「鳥のように、川のように」

森の哲人アユトンとの旅

長倉洋海著 徳間書店より











「人間が好き」という優れた写真集は、アマゾン先住民の姿と叡智を追ったもので

あったが、「鳥のように、川のように」はその叡智の部分を深く掘り下げたもので

ある。アユトン・クレナックと各地の部族を訪ねる旅に、今の先住民族が抱える

多くの問題が浮き彫りにされ、改めて大地に生きるとはどのようなことかを考え

させる。このアユトンは、インディオ連合の闘志としてインディオの自立を目指し

て10年にわたって活動してきたが、「法的に土地を得ても、我々にその土地を

守る心の準備があるのだろうか。次の世代に祖先から受け継いだものをきちん

と手渡していくことができるのだろうか」と思い、「文化を守り、引き継いでいくた

めには種を植えて、強い根を作らなければ」と政治の世界から姿を消す。今は、

白人に依存する生活から脱するために、祖先から受け継いだ森を守り伝統を受

け継ぎながら経済的自立を果たすべく、各地の特性を活かした自立のプロジェ

クトを推進している。

(K.K)


「アユトン・クレナックの言葉」

「人間が好き・アマゾン先住民からの伝言」

「ヤノマミ」 ヤノマミ、それは人間という意味だ 国分拓著 NHK出版

NHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン・原初の森に生きる 劇場版 DVD」 国分拓 監督

