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ツルゲーネフ(1818-83)が1877年から死の前年にかけて
書き留めたもので、82 の短い散文詩が収められている。
猟から帰って、庭の並木道を歩いていた。犬が、前を駆けていく。ふと、犬は 歩みをゆるめて、忍び足になった。行く手に獲物をかぎつけた気配。見ると、 並木道の先に、小すずめが一羽いた。まだくちばしのまわりが黄いろく、頭に は綿毛が生えている。白樺の並木をひどく揺すぶるところを見れば、小すずめ は巣から振りおとされて、生えかけのつばさを力なく広げたまま、じっと動け ずにいるのだ。犬はゆっくりと歩み寄った。と、ふいに近くの木から、胸毛の黒 い親すずめが、犬のすぐ鼻さきへ石つぶてのように飛び下りてきた。そして総 身の羽をふりみだし、けんめいの哀れな声をふりしぼって、白い歯をむく、犬 の口めがけて二度ばかり襲いかかった。親は小すずめを救おうと突進したの だ。身をもってわが子をかばおうとしたのだ。けれど、その小さな体ははげし い恐怖におののき、かぼそい声は狂おしく嗄れつきた。親すずめは気を失っ た。われとわが身を犠牲にした! すずめにとって、犬はどんな巨大な怪物と 見えただろう!それなのに、彼は高い安らかな枝に止まってはいられなかっ た。意志よりも強いある力が、彼に下りよと迫ったのだ。わがトレゾールは 立ちどまり、じりじりと身を引いた。犬もこの力に打たれたと見える。わたしは 面くらった犬を急いで呼び、心のひきしまる思いで立ち去った。そうだ、笑って くれるな。わたしは、この勇ましい小鳥を前に、その愛の衝撃を前に、りつぜん と襟を正したのだ。わたしは考えた。愛は死よりも、死の恐怖よりも強い。 そ れあればこそ、愛あればこそ、生はもちこたえ、めぐり行く。・・・・・ 「散文詩」ツルゲーネフ 岩波書店より引用 |
わたしがこのような「散文詩」を自分なりに書きたいと思ったのは、この本を通してだった。
短い文章の中に見事に凝縮された世界観に心ひきつけられた。特に今まで「詩」「散文詩」の
勉強をしたことは無く、書くことへの不安は大きかったが、自分の想いを表現するにはこの散
文詩しかないと感じ、数年前に七つのものを書いた。
1996.12/20
私自身、「散文詩」を読んだときの衝撃は今でも忘れることが出来ない。 また彼はチェスの強豪で、カフェ・ド・ラ・レジャンスで行われたトーナメント で62名中2位(優勝はフランスの強豪リヴィエール)になったほどの実力 者だった。彼の名言「愛は死よりも、死の恐怖よりも強い。それあればこ そ、愛あればこそ、生はもちこたえ、めぐり行く」。ちなみに「カラマーゾフ の兄弟」、「罪と罰」で知られるドストエフスキーは、「悪霊」という作品の 中で、ツルゲーネフを風刺した登場人物(カルマジーノフ)を描き、それが 基で二人は絶交したと言われている。「本のすこし窓を開けて」というサ |
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