「アイヌのイタクタクサ―言葉の清め草」
萱野茂 著 冬青社 より引用
本書 まえがき 萱野茂 より抜粋引用
平成12年北海道功労賞を受賞の折りに、妻れい子が夫である茂の側面を、と依頼 を受けて書いた「ベレー帽にわらじ履き・・・・妻が見た茂の側面」をこの本の中に収録 させていただきました。創作民話「穴の空いた丸木舟・・・・エカシの知恵」、この話は 少年時代に測量労働者として山を歩き、そのときに年上のアイヌの小父さんが、教え てくれた話を思い出しながら書きました。「カムイになったハンカチ」は半分以上は実話 ですが、丸木舟の横棒の入れ方を、ハンカチに語らせながらさりげなく若者たちに伝え たいと思って書いたものです。
本の題名に選んだ、アイヌの“イタクタクサ=言葉の清め草”で祓い清める、この言葉 は私が大好きな言葉で、いままでこの言葉を、この話を大切に暖めていましたがここへ 載せました。アイヌの自然観については、シャケを獲りに行く場合、一緒に行く人を“チェ プコイキクスアラパアンロー=魚を苛めに行きましょう”という言い方で誘います。山狩り に行くときは、山にいる獲物の総称を“チコイキプ=私たちが苛めるもの”、という言い方 をするその根底には、魚に対してあるいはシカやクマに、ごめんなさい、私たちアイヌは あなた方を苛めて、その肉を頂戴して命をつないでいるのです、と感謝とお詫びの心を 常に忘れないように心掛けているものです。
アイヌ語の面白さ、色のイロいろの項ではどのような描写で色のイロを表現するか、具体 的な例を挙げながら並べてみました。アイヌと神々との関わりについては、樹木それぞれ に名前を付けるにも、役に立つ木かそうではないかによって、ありったけの敬称をつける か、普通の木とするか決めるという具合に、アイヌの側から見る神も、神そのものが絶対 的な存在ではなく、役に立つか立たないかによってのもので、神は常にアイヌの目の高さ にあるものと考えていました。
この小さな本の中味は、アイヌ民族の心の一断面でありまして、文化の総てでないことは 言うまでもありませんが、ほんの少しでも知ってもらえれば望外のしあわせです。お読み 下さった方が、うちの村、二風谷へ遊びに来て下さることを、心待ちにしつつ、まえがきに 代える次第であります。
萱野茂二風谷アイヌ資料館 館長 萱野茂
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目次
まえがき
第一章 アイヌの生き方 アイヌの自然観 アイヌの結婚観 アイヌの心得 アイヌの人生観
第二章 アイヌの知恵 アイヌの知恵 アイヌ語の面白さ 創作民話 穴の空いた丸木舟・・・・エカシの知恵
第三章 アイヌの神さま アイヌと神 創作民話 カムイになったハンカチ
ベレー帽にわらじ履き・・・・妻が見た茂の側面 萱野れい子
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2012年5月24日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。 |
2012年5月21日、フェイスブック(http://www.facebook.com/aritearu)に投稿した記事です。 |