「夜明けへの道」はじまりの500年に寄せて アメリカ先住民は語る
翻訳者 本出みさ 山尾三省 木村理真 高橋純平 松田トム 斉藤由佳 大畑豊
坂口典和 北山耕平 宮田雪 弥永健一・光代 河本和郎 森田ゆり 大羽正律 村上美理子
人間家族 特別号 スタジオ・リーフ より引用
本書 前書きにかえて
“インディアン・タイム”という言葉がある。杓子定規で時間割に追われる人間から見れば、 それはルーズでいいかげんとも写るが、どうして奥のある言葉だ。物事は、時が来ないと 進まない。自然が時を教えてくれる。人間が決めるべきコトではなく、自然という神の采配 によって時が決まり、コトはそのように進む、という意味である。本書はまさに“インディア ン・タイム”で進行した。ちょうど一年前、モホーク事件を(私の知り得た限りにおいて)ま とめた小冊子「The Sacred Hoop」を出版したときから始まった。以来、「五百年」という言 葉のその重みが、呪文のようにくり返されて交錯した。「五百年」・・・・何という歳月であろ う。地球の年月から見ればわずかな時間かもしれないが、人間の罪という面から考える と、気の遠くなりそうな長い年月である。コロンブスのアメリカ大陸到来にはじまる影響は、 南北アメリカ大陸だけの歴史の変化だけでは断じてない。地球上のすみずみにまで波及 し、そして現代という結果につながっている。日々エントロピーを増やしつづける人間の勝 手な行為、今なお行われている侵略・戦いの数々、そしてなおも残る奴隷制。五百年前の ことではなく、現在のことである。世界中の誰もが、この五百年間に行われてきたことごと に決して目をつむってはならないし、心にきざまなければならない時だ。本書の作業は、 アメリカ・インディアンの人たちに「あなたにとっての五百年とは?」という質問を投げかけ ることから始まった。どれだけの人たちが、それに応えてくれるか見当もつかなかった。 ただ待つしかなかった。もしかしたら、ひとりも応えてくれないかもしれないとさえ思って いた。結果は、レポートやエッセイ、インタビュー等が、次々と亀の島から送られてきた。 彼らへの質問は、同時に「わたし自身」への問いかけであり、「わたし」のアイデンティテ ィーを探る旅でもあった。そして「ホピの予言」の上映活動や「セイクレッド・ラン」を通して 北米先住民族の世界を垣間見、アイヌの文化にふれ、それらの奥の深さにただ圧倒され るばかりの「わたし」を知ることであり、「五百年」を学び直すことは「すべてにつながる」こ とでもあった。浅学、未熟な私には、歴史の史実を語ることなどとても出来ない。充分な 内容の歴史書はすでに出版されているので、それらの史料を読んでいただきたい。本書 は、インディアン・タイムの進行の結果、少しの背景の説明と、現実問題のレポートを載 せているが、主として現在生きている先住民族の生の声をレポートしている。彼らからの メッセージが「夜明けへの道」につながらんことを心から切望し、どうかゆっくりじっくり時間 をかけてお読みいただきたい。また本書は、たくさんのネイティブ・アメリカンの人たち、 日本の人たち、そしてアイヌ民族の想いによって出来上がった合作の本である。それらの 運搬係のつもりで、企画、監修にたずさわらせていただいた。そして92年10月12日、フル ムーンにあたるコロンブス・ディに、本書を亀の島に奉納させていただく。 All my relations ソンノ イヤイライケレ (本当にありがとう - アイヌ語) 堀越由美子 (本書より引用)
コロンブス・デイ 日本宣言 (本書より引用) 1992年10月12日
無念のまま旅立った 多くの人々に 痛め傷つけてしまった 母なる地球に 剥ぎとってしまった 山々の木々に 草花に 動物たち 鳥たち 虫たちに それら すべての御霊に 私たちは許しを乞い 祈りを捧げます
500年を経て なおも愚かでありつづける 私たち人間の 今こそ気づきのとき 妙なる生命の営みに 我らいかに死すべきかに 目覚めるとき
その最後の段階にさしかかった 今日 与えられた 最後の決断として たとえ コヨーテが耳もとで囁いても 再びこの500年をくり返さないよう 智慧をもつ民として 生きられますよう 生きとし生ける すべての生命あるもののために 祈ります
私たちの存在、その証として 謙虚な姿に立ち戻れ、奪うなかれと 悲しみの声を 勇気と力に変えて 大地をかけぬける ドラムの魂の響きと共に 「夜明けへの道」の創造を宣言し 互いの未来を創りあうために 501年目からの10月12日を 「世界の先住民族デイ」とすることを ここに提言いたします
