおそかっ

た。けれども、偉大なアメリカ先住民族の指導者、ブラック・エルク、レッド・クラウド、

そしてシアトルといった人たちから、1世紀も前にあずけられた、だいじなメッセージが

あったのです。アメリカ先住民のすべての人々にとって、生きものも、この地球をつくっ

ているどの部分も、一つ一つがみな神聖でした。自然とその驚異を浪費したり破壊し

たりすることは、生命そのものを破壊するということだというのが、かれらの信念だっ

たのです。かれらの言葉は、その時代には理解されませんでした。けれども今となっ

て、その言葉は、わたしたちの心をとらえてはなしません。今や、かれらの言葉は真実

となってきているのだから、手おくれにならないうちに耳をかたむけなくてはならない

のです。 スーザン・ジェファーズ



「インディアン」という言葉から、わたしたい日本人は何を思いうかべるだろう?

はだかウマにまたがり、バッファローを狩りする姿。ワシの羽がいっぱいついている

かみかざりを身につけた酋長の雄姿。三角のテントの群れ・・・。



かれらの祖先は、今から2万年前の氷河期のころ、陸続きになった大陸を長い時間を

かけて移動してきたアジア系の人たちだったといわれている。その昔、1000をこえる

部族が、広い北アメリカの各地に住んでおり、200以上の言葉が話されていた。



その生活の仕方も、トウモロコシなどを畑に植えたりするもの、バッファローやカリブー

などの動物を狩りするもの、川や湖や海などで魚をとるもの、また、時にはクジラのよ

うな大きなえものをねらうものなどというように、さまざまであった。



しかし、宗教についてはどの部族も同じように、汎神論にもとづいている。つまり、人間

のまわりにあるすべての自然・・・木や川や風や大地などの無生物から、シカやウマや

ワシやクマなどの動物まで・・・は神であり、神聖な霊が宿っていると考えていた。



そして人間と他の生きものとは同じ自然の一部であって、この地球上に生かされてい

るかけがえのないいのちであり、兄弟姉妹であるという考え方が強い。



この絵本の主人公酋長シアトルは、1790年ころに生まれ、1866年に亡くなっている。

ちょうどこの時期は、アメリカがイギリスの植民地から独立し、一つの国家として拡大

を続けた時代にあたっている。しかし、その独立は白人中心の独立であり、開拓をし

て白人社会をつくっていくうえでは、インディアンはじゃま者でしかなかった。長い間、

インディアンに対する迫害が続いた。



白人たちに土地を追われ、追いつめられているにもかかわらず、酋長シアトルのメッ

セージは、もの静かにわたしたちに訴えかけている。そこには、自然に対する深い愛

があり、人種をこえてよびかけてくる強い平和への願いがこめられている。現代の

わたしたちの生き方を、まるで問いただすかのように。



この絵本は、今アメリカではベストセラーを続け、ヨーロッパでも各国語に翻訳され、

たくさんの人に愛読されている。


「シアトル首長の言葉」

雑記帳「魅せられたもの」1998.4/20「父は空、母は大地」を参照されたし


 


酋長シアトルの言葉 (本書より引用)


空が金で買えるだろうか? と、酋長シアトルは話し始めた。

雨や風をひとりじめできるだろうか?



母は、わたしにこんな話をした。

この大地にあるものはみな、わたしたちにとって神聖です。

松の葉。砂浜。暗い森にたちこめる霧。

草地も、羽音をたてて飛んでいる虫たちも。

みんな、わたしたち一族の思い出のなかに、

神聖なものとしてあるのですよ。



父は、わたしにこういって聞かせた。

わたしは知っているよ、木々の幹を流れる樹液のことを、

血管を流れる自分の血のことを知っているようにな。

わたしらは大地の一部だし、大地はわたしらの一部なのだ。

いいにおいのするあの花たちは、わたしらの姉妹だ。

クマ、シカ、大ワシ、あれたちはわしらの兄弟だよ。

岩山の峰、草原、

ポニー ・・・ みんな、同じ家族なのだ。



遠い祖先たちの声は、わたしにこう語った。

小川や大川をきらめき流れていく水は、ただの水ではない、

おまえの祖父のまた祖父たちの血でもある。

すきとおった湖水のなかのおぼろげな面影は、

わが一族のいのちの営みの記憶をものがたる。

せせらぎの音は、おまえの祖母のまた祖母たちの声よ。

川はわれらの兄弟。川はわれらのかわきをいやす。

川はわれらのカヌーを運び、またわれらの子らを養う。

おまえも川にやさしくあれよ、

兄弟たちにやさしくあるのと同じように。



亡き祖父の声は、こう語った。

大気は貴い。大気はすべてのいのちを支え、魂を与えてくれる。

わたしに誕生のいぶきをおくってくれた風は、

臨終のといきもまた、受け取ってくれたのだ。

この大地と大気を、いつまでも神聖なものとして守るように、

草原の花々のかおりに満たされた風を、だれもが、

心ゆくまで味わいにいける場所として。

最後の肌赤き人たちが、荒野とともに消え、

かれらの思い出が、草原をよぎる雲の影にすぎなくなったとき、

浜辺や森が、それでもここにあるだろうか?

祖先たちは、わたしにこう告げた。

われらは知っている、大地はわれらのものでなく、われらが大地のものであることを。



亡き祖母の声は、こう語った。

おまえが教わってきたことを、おまえらの子らに教えなさい。

大地はわたしたちの母であることを。

大地にふりかかることはみな、大地の息子とむすめにも、

ふりかかるのだということを。



聞いていただきたい、わたしの声を、わたしの祖先たちの声を、

と、酋長シアトルはいった。

あなたがた白人の宿命は、わたしたちには測りがたい。

何が起きるだろうか、バッファローが殺しつくされたときに?

野生のウマがみな、かいならされてしまったときに?

何が起きるだろうか、森の秘密のすみずみまで、

人間のにおいで満たされてしまったときに?



豊かな丘のながめが、電話線でよごされてしまったときに?

しげみはどこに? 消えてしまった。

ワシはどこに? 飛び去ってしまった!

何が起きるだろうか、わたしたちが速足のポニーと狩りとに、

最後の別れを告げるときに?

それはいのちの終わりであり、そして生き残りの戦いの始まりなのだ。



わたしたちは知っている。

血が人をつなぐように、すべての存在は網のように結ばれあっていることを。

人は、このいのちの網を織りだすことはできない。

人はわずかに網のなかの一本の糸、だから、

いのちの網に対するどんな行為も、自分自身に対する行為となることを。

わたしたちは、この地を愛している。

生まれたばかりの赤ん坊が母の鼓動を愛するように。

わたしたちの土地を買い取られるならば、

わたしたちと同じに、この地を大切になされよ。

この地の秘める思い出を、心にとどめおかれよ、

この地を受け取られたならば。

あなたがたの子どものまた子どものために、

大地や大気や川を、いつくしみ守られるように、

そしてわたしたちが愛してきたと同じに、この地を愛されるように。








アメリカ・インディアン(アメリカ先住民)に関する文献

夜明けの詩(厚木市からの光景)

アメリカ・インディアン(アメリカ先住民)

神を待ちのぞむ・トップページ

天空の果実

インディアンの写真集・絵本・映像

私の愛する写真集・絵本