「白人の国、インディアンの国土」

正義と賭博と部族国家

スーザン・小山 著 三一書房 より







「連邦政府の介入と州政府の対立・抗争のはざまのなかで放置され

犠牲にされてきたインディアンとアメリカ司法制度の問題点を明らか

にしていく(同著・帯文より)」この書は、現代においてもインディアン

が絶えず社会的にも文化的にも白人からの迫害にさらされている

現実を問い掛け、アメリカ社会に潜む暗部を明らかにしていくもの

である。またこの書はインディアンに関心のある方たちだけでなく、

アメリカという国、白人とは何者かを真に知りたい人にも読んでい

ただきたい本である。明治より「西洋に習え」を合い言葉に近代化

を進めてきた日本が陥っている「アメリカ・白人」という憧れの対象

の真の姿をこの本は良心を持って描き出しており、また移民として

著者を受け入れてくれた国の将来への期待とが交差しているから

である。この書は現在のインディアンが置かれている政治・司法・

社会的側面を考察している数少ない本の一つに数えられる。

(K.K)


 




本書より引用


日本は独立主権国家で、さらに経済大国だから米国の干渉をそのまま受ける必要はない。

部族国家も本来ならこの豊かで広大な国土の大地主、そして同様の主権国家なのだが、

侵入し、居座ってしまった異人種のためにさまざまな干渉をそのまま受けている。世界最

富の国の本来の持ち主が、第三世界並みの貧困の中に取り残されているのである。それ

は我々が知っているさまざまに残念な事実の結果、特に合衆国官民一体の主権の無視、

部族国家の権限無視にあることは言うまでもない。ただし文化の違いをいえば、主流派白

人が部族の共有財産観念を理解しようとしないことが、無視と敵視の最大原因と思われる。

そして米国が世界に誇る民主主義は、両刃のやいばになってインディアンにのしかかる。

良い側面の刃は、かつては独立主権国家だったということを国法が認識しているということ、

悪い側面はその国法も大衆参加、多数決の民主主義のもとでは、国民が無視しようと思え

ば数の力で押し倒してしまえる事実である。つまりは情報と教育の不足が、世界最高のは

ずの民主主義をおかしな方向に持って行ってしまったのだ。要は立派なガイドラインがすで

にあるのに、原理原則の国であるはずの米国の民主主義の実践者たる市民が、どれだけ

その原則に忠実であろうとしているかである。以上述べたさまざまなことがら、そして本書で

検討している「シンプソン裁判」や「ハウス裁判」の相互関係は、一見脈絡のないジグソウ・

パズルのように見えようが、これらはすべて、司法の公正とその矛盾を指摘する題材とし

てあげたものである。私個人としては部族政府の権限を合衆国の人々がもっと正確に

把握し理解すれば、この国は単に物質力の豊かさだけでなく、内奥の美しい原理原則の

国として真実偉大な国となるに違いないということを、自分を移民として受け入れてくれた

国に住む毎日のなかで、ことあるごとに考えながら暮らしている。国民とそれを代表する

政治家も、この白人の国はインディアンから与えられたものであること、永遠にインディアン

の国土であることを深く肝に銘じ、最高裁判事ヒューゴー・ブラックのいったように、偉大な

国家として偉大な人物のようにきちんと約束を守れば、世界の誰からも尊敬される真の

指導者になることは間違いない。その感慨を日本の人々と共有したいと思ってこの本を

書いた。部族の立場を真に理解することが、合衆国という、日本ともっとも密接な関係に

ある国家をもっと良く理解する一助になると深く信じている次第である。


 
 


目次

第一章 アメリカの正義

キャディラック正義

裁判はスポーツか

警官横暴は国権の乱用

司法資本主義

国権と個人の自由・・・・米国最大の課題

政府は敵である

国家と個人の接点

正義の裏側

TV時代の裁判

ハウス裁判

ハウスはなぜ敗けた?

陪審制度

白人の正義

マスコミ対政府

陪審員とはなにもの?

ハング・ジュアリー


第二部 部族賭博

インディアンと公共賭博

ユウツ族

山岳ユウツ賭博場

現今米国賭博事情

宝くじと税金

勝者ひとりじめの原則

アメリカは五十州ではない

過疎地域・保留地

保留地の法的根拠

白人侵入の現実のなかで

部族政府と州政府

部族政府・・・・伝統から近代へ

信託責任・・・・究極の責任

「破棄された条約の行進」

主権はだれのもの?

内国依存国家

連邦主義対州権主義

土地譲渡は税金一括前払い

国家最高の法で保証されている部族政府の存在

IRAから部族賭博法へ

インディアン再組織法

五百の国家

猫の目のように変わる施策


第三章 部族は国家である

部族は国家である

IRAでも十分ではない

部族政府はパスポートを出す

条約は永久に主権のあかし

保留地は州の領土ではない

インディアンとはなにもの?

部族民の資格

インディアンは「少数民族」ではない

官僚機構とインディアン

部族の決めた部族民とは

ワナビー

部族政府の権限

さりげない会話のなかに

保留地の犯罪を裁くのは誰?

主要犯罪法

公民法280号

既成概念と闘う

既成概念とマスコット論争

インディアンは特権階級?

保留地は誰のもの?・・・・保留地に白人が住んでいるわけ

保留地の三つの形

侵食の媒体となるもの

呑み込まれていくインディアン

「ドウズ法」・・・・壊滅の筋書き

保留地は国有地である


第四章・・・・二大政党と部族賭博

連邦政府支持の民主党と州政府支持の共和党

国会の絶大な権限とは

政争の具

合衆国における政府の役割

二大政党政治のなかのインディアン

「賭博法」の必要なわけは

貧困克服のこころみ

カベゾン判決・・・・白人の贈り物

州は課税出来ない部族事業

部族事業としての賭博

インディアン賭博法とその通過以後

差し押さえられた部族賭博

公民法280号に続くものは?

部族側の反論

州知事会の干渉

今日も続く条約破棄


最後に


 


スーザン小山の本場アメリカンインディアンホームページ

コロラド州在住の著作家、アメリカ・インディアン研究家、スーザン小山さんが新たにホーム

ページを創りました。スーザン小山さんは多くのインディアンに関する書籍を出版し日本に紹介

しておられる方で、「アメリカ・インディアン 死闘の歴史」並びに「大草原の小さな旅」は全国

学校図書館推薦図書に選ばれた文献で、その他にも「インディアン・カントリー 心の紀行」

「白人の国、インディアンの国土」があります。特に「アメリカ・インディアン 死闘の歴史」は、

平原インディアン(ダコタ・シャイアン・アラバホ・クロウ族)の終焉の物語を描いた力作です。

また、西欧でベストセラーになり、来日し講演したこともあるインディアンのロス博士の著作

「我らみな同胞」をも翻訳されております。このスーザン小山さんの総合ホームページの中の

「アメリカインディアンの歴史と文化のページ」では、興味深い記事が掲載されており、「環境

破壊ページ」では、絶滅動物が写真と共に詳しく紹介されています。私自身スーザン小山さん

から多くのことを教えていただいたり、何度となく励ましを受けてきました。このホームページ

はスーザン小山さんのそのような飾ることのない、温かい人柄を感じさせてくれます。








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アメリカ・インディアン(アメリカ先住民)

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