「全天 星雲星団ガイドブック〈春夏編 小型カメラと小望遠鏡による星座めぐり〉」
藤井旭著 誠文堂新光社 より引用
数百光年、数千光年、あるいは数千万光年という宇宙の広大な時間と空間をこえて やってきた巨大な星雲・星団のかすかな光・・・・小望遠鏡と小型カメラによる星雲・ 星団の観測には、そういったかすかな光を自分の目とカメラでとらえるというぞくぞく するような楽しみがあります。たしかに、小望遠鏡でながめる星雲・星団の姿は、大 望遠鏡の長時間露出による写真にくらべれば、弱々しくてたよりないものがあります。 しかし、小さなレンズを通して次々に目にとびこんでくる星雲・星団の光は、刻々と変 化していく宇宙のナマの姿であり、その迫力はとても大望遠鏡の写真の及ぶところ ではありません。一方、たいていの天文ファンの方がおもちのF1.8とかF2の明るい レンズのついたカメラは、ヘール天文台の5m反射望遠鏡F3.3よりもずっと明るい “眼”なのです。この明るい眼を使えば、肉眼では絶対に見ることのできない淡い散 光星雲や星雲・星団の色や形を簡単にとらえることができます。このように、小望遠鏡 でも小型カメラでも星雲・星団の観測にはそれぞれの持ち味を発揮してなかなか威力 があるわけです。メシエカタログを作ったメシエは、わずか5cm程度の小口径で観測 してカタログを発表したということからも、このことがよくおわかりになるでしょう。
メシエ天体といえば、小口径向きの明るい星雲・星団の代名詞にもなっているもの ですが、その中にはかなり暗いものがふくまれていたり、逆に明るいもので入ってい ないものもたくさんあります。そこで、このガイドブックでは、メシエ天体にこだわらず、 小望遠鏡と小型カメラでおもしろいと思われるものをピックアップして載せました。した がってメシエ天体で載せられていないものもありますし、散光星雲のようにカメラで しか見ることのできない特殊なものが入ったりもしています。これは小型カメラの天 体写真への応用によってアマチュアの星雲・星団の観測が多様化してきたことのあ らわれともいえましょう。星雲・星団の見え方、写り方というのは、その時々によって かなり違うものです。また目の鋭い人、そうでない人といった個人的な差による場合 もあります。つまりこのガイドブックに書かれている見え方というのは、著者である私 の極めて個人的な見え方であって、読者の皆さんが必ずしもこのように見えるとは 限らないわけです。ですから、ここにこんな星雲・星団があるのだなということだけを 知っていただいて、私の見え方にこだわることなく観測してほしいと思います。 本書 はじめに より引用
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