Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)


アメリカ・インディアンの言葉




木に話しかけて

メアリー・ヤングブラッド(アリュート族、セミノール族)

「風のささやきを聴け」より引用


わたしはチュガチ・アリュートとセミノールの血を引いていますが、赤ん坊の頃に、インディアン

ではない両親に養女として引き取られました。両親はわたしにすばらしい家庭を与えてくれま

したが、インディアンが白人社会に溶けこむのは容易ではありませんでした。アリゾナでの小

学校四・五年のとき、わたしはクラスの子どもたちからたたかれたり、髪を引っぱられたり、胸

をつねられたりしました。まあ、子ども特有の残酷さとでも言いましょうか。そんな子どもたち

から逃げ出しては木の茂みに身を隠し、暗くなってから家に戻ったものです。わたしは自分が

インディアンであることがうらめしくてたまりませんでした。お風呂に入って、石鹸で茶色い肌の

色を洗い流せたらどんなにいいだろうと思いました。カリフォルニアに引越したとき、わたしは

生涯で最高の友に出会いました。それは、家の近くの自然保護地域に立っていた巨大な樫

の木です。その木はわたしの避難場所となり、また力にもなってくれました。わたしは毎日そ

の木に登って、何時間も白昼夢を見て過ごしました。彼女にブランディという名をつけ、紙と

鉛筆をもってあがっては、枝の上で絵や文章を書きました。わたしのこの木に対する思いに

は格別のものがありました。おまえは絶対にわたしを落としたりしないわよね、たとえわたし

が落ちても、必ず途中でつかまえてくれるわよね。わたしはよく、そんなことを話しかけたも

のです。辛かったティーンエイジャー時代も、ブランディに悲しみを打ち明けては、しっかりと

抱きしめ、抱きしめられて過ごしました。ブランディは、たとえ高校の卒業ダンスパーティに、

茶色い肌をした女の子を誘ってくれる男子生徒などひとりもいなくても、悩むことはないと教

えてくれました。こうしてわたしはその木と、深い精神的つながりを築きあげたのです。そん

なある日、ブランディと一体になる必要に迫られて木のところまで行くと、赤いアリが木全体

を覆っていました。わたしはアリが怖くてたまりません。そこで必死に考えた末、わたしは木

に、アリを追い払ってくれるようたのむことにしました。するとどうでしょう。アリはほんとうに

いなくなったのです。みなさんは驚くかもしれませんが、わたしは驚きませんでした。それ

からというもの、わたしがブランディを必要としているとき、アリはいつも姿を消しました。

友人や家族の中には、わたしの頭がおかしいと思う人もいました。そして、自分がほかの

人たちと違うと知ったのもこの頃です。初めて自分をインディアンだと感じたのです。イン

ディアンだからこそ、ブランディとの特別な関係を打ち立てることができたのだと。人と違う

というのはある意味で、気分のいいことでもあります。たとえ白人の世界で育てられても、

わたしはやはりインディアンだったのです。そしてインディアンであるということは、なんと

すばらしいことでしょう! 生まれて初めてわたしは、自分がインディアンであることを誇り

に思いました。これを機に、人生もまた変わりました。わたしはクラシックフルートを学び

はじめ、今ではインディアンフルートを演奏しています。わたしのフルートは、手作りで、

木製です。その木製のフルートに指が触れるとき、わたしはそこにあのブランディlを感じ

るのです。





木が話すのを知っていますか。

そう、木はほんとうに話すんですよ。

木はお互いにおしゃべりしますし、

注意深く耳を傾ければ、

あなたにも話しかけてきます・・・・

わたしは木からたくさんのことを学びました。

ときには天候のこと、ときには動物のこと、

そしてときにはグレート・スピリットのことを。



ウォーキング・バッファロー(ストーニー族)

「風のささやきを聴け」より引用


 
 


未来をまもる子どもたちへ


 WATCH + TOUCH   

「触ることからはじめよう」という作者の想いが、どのページの端々

にもあふれているサイトである。書道家としても、また英会話の

先生としても活躍されている高橋さんは、その異なる学びの中に

おいても「出会いに触れる」ことを見つめながら教えておられる。

そして「空の路地」の樹の写真、高橋さんの視点から樹を眺めた

ことがなかった私にとっては新鮮な驚きであると共に一つの発見

であり、「ことばつれづれ」などのエッセイに見られるような深い

洞察をさりげなく日常の言葉でやさしく語りかけてくれる姿勢には、

作者自身の人間としての成熟度を感じられてならなかった。











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