Edward S. Curtis's North American Indian (American Memory, Library of Congress)
1998.5/08
人間が好き
写真・文 長倉洋海 福音館書店
「アユトン・クレナックの言葉」を参照されたし 「鳥のように、川のように」森の哲人アユトンとの旅を参照されたし
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アマゾン先住民族の素顔を追った感動的な写真集の書名にこの 言葉が使われている。この言葉には限りない同胞への人間に対す る信頼と共に未来への希望が満ち溢れている。「人間が好きか」 と問われたなら、私は躊躇して返答できないであろう。それだけ自 分の中に巣食っている魔物に胸が閉ざされているのを感じてなら ない。世界が、人類がどのような道を歩きつづけているのかを想う とき、漠然とした不安感に捕われることがある。世界の先住民族 の人々はこのことを最も敏感に感じ、それが故に絶望的な戦いを 強いられてきた。白人の文明を積極的に取り入れ同化することを 選んだ多くの黒人や先住民族がいたことも事実である。しかし、 大地との絆を忘れない、いや魂に刻みこまれた少数の先住民族 が現代においても生き続けているのをこの写真集は雄弁に語り かける。文明から大地の絆へと再び帰ってきた彼らアマゾン先住 民族の輝く眼を見て、自分自身が如何に醜く弱い存在であるの かを思い知らされる。「人間が好きか」と問われたとき、躊躇なく 「好きだ」と答えられない限り、私にとっても本当の希望は見えて こないのだろう。そして輝く未来も。
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