「アマゾン、インディオからの伝言」

南研子(熱帯森林保護団体代表)

ほんの木 より

2000年4月22日初版発行


熱帯森林保護団体(RFJ:Rainforest Foundation Japan)

 


(以下、サイトより引用しますが、代表の南 研子さんはアマゾンを25回も訪れ、その

体験記を「アマゾン、インディオからの伝言」、「アマゾン、森の精霊からの声」として

出版されています。)



熱帯森林保護団体(RFJ:Rainforest Foundation Japan)はアマゾンの熱帯林及び、

そこに暮らす先住民の支援を目的に、1989年に発足したNGO(国際協力市民組織)

です。2008年8月にNPO法人格を取得しました。



1989年5月にアマゾン・カヤポ族のリーダーであるラオーニとロック歌手のスティング

がアマゾンの自然危機を訴えるために、ワールドツアーを行い来日しました。その際

に、受け入れ機関となり、その後、実質的な活動が開始され現在に至ります。



明るく、楽しく、わかりやすくをモットーに開かれた環境保護活動を心がけています。

アマゾンの環境破壊は、私たちに関係する切羽詰まった問題で、私たちの生活と

アマゾンの森は密接な関係にあります。


 





地球の酸素の三分の一を生産していると言われているアマゾンの熱帯雨林。そのアマゾン

では、先進国の豊かな暮らしを支えるためだけのため、一分間にフットボール場60個分の

面積が消滅し、そこに生きる多くの動植物や先住民が姿を消しつつある。本書はこのアマ

ゾンの状況並びに苦闘するインディオたちを見事に描きだしており、現地の生の声を聞き

取りながらの支援活動をしている著者たちの姿勢に心を打たれてしまう。そして霊的にも

先住民と同じ世界に立つ者しか感じることが出来ない精霊世界、その世界をも著者はさり

げなく描き出している好著である。インディオは言う「木が世界を支えている」と。

2000年5月18日 (K.K)


1998.5/8 心に響く言葉・「人間が好き」

「アユトン・クレナックの言葉」

「鳥のように、川のように」森の哲人アユトンとの旅

「人間が好き」アマゾン先住民からの伝言 写真・文 長倉洋海 福音館書店

「ヤノマミ」 ヤノマミ、それは人間という意味だ 国分拓著 NHK出版

NHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン・原初の森に生きる 劇場版 DVD」 国分拓 監督


 




南研子さんは、アマゾンの涙を見ている人です。減少する熱帯雨林を守るインディオ保護区

に生きる先住民たち。貨幣経済も文字もない人々との11年間にわたる交流を初めて一冊

の本に綴りました。この本は現代文明に反省を求めた、心を癒す、精霊たちの記録です

(本書紹介文より)。南研子・・・・1989年イギリスの歌手スティングがアマゾンを守ろうという

ワールド・キャンペーン・ツアーを行い、日本を訪問した。その際のボランティアが縁で、同年

5月「熱帯森林保護団体」を設立、活動を開始。ブラジルでの1992年世界先住民会議を機

にその後12回にわたりアマゾンのジャングルで先住民と共に毎回2ヶ月以上生活し、支援

活動を継続中。現在、熱帯森林保護団体代表。NGO活動推進センター理事(本書より)

熱帯森林保護団体(RAIN FOREST JAPAN)のホームページ



自然と共生してきた先住民の生活をチラッと垣間見ただけで、その深い部分の教えや知恵

をくみ取らずに、一部分をファッションとしてしか取り入れない薄っぺらな文明人が哀れにさえ

思えてくる。ここにきて人類の存続が危ぶまれ、人々は文明という迷路で立ち往生し、心ある

人達が未来に対して何を選択していくべきかの方法を模索している。私は未来へ正しく向かう

オルタナティブ(他にとるべき方法)の鍵を先住民と呼ばれている人々が持っていて、地球が

窮地に追いつめられた時に、スッとこの鍵で扉を開けて活路を指し示してくれるような気がし

てならない。本書「アマゾンの伝説に出会う」より引用。


2000年6月11日(日)朝日新聞朝刊の「天声人語」に著者の南研子さんがとりあげられました。

魅せられたもの「未来を守る無名の戦士たち」 1999.1.30 を参照されたし


 
 


