「悲しい物語 精霊の国に住む民 ヤノマミ族」
アルナルド・ニスキエル作 エドムンド・ロゴリゲス絵
国際語学社 より引用
ブラジルとベネズエラの国境のアマゾンの森に生活する、先住の民ヤノマミ族。 そこは、まさに生命力が息づく、自然と資源の豊かな地。ヤノマミ族は、自然と 共存するために、彼らの始まりと生き方の示された物語を代々語り継いで守っ てきました。しかし、語り継ぐべき物語を失った文明社会の人々によって、ヤノ マミ族に悲劇がもたらされます。1993年、金の盗掘目当てに、オリノコ川支流 のハシムーの集落が襲われたのです。エドムンド・ロドリゲスが挿絵を描き、 アルナルド・ニスキエルの手による本作品は、先住の民の文明社会との共存 を望む叫びを伝えるものです。
はじめに 人生は楽しいことばかりではありません。時には私たちは、嘆かわしい 出来事に向き合うことを強いられます。だからといって、それを隠し立てするわけに はいきません。そうしたことが再び繰り返されぬよう、学校でも教えられるべきです。 多くのインディオが殺された、アマゾンのヤノマミ族に降りかかった悲劇は、その許し がたい出来事のひとつです。違法なダイヤモンドや金・錫の採掘は、無責任きわま りない人たちの、殺人の口実になっています。25万人(西暦1500年頃には約600 万人であった)のインディオは、20世紀末には50万人に達するであろうという統計 とは反対に、殺略され続けています。横暴な採掘者であるガリンペイロは常に略奪 的に振舞い、河川に水銀を垂れ流し、アマゾンの自然をも犠牲にしています。この本 で取り上げていたハシムー(Haximu[地名])の事件は、下劣な暴力そのものです。 私たちは、そのような残酷な行為を忘れてはいけません。それがブラジルで起きた のか、それともヴェネズエラで起きたのかは問題ではないのです。なぜなら、彼の 地はもともとヤノマミ族のものであり、そこに後になって国境が置かれたのですから。 本書は、先住民たちに必要な土地の境界について、私たちが話し合う機会となるよ う、熱情を込めて書かれたものです。 リオ・デ・ジャネイロ 1993年9月1日 ブラジル文学アカデミー アルナルド・ニスキエル
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