「夜明けへの道」編集部
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夜明けへの道 目次
前章 再考500年 グレイト・スピリットがあなた方を導いてくださいますように ロバート・スティード 詩・インディアンの声 レオナルド・ペルティエ 征服のパラダイム 支配者の世界観 ゲイル・トゥレンブレイ 詩・セレモニー レスリー・マーモン・シルコ コロンブスを発見する 編集部
第1章 亀の島・北アメリカから その1 力の瞬間は今 ロバート・ミラバル ホーガンの向こうの世界 ボイド・;ピント 最悪の500年 デニス・バンクス 私達の道 イボンヌ・スワン 居留地の外で育った私 コロンブスが私の残したもの ゴードン・W・A・オールズ 大学でインディアンについて教えて アグネス・ウィリアムズ 詩・ツォアイ・タレーの喜びの歌 N・スコット・モマディ
第2章 亀の島・北アメリカから その2 イロコイ6カ国連合 編集部 対話・ネイティブと白人の生き方 スティーブ・ジョン アリシア・クック 詩・二十世紀アメリカのインディアンは歌う ゲイル・トゥレンブレイ 島たちに感謝して ジョセフ・ブルチャック ショッキングだった外の世界 ジャニス・クローズ 子供への教育とは ケリー・クローズ ロングハウスとキリスト教 フローラ・クローズ スピリチュアル・セルフ ウェイド・プリンタップ 創造主への道 ターウェーダーキ 偉大なる清めの時 ターハン・クロッシングフィート・クローズ 不思議なことに、まだ生きている ジェイ・クローズ ワンパム・ベルト 編集部 生き残る闘い アリス・パピノー・ドアセンター 決断の時 オレン・ライオンズ
第3章 亀の島・北アメリカから その3 創造主への祈り ウィリー・デローム 私達の子供達、孫達に・・・ エリザベス・ジャネット・サンダー ポジティブな広がりを スパイク・ビッグ・ホーン インディアンのアイデンティティー ジョアン・ビッグ・クレーン 聖なる輪 ブラック・エルク 真の歴史と大地への愛 ロイ・ビッグ・クレーン この世界で人間の存在とは・・・ロン・テリオ 母なる地球のために サミュエル・S・デミエンテフ
第4章 「現実」から「浄化」への導きを ホピからのメッセージ トーマス・バニヤッカ フランク・フールス・クロウが亡くなった・・・ キャリー・ザ・ウォーター 獄中インタビュー・自由を! レオナルド・ペルティエ ビッグ・マウンテンは今・・・ ルイス・ベナリー ビッグ・マウンテン・ディネ・ネイション 独立宣言 「浄化」に身を捧げる祈りの行動から ランとウォーク セイクレッドラン日本事務局 「平和と生命への諸宗教合同巡礼」日誌抜粋 詩・ワンネス=一体であること トム・ラブランク 世界ウラニウム会議 開催 編集部 世界ウラニウム会議へのメッセージ ダライ・ラマ法王 ロバート・レッドフォード デヴィッド・マニャンギ翁が語るヒロシマとナガサキ デヴィッド・マニャンギ
第5章 中南米から パナマ・インディオ クナの歴史 オズワルド・デ・レオン・カントゥーレ ニカラグア宣言 平和と生命への諸宗教合同巡礼団 グァテマラ・インディオの闘いと力の遺産 リゴベルタ・メンチュー アマゾンでの闘い パウリーニョ・パイアカン
第6章 バハンナとシサムの道 ペシッ 波紋 アイヌより祈りをこめて 萱野茂 アイヌモシリに生きて 川村シンリツ・エオリパック・アイヌ 「新大陸発見500周年」とアイヌ民族 木戸宏 白いビーズ 弥永光代 ソローからの便り シスター・ジーン・目良 本物のバハンナ 映画「ホピの予言・浄化の日」製作の途上から 宮田雪 人の「語り」と大地の泣き声 森田ゆり 未来への鍵 南研子 生徒と共に学び始めて 纐纈好子 貧困なる精神 コロンブスの侵略500年記念とかなしき日本人たち 本多勝一 貧困なる精神 スペイン人による大虐殺とアメリカ人の大陰謀と参院選とPKO 本多勝一 コロンブス来米500年に日本を省みる 鎌田論珠 声明文 北アメリカ・ノートルダム教育修道女会 声明文 92年4月28日・神戸 世界的調和時代への架け橋をつくるために (先住民族の文化を尊重するアイヌと日本人のネットワーク) 声明文 92年8月26日・横浜 サンタ・マリア号を迎えて、私達の想うこと (10月12日の「コロンブス・ディ」を「先住民に学ぶ日」に! 先住民の視座から地球の魂を問う会 詩・祈り 山尾三省 コロンブス・ディ 日本宣言 92年10月12日 『夜明けへの道』編集部
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