(本書より引用)


巷では「グローバリーゼーション」とか「地球にやさしく」といった言葉だけが氾濫し、広告の

キャッチフレーズにも多く使われているが、かえって言葉の一人歩きが目立ち、人々はその

ための行動にまで駆り立てられない。国際間の自然保護に対する条約のようなものは各国

の利害が対立し、足並みが揃わず、遅々として進展がない。所詮、先進国の利益に基づい

て全てが決定されていくのだろう。ブラジルでも、九二年リオ・サミットの後、国内だけでなく

ヨーロッパのNGOがアマゾン保護のために、多数ブラジルで事務所を開いたが東欧の問

題が起こると、さっさとヨーロッパ支援に切り替え、引き上げていってしまった。ここシングー

でも、ブラジルNGOであるISA(イザ)とエスコーラパウリスタ、そして私たちのような小さな

NGOの三者が、さまざまな支援活動を地味にコツコツと続けているが、開発という怪物相

手では土台かなう訳がない。焼かれたジャングルの跡をシコシコと植林しても、翌年にはま

たどこかの森が焼失してしまう。まるで、さいの河原の鬼相手に「一つ積んでは母のため・

二つ積んでは・・・・・・・・」と、終わりなき作業をしているようで悲しくなってくる。しかしこれを

やめてしまえば、事態はもっと悪化する。私は心の内で「負けるもんか!」と叫んだ。私自身

も咳が出始め、日夜止まらない。こじらすと気管支炎や肺炎にもなりかねない。それでも私

は、一、二ヶ月でこの場から離れることができるが、住民は逃げ場がない。こうしてアマゾン

の熱帯林は今年も大々的に焼失していき、オゾン層はますます減り、世界のあちこちで気象

変動に拍車がかかる。愚かな人類の行く末を案じるが、天の神様が真理を知る者以外を地

球から放り出さない限り、解決策はまず見つからないだろう。アマゾンでジャングルが燃やさ

れている同時期に、パリやニューヨークではきらびやかなファッションショーが繰り広げられ、

インターネットのホームページ数は天文学的にふくれ上がり、家にいながらにして世界中の

あらゆる情報や物が手元に届く。コソボでは大人の世界に巻き込まれて子どもたちが死ん

でいく。同じ星に暮らしていながら、個々に分断されて、それらのことが全く何の関連性も

持っていないかのような錯覚を起こしながら時は過ぎていく。私たちはこの肉体という器で

しか、地球に暮らすことができない。いずれは宇宙ステーションも可能になるかもしれない

が、今のところ、この三次元を超えることは難しい。イギリスの産業革命以来、約二百年間、

人類は科学技術を駆使して数々の進歩、発展を遂げてきた。その恩恵は多大なるものだと

十分に理解はする。しかし、天然資源の有限性を考慮せずに、経済優先の論理に従い、開

発を進めてきたツケが、二十一世紀を目前に今、そのおごれる人類の前に立ちふさがって

いる。現実の問題として、原子力発電所を始めとする核保有国による今後の選択、ダイオ

キシンや複合汚染の生物にもたらす環境ホルモンの影響、と探せばきりがない。また、精神

