双眼鏡の選択
「ナイトウォッチ 天体観測実践ガイド」テレンス・ディキンソン著 渡部潤一・監修
後藤真理子・訳 化学同人 より引用
すでに主レンズの直径が35mm以上の双眼鏡を持っているなら、すぐにでも天体観測が始められる。
しかし心に留めてほしいのは、夜空を見る・・・黒を背景とした明るい点像の位置を正確に捉える・・・
ことは、レンズに対する厳しい試験だということである。良いレンズを持つ双眼鏡は星を小さい点像
に映す。視野の縁近くでもなければ楕円形に伸ばされたり歪んだりはしないものだ(非常に高性能
な双眼鏡で、縁のごく近くでも鮮明であり場合が確かにある)。最高級品質の双眼鏡はまた、光透過
効率を良くして内部のゴーストも減少させる反射防止用のレンズコーティングが施されている。適切
な反射防止コーティングがされたレンズは、真っ黒い夜空に浮かぶ満月を見ても反射によるゴースト
ができない。
双眼鏡を10以上試してみて、無名のメーカー製で優れた性能を持つモデルをいくつか見つけた。各
社がしのぎを削るこの分野では、メーカーの知名度よりも値段のほうが良い指標になる。だから聞
いたことのないメーカー製だからといって却下しないほうがよい。良質の双眼鏡を求めるなら最低
150ドルはするものだ。
私が試した多くの優れたモデルの中で、Celestron Ultima DXのシリーズは、手ごろな値段(8X56 モ
デルは200ドルだ)で総合的に優れた標準モデルと言える。入手しやすく、たいていの望遠鏡店に在
庫がある。またOrion社の最高級ラインも好きだが、ほかにももtt良いものがある。時間を取ってたく
さんのモデルを扱っている光学機器店に行き、できるだけたくさんの双眼鏡を試してから選ぶのが
良い。
金に糸目をつけない機械マニアは、天体観測用双眼鏡として、私の使っているCanon製の15X50iS
(1200ドル)が最高だと思う。手持ちによる双眼鏡の揺れを仮想的にゼロにする画期的な画像安定
プリズムを装備しており、15倍という比較的高い倍率を有効に活用できるからだ。アイピースのデザ
インは、Canon製品の他モデルより頭ひとつ分優れており、視野角4.5度のきわめて鮮明な視界が
得られる。野鳥観察と天体観測の両方に使える最高級モデルをふたつ挙げるとすれば、Zeiss 8X
42 Victory FL(これは最高だ)とNikon 8X42HGである。
一般的に、双眼鏡ではズーム機能を使わないことになっている。双眼鏡のズームは天体観測用に
設計されたものではないし、レンズも高価な倍率固定のガラスに劣るからだ。私は製造会社が「広
角」と銘打っているものも避ける。確かにそれらはビクチャーウィンドウごしの幅11度にも及ぶ視野
を誇るものの、多くのモデルで視野の中心から外れた大部分は、双眼鏡レンズに宿命的な広角視
界のためにピントがずれてしまうからである。これは日中景色を眺める場合より、夜間に天体観測
をする際にいっそう気になる。しかしこの選択はおもに私の個人的な好みによる。
天体観測用の双眼鏡を評価する場合、鍵になるのは、三脚に乗せるための穴・・・中心軸の前面
に開いたネジ穴・・・である。穴にネジが切ってある、高価ではないL型ブランケットを使えば、カメラ
三脚に双眼鏡を取り付けることができる。こうして双眼鏡を安定させると、細かな部分の見え方が
・・・微妙な天体の模様はとくに・・・明らかに良くなる。ついていない双眼鏡もあるので、買う前にこ
の機能があるか確かめるべきである。
カメラ三脚は口径56mm以上の双眼鏡には必要不可欠である(私は、たいていの人にとって8X56
モデルが手持ちの双眼鏡の限界だと考える)。レンズが大きくなれば、単純に重すぎて、観測対象
に照準を合わせる2、3秒の間でさえ双眼鏡を安定して持っていられないからだ。私の11X80モデル
は重さが2kgで、10X50モデルは重さが約1kgである。双眼鏡はほかに、10X70、16X70、15X80、
20X80などの構成がある。しっかりしたカメラ三脚に固定した場合のみ、タフなこいつらは性能を
発揮できるのだ。
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