「アマゾン、インディオからの伝言」南研子(熱帯森林保護団体代表) ほんの木

「悲しい物語 精霊の国に住む民 ヤノマミ族」
アルナルド・ニスキエル作 エドムンド・ロゴリゲス絵 田所清克・嶋村朋子 編・訳 国際語学社

「きみが微笑む時」子どもたちの微笑がひらく、大地と地球の明日 長倉洋海写真集 福音館書店

心に響く言葉1998.5.8 「人間が好き」







アユトンの体には美しき森の記憶がある。長倉洋海がそれを「詩」として「知」と

して見事に結像させた。二人の旅は、いわば、人の記憶の宝さがし。かけが

えのない言葉と風景に、魂が洗われた。静かに、深く得心した。

辺見庸(作家)・・・・・・・本著帯文より



私たちはわざわざ枯れやすい材料を使って家を建てたり、精霊の供物を作るなど

して、超越した力への敬意を表してきました。長持ちのするピラミッドのような建造

物を作り上げる民族もありましたが、私たちは自分の跡を残さないように気遣いし

てきたのです。それは山を切り刻んで崇拝する者と、山をあるがままの姿で崇拝す

る者との違いなのです。マヤの人々もピラミッドを作りましたが、不滅の造形物から

身を退き、自然の箱庭でもっと謙虚な生活を営むために森に戻っていった人々が

いました。山に戻り、砂漠に戻り、とにかく彼らは物質を通して世界を創造すること

を放棄し、微妙な創造の世界をもっと謙虚なもので表すことにしたのです。マヤの

賢者が予言で、この場所に残る者には大きな災害が訪れると警告し、実際に白人

の侵略という形で悲劇が起きました。が、その前に予言を理解し、そこから離れ、

長い旅をして森の中に入った人たちがいたのです。白人たちは病気を持ち込みま

したが、それも森の奥までは及びませんでした。その人々はいまグアテマラにいま

す。世の中をもっと静かに通り過ぎても良いと考えることは、地球の子の大きな進

歩です。我々は創造された自然の尊びます。その世界の全ては美しいので、中身

を変える必要を感じないのです。しかし、自信過剰な文明は、もっと素晴らしく、もっ

と完璧な創造物を生み出せると思うようになり、滝や山、鳥や海、気候までも変えよ

うとしています。それは宇宙の中で、自分たちこそがもっとも大事な生物という視点

を表しています。しかし、それは一つの道にすぎません。ほかに、生存に必要なもの

を自然界と分配する生き方があります。生存し、幸福を感じるためだけならこれ以上

は必要はないと考える道なのです。すべての人類が不滅の建造物を築く努力をすれ

ば二、三百年で人類は地上のすべてを破壊することになります。しかし、すべての民

族がそうでななく、建造物を作らなかった民族は森や川、山が残されるように協力し

てくれました。ですから、この二つを比較した場合、どちらが多くの遺産を残してくれ

たかを考えてしまいます。







男性と女性のエネルギーは自然の全てにあります。男性でも女性エネルギーと相性が

良かったり、自分の中に女性エネルギーを少なからず持っている人もいます。一方の

エネルギーだけだと孤独で排他的で乏しい道を巡ることになります。豊かさとは教えや

示唆を受けられる人間のことをいいます。家の柱である女性は食料の分配を決めます。

それは男たちの権力範囲に入り込めないために得ている権利のようなもの。女の祭りも

あります。家や中庭の主である女が村全体の主となり、お祭りを主催します。男が支配

する場所と女が支配する場所は違います。が、家や狩り、土地、生活、教育について男

女の会話を妨げるものではありません。インディオの伝統社会では女性はとても尊敬さ

れています。もちろん男たちは姉、妹、妻を大切に思い、愛しています。近代社会では

全てかゼロかの極端なことが多く、男は全てを支配し、女は家に閉じ込もるか黙るしか

なく、“柱”としての女の役割を無視しています。近年の労働環境の中で、年寄りに対し

て行われている差別は女性に対する差別と同様なものです。女も年寄りも若い男性に

地位を譲らざるを得ない。しかし、伝統社会の中では若さで支配しようとする青年の

衝動は社会機構でコントロールされています。そこでは、女も支配者であり権力がある

のです。自然の権力があるのです。若者であっても一人で森の中で生きられません。

森や砂漠で生きるには伝統知識を受け継ぐ必要があります。そこでお互い、愛情も持

ち合うようになります。それがインディオの社会です。西側では、法律によって、男女

平等にしようとしていますが、それは間違いだと思います。男と女は身体が違うので

す。生物的に男と女は違うのです。それを法律で変えることはできません。西側の

社会を実質的にとりしきっているのは青年、壮年の男性ですが、彼らは攻撃的性格

の持ち主で、自分自身について全てを知っていると思い込んでいます。しかし、この

男たちさえ何をすべきかわからない時代がくるでしょう。彼らはすでに老人を排除し、

社会における女性の役割を差別し、子供たちは無用であることにしたので、そのうち

自分たちでさえも存在する意味がないと見なすようになります。近代社会のアイデン

ティティは危機に陥っているのです。



目次

第一章 アユトン・クレナックとの出会い

初めての出会い

ブラジルへ

アクレ州へ

クルゼイロ・ド・スルの町で

UNI

貧しい人々こそ

アユトンの生い立ち

長老の夢

夢の知恵


第二章 アクレへの旅

ジュルア川を遡る

川辺の人々

壁のない家

人はどこから来て、どこへ行くのか

“希望”の村へ

ヤワナワの誕生神話

祭り

別れ

森の声


第三章 ヤノマミの地へ

サンパウロで

マクシへの旅

クレナック族の伝統

鷹との出会い

ヤノマミの地へ

村人との再会

ヤノマミの生活

科学の傲慢

子供たち

成人式

強制のない社会

シャーマンの働き

名前の意味

聖なる植物

ヤノマミが滅べば世界は滅ぶ

祭り

男と女

死について

ヤノマミの人々


第四章 カシナワの地へ

ジョルダンへ

夜の贈り物

自然のリズム

世界を結ぶもの

命の細部を見つめる

森の女王サマウーマ

エネルギーの交換

森の破壊

世界の均質化に対抗して

インシャラー

言葉の意味

カシナワの地へ

訪ねてきた男

破壊と暴力

生きる意味

別れ


あとがき







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