面でも多くの人が心の拠り所を失い不安になるために、本来必要としないヒーラーやチャネ

ラーなる人材が職業になる時代だ。砂上の楼閣のような文明社会を誰もがおかしいとは思

わないのだろうか? いや、よしんば薄々気付いたとしても「家のローンもあるし、養育費も

かかるので・・・・。色々あっても私のところまでは来ないと思う」と心の隅で思っているので

はないか。例えば、誰も酸素が無くなることなんか想像もしないし、そんなことはあり得ない

と思っている。もし酸素が無くなれば、人間は三分で死に至るという。色々な要素があるが、

アマゾンのジャングルはこの酸素作りに一役買っていて、世界中の酸素の三分の一を生産

している所でもある。そのジャングルが年々焼失しているということは、結果はどうなるかは

分かりきっている。近い将来、この酸素を商売にする日も必ず来るだろう。数年前は、誰も

お金を出して水を買うことなど考えもしなかった。最近よく「癒し」という言葉をあちこちで耳

にする。そして「癒しグッズ」なる物も数え切れないほど、様々な形で売られている。こうした

グッズの中で、クリスタル(水晶)も人気商品の一つだが、このクリスタルがどこから来るかを

考えた人はいるのだろうか。ブラジルはクリスタルの産地でもあり、これを採掘するために

ジャングルを壊し、結果的に野生動物が殺され、文明人の手許に届く。そんな過程をへて

来た物を身に付けて、本当に癒されるとでも思うのだろうか? 先進国に住む人々のエゴ

そのものではないか。先住民の中にもクリスタルで病気の治療を行う所があるが、それは

呪術師が代々家宝として扱い、神聖なる道具なので量産するわけがない。自然と共生して

きた先住民の生活をチラッと垣間見ただけで、その深い部分の教えや知恵をくみ取らずに、

一部分をファッションとしてしか取り入れない薄っぺらな文明人が哀れにさえ思えてくる。ここ

にきて人類の存続が危ぶまれ、人々は文明という迷路で立ち往生し、心ある人達が未来に

対して何を選択していくべきかの方法を模索している。私は未来へ正しく向かうオルタナティ

ブ(他にとるべき方法)の鍵を先住民と呼ばれている人々が持っていて、地球が窮地に追い

つめられた時に、スッとこの鍵で扉を開けて活路を指し示してくれるような気がしてならない。

そのためにも、今こそ一人ひとりが本気で個に立ち戻り、何のためにここに存在し、何を優

先的に考え行動するかを決断しない限り、全員奈落の底へと突っ走るしか道は残されてい

ないように思える。と言っても、個が何であるかが分からなければどうしようもない。私自身、

ある時期、自分の存在を考えた時に、周りとの関係性において初めて、研子像なるものが

浮き彫りになってきたのに気付き愕然とし、自分という人間が確信出来ず怖くなり、逃げ道

として死を選んだが、一命を取り留めた後、個を丸ごと見つめることを再度試みた。そして、

まず私ありきだと思った。家族も友人も社会も脇役であって、あくまで主役は自分でなけれ

ばならない。主役が意思を持ち、行動して初めて事が開始する。


 


目次

まえがき

シングー・インディオ国立公園

主な登場人物、FUNAI

南米大陸とブラジル

シングー・インディオ国立公園とカヤポ族保護区


第1章 アマゾン、9年めの旅

第2章 ラオーニとスティング

第3章 私のこと

第4章 世界先住民会議に出かける

第5章 NGO、日本の現実

第6章 いよいよ初めてのシングー地域

第7章 雨期のシングー川で遭難

第8章 アヤパ州で見た理想の政治

第9章 アマゾンの伝説に出会う

第10章 インディオたちの未来


あとがき

プロフィール&団体紹介





未来への鍵 南研子

「夜明けへの道 はじまりの500年に寄せて アメリカ先住民は語る」より引用


89年春、「アマゾンを守ろう」を掲げ、イギリスのロック歌手スティングがワールドキャンペーン・

ツアーを行ないました。当時巷で、環境問題(何を指してか定かではありませんが)なるものの

情報が、少しずつ流されつつありました。しかし、国内だけでも、問題はたくさんあるのです。原発

から始まり、地域によるゴルフ場開発の自然破壊、海洋汚染、ゴミの問題etc。数えあげたらき

りがないほど。国内だけでも手一杯。そんな折このツアーの一行が、日本に来るというのです。

ひょんな事から、このツアーのボランティアをする事になりました。


来日したメンバーの中に、「88年いのちの祭り」に参加した、アメリカ・インディアンのレッドクロー

(フロイド・ウェスターマン)がいると聞き、1年振りの再会に胸が躍りました。1週間弱の短い彼ら

の日本での滞在が、今までの自分の人生の方向を、ガラリと変える結果になろうとは、当時夢に

も思いませんでした。


アメリカ・インディアンのレッドクローも魅力ある人物でした。このアマゾンのリーダー・ラオーニとの

出会いで、個人的に自分の進むべき方向性がはっきりしました。「まだ地球上に、こんな素晴らしい

人がいたんだ。」 敵である文明人の国々を行脚し、熱帯林の大切さを説いてまわって来た彼から

受ける印象は、挑戦的でネガティブなバイブレーションでなく、ただ淡々とあるがまま・・・・。全てを

許し、超越しているようでした。有史以前より自然と調和、共生し、ジャングルに楽園を築いてきた

先住民(インディオ)が突然500年前、外部からの侵入者によって、全てのものを収奪され、殺りく

され、なす術もなくジャングルの奥地へと追いやられてしまいました。1千万人近くいた人達は、現在

20万にも減少したのです。


ブラジルでは、FUNAI(国立インディオ募金)という、政府管轄の機関が、設けられています。が、

その前身として、SPI(インディオ保護局)なるものがありました。本来、インディオ保護の役目を、

司る立場にあったのです。にもかかわらず、彼らが行なったことは、例えば、アマゾン川流域の

北部地域の諸種族の間に、結核菌を意図的にもち込み、こうした病気に対して免疫をもたなかっ

た多くのインディオに人々を死に至らしめました。またインディオの集落に、インフルエンザのウィ

ールスがしみ込んだ毛布を、ヘリコプターで空からばらまき、村ごと全滅させた事もあったのです。

プロのインディオ・ハンターの手により恥ずかしめを受け、その後、逆さまに吊るされ、斧で身体を

切り刻まれた女性インディオも珍しい事ではありませんでした。助けるべき立場の人間が、率先し

て殺りくに加担するなど、信じがたい事です。それも、何百年も前の事ではなく、20世紀も半ばで

の事。


「あなた達が絶滅の道を選ぶのなら、熱帯林を燃やし、森の番人であるインディオを殺しなさい」

ラオーニの言葉は、ズシンと重い。現在、世界中の医薬品として役立てられている4分の1の原料

は、熱帯林から発見されたものだといいます。それもまだ全体の2%足らず、残りの98%は、未知

数として森に静かに繁茂しています。インディオの長老は、6千種類の植物を判別する事が可能で

あるため、村では医者の役もこなします。インディオの土地の概念には、個人で所有する感覚はも

ち合わせていません。全て、村で共有し、食物にしても公平に分けます。過酷な環境で生きていく

ためには、助け合い、分かち合うやさしさが必要なのです。自然を支配しよう、などと、おごった気

持ちは毛頭ないのです。


ヨーロッパの、自然と人間をコントロールしてきた、傲慢な歴史の犠牲者となったインディオが、今

また我々を含め、先進国の人々の、飽くなき欲の波にのみこまれようとしています。開発という名の

下に、熱帯林をはがし、インディオを蹴散らし、ダムを造り、道路、鉄道を敷き、地下資源(鉄、金、錫、

ボーキサイト、etc)を海外に流出しています。金の選別に使う水銀のたれ流しにより、水俣病と同じ

症状の水銀汚染中毒が、今深刻な問題となっています。我々は空腹を満たすためにハンバーガーを

食べ、缶ビール、缶ジュースを飲みます。金を身に着け、財産として買いあさります。経済優先の論理

のシステム、というこの魔術がベースに成り立っている、豊かさ、便利さの生活にどっぷり浸かり、ささ

やかなリサイクル運動、ゴミ拾いに満足している人間に、その蔭で本当に苦しんでいる人々の痛さ、

つらさが理解できるのでしょうか?


本気になって一人ひとりが、意識の変革に取り組まなければ、生物の存続などあり得ません。そして

今こそ、常に天の声に耳を傾け、独自の伝統文化を継承し、生き続けてきた先住民の人々の知恵が、

次の世代に手渡す、未来への鍵を見つけるヒントになるのではないでしょうか。


 







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